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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ (19)


閃いた内容を勇気くんに伝えると、真剣な表情で頷いてくれたので理解してくれたみたい。理解した瞬間に真剣な表情が崩れる。

不安要素が無いってことに安堵して、尚且つ、ちょっと嬉しそうな表情してるんだもん、子供みたい。

「なら、主を傷つける道理はない…うん、ネックレスか何かにして身に着けて、暇なときに祈りを捧げるふりをして魔力を注いでみるよ」

「うん、形も槍だし、敬虔なる始祖様の信徒って形にも見えるし、いいんじゃない?」

小さな小さな槍を握りしめて、自分の胸に拳と共に当て、目を瞑っている。

始祖様にそっくりな人が祈りを捧げているのが不思議で不思議で…笑ってしまっても良い筈なのに…


なんて神々しいのだろうって感じてしまい、笑うことが出来なかった。




満足気に帰っていく勇気くんを見送り、静かになった部屋を見渡すとノイズが一斉に話しかけてくる。

はいはい、そうですねっと相槌を打ちながら、時折、何それ?初耳なんですけど!?っというノイズが混ざっているのでノイズも馬鹿にできなかった。

おばちゃん達って意外と見てるんだね、騎士団の誰々と教会の誰々が実は…みたいな話題がノイズに混ざってくるとは思ってもいなかったっていうか、祈りを捧げるときくらい真剣に祈れよって、真っ当なツッコミを入れてしまいたくなる。


おばちゃんの井戸端会議まで、ノイズと共に流れてくるなんてね…平和な世界で良いよね。


私以外はな…


行けない思考が脳裏をよぎるので首を振ってそんな事を考えてはいけないっと自分を戒める。

こうなってしまったのも、地下から出れなくなるのも、誰も悪くない、弱い私達がいけないんだよ

だよね?こくりと頷いてくれる。

うんうん、さぁ頑張ろう





「大体、現状はこんな感じよ」

「うん…」

ふっと、耳に息が吹き込まれぞわわっとなってしまう。

「はい、片方の耳は終わり、反対もするから一旦立って」

背筋が震えるような感覚のまま、一旦立ち上がると、お母さんがソファーの端に座りなおし、膝の上をポンポンっと叩いて合図を送ってくれるので、頭を膝の上に乗せる。

背中にケーブルが刺さっているので当然、お母さんのおへそが真ん前にある。

「はい、じっとしていなさいよ」

「うん…」

耳の奥に何かが入って来る感じは何時になっても慣れない。

一瞬だけぞわっとしちゃう、ふへへ。


「それにしても、ユキのやつってあんな感じだったかしら?」

「…」

答えたくない内容なので黙る、洞察眼が優れているお母さんなだけあって直ぐに彼女が彼に変わったという違和感に辿り着いている。

入れ替わってから、確か…一か月?かな?いや、もう二か月かな?わかんないけれど、それくらいは過ぎている

「まぁいいわ、貴女が言っていたような弱い雰囲気から戦士の顔つきに変わっただけってことでしょうね、女将のやつもそうだものね」

「…」

そうだね、自分が経営している食事処で働いている時の女将は何処をどう見ても肝っ玉かぁちゃんって感じだけど、私もお母さんも戦士としての一面を知っている。

命がけで闘うときの彼女の鋭さは肝っ玉かぁちゃんの一面しか見ていない人からすると恐怖して腰を抜かすだろうからね。

それくらい別人だもん

「まぁ、それはいいけれど、貴女はどうして、反対しなかったの?」

「…」

やっぱり、お母さんはまだ早いって思っているのだろう。

ユキさん…勇気くんが騎士の部隊から戦士の部隊へと配属が変わった。

この街にきて経ったの2か月くらい?時間の感覚が狂いっぱなしでよくわかんないんだよなぁ…まぁ、新兵から考えるとかなり早い、出世頭だっていうのは間違いないね。


騎士部隊と戦士部隊の大きな違い、それは…独りでの行動を許されるっということだ、つまり、死の大地で独りで行動しても許されるくらいの力量が認められたことになる。

…そして、勇気くんには凡そで申し訳ないんだけど、ある特定の敵が出現する時期と場所を伝えている…


彼には申し訳ないけれど、勇気くん独りで敵を殲滅してもらいたいと伝えている。


策は授けている、後は、彼がどの様に動くかは彼の判断次第。きっと…彼なら上手い事、やってくれると信じている。

その為には彼は独りで…死の大地を把握しきってもらわないといけない、人数が増えれば増える程、敵に見つかるリスクが高くなってしまうからね、仕方がない。

それにね、彼にはちゃんと敵から見つかりにくくするための、そこに人が居るはずがないっという認識を与え、例え近くに居て人が居るんじゃないかと思ったとしても、その認識を阻害する魔道具を持たせているから、たぶん、大丈夫。


