Dead End ユUキ・サクラ (20)
「そうなると、敵の攻撃は勇気くんが受け止めるって役割の方がいいの、かな?」
「…それが無難だろう、サクラが授けてくれた策は、犠牲が多すぎる」
そっか…そうかな?…そうなのかも。犠牲を出すつもりは無かったんだけど、犠牲になるのかな?
私が授けた策は単純に、盾持ちが敵の前に出て攻撃をひたすら受けてもらいながら、弓兵などによって遠距離攻撃に徹してもらうってだけなんだけどな?
だってさー、前に特定の敵を独りで倒してほしいって言ったけどさ~、まさか、勇気くんから独りで敵を倒せるとは思えれないから、他の策をくれって情けない提案が出てくるとは思っても無かったんだよね?勇気くんなら、独りでも倒せれると思ったんだけどなぁ?敵の事前情報から、考えると下手に動きの遅い仲間がいれば足手まといになると考えて、身軽に動けて、一撃力もあって、敵の動きを読めそうな人物で心も強い人、ってなると、さ?勇気くんが適任だと思ってたんだけどなぁー!
…まぁ仕方ないか、相手は人じゃない、勇気くんも闘い慣れていない相手ってのは怖いよね。
ってわけで、これはどうかな?って提案したんだけど?それも不服だって言うの?我儘さんだよねぇ~…
結局、自分が思い描いた作戦で挑みたいだけなんだろうね。まったく、王様ってやつは頑固者でこまるよね~!
たぶん、盾持ちが敵の猛攻激に耐えれなくなって死んでは、別の誰が盾をもって挑発するって感じに受け取られちゃったんだろうなぁ。
そういう意図じゃないんだけど、しょうがないか。
理想は、私と勇気くん、二人で挑むのが理想なんだろうけどね。
「それにな、これを見てくれ」
ネックレスから小さな槍を手に取って念じる様に瞳を閉じると
短剣よりもやや長さのあるサイズに変化する
「っわ!?…ぇ?大きさ変えれるの?」
ふふんっと自慢げに鼻の穴を一瞬だけ膨らませ
「日々、祈りを捧げ、試しに念じてみたら、こうなった、今はまだこのサイズだが、何れ、槍のサイズへと変化させれる気がする」
「魔導書の通りだね、魔術を真なる意図へと導く書物…うん、これこそが魔導書だよね、まぁ魔術書でもどっちでもいいか」
ペチペチと本を叩くと、よすんだ無礼だぞっと小さな声で怒られてしまう。
例え物だとしても偉大なる人物が残した遺物なのだから敬意を示すのは良い事だと、思う、うん、ごめんなさい、これは良くない。私が悪い。
「っでだ、早速だが切れ味がどの程度なのか見てみたのだが」
そりゃ、始祖様の槍だもの、切れ味は抜群じゃないのかな?
「困ったことに現時点では包丁以下だったよ」
包丁持ったことがあるんだって言うのは無粋な反応だよね。切れ味が悪いっていうのはどういうことだろう?
「幾度か藁や木に向かって突いてみたり袈裟切りっという、やつだったか?斜め上から斜め下に切るっという方法で藁を切ってみたのだが、困ったことに切れ味が悪すぎて刃が通らなかった。研いでいないからなのだろうが、これ程の硬く、それでいてしなる刃は何で研いだらよいのか…相談できる人がいなくてな」
確かに、適当に鉄の刃を研ぐための砥石でいいんじゃないの?って言いたいけれど、これはどうなんだろう?何で研げばいいのだろうか?
「取り合えず、どの程度か見てもらう方が良いだろうだな…これは破棄する予定の物だろう?」
一直線にゴミ箱に向かい、中身を取り出して見せてくる、その辺に生えている雑草と大差変わらない強度の草。
うん、出がらしだからどの様に扱おうが気にせずにって言いたいけれど、それ、強度で言えばただの草むらに生えてる雑草と変わらないよ?