「聞かれたくない話題は、絶対に声を出さないのは、貴女の悪い癖よ」

ふぅっと息を吹きかけられうひぃっと、とても小さな悲鳴を上げてしまう

「はい、良いわよ」

ぺちぺちとお尻を叩かれるので起き上がる、もう少し横になっていたかったけれど起きないとね

「ありがとー…眠たい」

立ち上がるのはいいんだけど、睡魔が凄い勢いでドロップキックかましてくる…

「少し寝たら?お風呂上がりだから、仕方が無いわよ、貴女って昔からお風呂に入ってから寝るって習慣があったじゃない、習性の物はどうしようもないわよ」

うんっと、頷いてふらふらとケーブルが装着された状態でも寝れる椅子?ベッド?に向かって行く。

「ほら、気をつけなさい、背中のやつが引っかかるわよ」

急に背中が軽くなり、歩きやすくなる。振り返ることは無い、声の感じからしてケーブルを持ってくれているんだろう。

多少何処かに引っかかっても念動力で持ち上げてケーブルの位置を変えるから問題ないんだけど~

好意という行為には、素直に甘えるのだ!にしし


起座位で寝かせてもらうと直ぐに睡魔が押し寄せてくる。

薄れる意識でお母さんに向かって感謝の気持ちを込めて手を振っていると睡魔に押し倒されてあっさりと10カウントを取られてしまう。




これが夢だって直ぐにわかる

だって、ここって…どう見ても、摩訶不思議な世界


最近の夢の中は色んな人が私の夢の中で自由に過ごしている。

見たことの無い人達ばかり…恐らくノイズが残していった残留思念だろう


町並みは王都の様で、私が作ったモデルハウスでもない、その二つが混ざったような感じ。

空は真っ白で、地面は草原、その上に建物が建っている


各々が安らかに生活をしているようで…していない。所詮は残留思念。

発展性は無い、ジオラマの様に彼らは所定の位置に配置され何かの仕草をしている途中で止まっている。


この夢の中で動けるのは唯一。私だけ。


ぐるりと見回って見るが新しい発見は無さそう、夢の中なんだから、もっと突拍子のない何かがあってくれてもいいのに。

そんなものはない。何処かの世界での一時を切り抜いたって感じ…

溜息と共に適当な場所に座り、夢から覚めるのを待ち続ける。


…思考超加速の影響かどうかわからないけれど、時折、時間が長く感じてしまう。

それは…夢の中でも同じ、たぶん、今、目を強引に開いても時間は10分も経過していないんだろうな…


本来であれば睡眠っと言うのは脳を休ませるための行為だと思っているのに、どうしてこんな無駄なことが発生しているのか…

考えるのはやめよう、思考を加速させてはいけない、帰れなくなる。

今はただ…時が流れ、肉体が回復するのを待ち続けよう…


いつかきっと、訪れる目覚めを待つ…


空を見上げていると、ふと、視線を下げると、先ほどまであった町並みは全て闇の中…消えて行った。

目覚めが近い…闇の中から一人の手が差し伸べられる。誰の手かわからない、手を握ると



「…」

目が覚める。時計を確認すると2時間くらい寝ていたみたい。

ふわぁっとあくびをしてから起き上がり、誰もいない部屋を見渡す。

「っさぁってと、続きをやるとしようかな、そろそろ培養液3号の中身が取り出せるかな」

立ち上がって、試験管に向かう前に、挨拶をする今日もよろしくね。頷いてくれる。

さぁ、続きをがんばろっと!!






「っという感じだ。練度に関しても問題はない、何時でも来いっと言う感じさ」

特別製の盾は、勇気くんが持つ事となった、そして、時期が来ればカジカさんと共に巡回と共にする流れを作ってくれている。

外に関して襲撃は左程、多くなく、人型も月に一度くらいのペースで至極穏やか。


残滓が生きた時代とはまたもズレが大きい。

考えるべきは一つ、敵は此方の動きを見てその都度、作戦を考えているとみて間違いないのだろう。

ただ、どの選択肢がどの様に影響されているのかがわからない。

私がAの行動を取れば敵はAのプランを発動させるっといった明確な分岐点が見えない。

臨機応変っという態度を取られるのは非常に厄介極まりない…流石は、先生だねっという声が聞こえてくる。

その一言で察する、そうか、敵側にいるのか、先生は…そりゃ、私が何度も敗北するのも頷ける。


「敵との闘いに関してはカジカさんの方が上手?」

一対一の剣での闘いでは勝どきを上げたけれど、そっちの方はどうなんだろう?

「幾度か人型を共に討伐したが、人型との闘いであれば彼は天才だろう、膠着状態に持ち込むのが物凄く上手で、感動したよ。俺では真似できそうにも無い」

よく見てる、カジカさんの凄い所は、どんな人とも組める柔軟性と、どんな相手にも対応できる手数の多さ、どの部隊とも連携が取れる練度の高さ

その全てが高水準、誰もがいずれは到達できる最終地点に彼は全ての分野において顔を出している。この街の最大戦力の一角は伊達じゃないか。


惜しむらくは彼の心は弱いっというところだ…


基本、甘えたちゃんなんだよなぁ…偉そうにしたがっているけれど、あれは、弱い自分を隠したいだけ、強い自分がイメージできないから芯の強い人をイメージしやすくする為に、自分もそれと同じ頂へと自分も誘ってもらいたい、強いあの人になれるように模範したいって感じで偉そうにしたがるんだもんね。


彼が自分の弱さが何処にあるのか見つけることが出来たら更に成長するんじゃないかってお母さんも女将も言っていたけれど。

無理じゃないかなぁ?人はそう変われない…何かを失わない限りね…そして、何かを失ったら失ったものは取り戻せない、時を戻さない限り…


私は…失ってばかり…だから、強く成れたんだろうな…っへへ、私もその犠牲の一つじゃがな…


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