成分を抽出しした草の茎の部分を机の上に置き、槍の刃がありそうな部分を充てて前後に動かしてギコギコと包丁で切るような動作をしてから
「ほれ」
草を指さしてくるので、草を掴んで持ち上げると茎の部分が凹んだだけで、切れ目すらない…
「とんだ鈍ら刀じゃん」
「ああ、聞きなれない単語だが、恐らく、切れない刃の事だろうな。困ったことにこの程度ですら切る事叶わずだ」
持ち上げた草をゴミ箱に捨てて、どうすれば良いのだろうかと腕を組みながら振り返ると槍を渡される
「はいはい、解析してみろって事?」
コクリと頷く、相変わらず口下手だなぁ、お願いって言えないのかな?まったく、お父さんってやつは…しょうがないなぁ。
第一解析…魔力波を充てて魔力の流れを解析する
エラー…抵抗値が高くレジストされる、前回よりも、隙が無いように感じる?
第二解析…魔力を流してみて魔力の流れを解析する
エラー…魔力が通らないのも変わっていない、流れがわからない、だけど、前よりも魔力を帯びている気がする。
第三解析…物質の解析、叩いてみたり触ってみたり、前回と何かしら変化が無いか記憶を呼び起こし差異が無いか比較する
固い、これに関しても変わっていない、弾性もある、これに関しても変わっていない、すべすべしてる、これに関しても変わっていない
…怖いのがこの一点…この部分は絶対変化していないとおかしいのに…重さが変化していない。質量が増えているはずなのに、前回とあまり変わっていないんじゃないの?軽い…
第四解析…指先に魔力を集めて対象にぶつけてみる
魔力が切れて霧散…しない…切った魔力が…きえた…?おかしい、確かに魔力の塊をぶつけたはずなのに、その魔力は私とわずかに繋がっているはずなのに…
当たると同時に…魔力の反応っというのか、感覚が…ふっと、消えてなくなった、霧散するような感覚も無く、元から無かったと言わんばかりに…きえた。きえちゃった…こわぁ…
ぇ?魔力を切ったら吸収する?それとも、魔力で構成されている物は消滅させる?…確実に何かしらの変化が起きている…
解析を行って前回と変化し点、気が付いた点を伝えると
「…魔力に対しての絶対的な有効打となりうる特殊な兵装ってことだろうか?」
わからない、わからないけれど、わかったことがある、物質を切るというよりも魔力を断つことに関しては、これ以上の性質を持った物質を見たことが無い。
特性さえわかれば、運用方法に関しては問題ないんじゃない?
物質を切る事に関しては鈍ら刀で、現時点では使用するべきではないが、突く、切るを目的とした攻撃手段ではなく、金属なのにしなる、柔らかさを持ちながらもかなりの硬度を秘めているみたいなので、鈍器としてかなり優秀と見て間違いないだろうね、っとなれば、近距離専用の槌とは違って中距離を意識した鈍器として扱うのがベターかな?
魔力を切る、それが魔力で生み出されたものを切る事も出来るのであれば敵が持つ魔道具から放たれた何かしらの攻撃も切り裂き消すことが出来るかもしれない
その事を伝えると
「切っても問題ない範囲の術式を今試してみてはどうだ?」
確かに!槍を壊してはいけないっていう概念が実験しようとする意志を封じ込めていたから気が付かなったなー!ええー?いいの~?そんな無茶な実験しちゃっても~、いいのかなぁ~?うっわ、たのしみ…危険な実験だ、失ってはいけないんじゃないのかな?…うっわぁ、撃ってみてぇほーりーばーすと、撃ってみてぇ…
「まてまてまてまてまて!鼻を広げて!目をかっぴらいて!指先をうにょうにょと動かすな!絶対に良くない方法を考えているだろう?俺は言ったぞ?切っても問題のない範囲だと!君が持てる最大火力でもぶつけたくて仕方がないっという雰囲気が伝わって来るぞ!?ユキ!パスを繋げる!サクラを止めるんだ!!」
『静かに見守っていたらまったくもー、何遊んでるの~?混ぜて欲しかったなぁ~…真剣な話だと思っていたのになぁー!』
おわっと、脳内に響き渡る不貞腐れた雰囲気漂うユキちゃんの声!?
『話の流れを遠巻きに見ていたものとしてはー、お兄ちゃんの意見が至極真っ当だと思いまーす、はい、多数決で決まり!姫様ならこういうでしょ?』
ほほーん?悔しいがその意見には大賛成だね、効率的じゃん、民主主義、世界を動かした薄っぺらい平和な一歩ってやつさ
ふぅやれやれっと両腕の手のひらを天に向けて首を横にふって仕方がないなっとジェスチャーで伝えるのだが、二人には伝わっていなさそうなので、スルーする。




