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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ (8)

濁った培養液を取り出して試験管の中を清掃が終わるとふぅっと、吐息が漏れる…次の作業しなくちゃっと思うのだが…駄目だ集中力が途切れてしまったのか、次へと行動を動かそうと思っても出来ない。

気分転換が必要だろう、偶にはお日様の光でも浴びるか。息抜きを兼ねて。

うん、そうと決まれば冷蔵庫から飲み物が入っている瓶をもってっと…階段を登りドアを開けると風が流れてくる、外に出るとお日様が挨拶をしてくれる。

さて、何処がいいかな?遠くまで歩く気もしないし、近くに置いてあるベンチでいいや。

こうやって太陽の光を浴びないと体調を崩すからね、精神的にも良くないし。日向ぼっこはだいじだいじ…


ベンチに座って、何も考えずに周囲をぼんやりと眺めていると、大柄な人が近くに来て隣に座ってくる、セクハラしたら殺すよ?

「安心するのである、吾輩からしたら姫様は娘のようなものである、湧き上がるものは皆無であるぞ」

それはそれでムカつくなぁ、お前の体は劣情を催さない魅力なんぞ皆無!って言ってるのと同じだぞ~?

っま、そんなこと言えるわけないけどね。

っへっと、心の中で悪態をついていると、なんか、余所余所しいというか、ソワソワとして落ち着かないのはなに?

「休憩であるか?」「みてわかんだろー休憩であるー」

やや警戒しながら悪態をつくが、この程度はいつもの事、カジカさんもこれくらいで機嫌を損ねたりしない。

「うむ、時には休む、それが一番である。して、研究はどうなのであるか?幹部連中が姫様の顔を長い事見てなくて寂しがっているのである」

「順調だよ…ある程度の目処は立った、だけれど…」

その先を伝えるべきかどうか悩む、本当なら幹部会に説明してから私が地下から出れなくなる状況にするべきなのだが、全員から反対されるのをわかっている。

故に、先に実行してしまい引き返せない状況になってから説明する予定。


幹部の一人であるカジカさんにここで出会っちゃったのは運が悪かった。

ソワソワしているのも、幹部会の連中に私に会ったら色々と話を聞いておけとか、そういう苦手な探りを入れてこいって言われているから、かな?


「何か、あるのであるな、学のない吾輩では想像できぬ困難があるのであろうな」

うんうんっと、わかっておるぞっと頷いてから、視線を前に向けて何処か遠い目をしていると、私の前に手を前に出してくる?何?

なんだろうと、手を前に出すとぽんっと置かれるように渡されたのは…これでソワソワしてたってこと?…子供かアンタは…いや、駄目なモノだってのはわかるけどさ、それを所持していたから変に緊張していたの?制服でゲームセンターでこっそりと独りで遊んでる子供かっての?

取り合えず、出どころは知っておきたいかな…所持してはいけないものだからね。

「ねぇ?これ、何処で手に入れたの?」

「…流石、姫様である、直ぐにわかってしまったのであるか」

紙に包まれた小さな筒のようなもの、中には乾燥した葉っぱがある。

麻薬だ…

何処から入手したのか問い詰めたくなるけれど…どうでもいっか。もう、滅ぶこの世界に未練なんて無ーい。


さて、これを渡してきたってことは、成程、影ながらの愛好者だったってわけ?

カジカさんがやや震えている指先で小さな白い筒を口にくわえ、サイドポシェットから小さな魔道具を取り出して起動させる。

手に持っているのは、小さな熱を産み出す魔道具、私が野営用キャンプ用に作った火種の魔道具、それをシガーソケットみたいな使い方をして…

本来の仕様用途は違う使い方をしている姿を見て呆れてしまいそうになるけれど、禁制品をいつか取り扱えれる様になったら、一緒に売るのもよいなと先見の明を得たかのような感覚で眺めていると、筒の先端が灯りを灯しジジっと小さく焼ける音が聞こえた。


「…ふぅ」

ぼふぁぁっと白い煙を口から吐き出す。匂いがくせぇ…麻薬ってこんな匂いなんだ。なんか違和感がある。

「ぁーー…」

ぼんやりと遠い目をしているなぁっと見ていると、すっと火種の魔道具を渡してくる

葉巻の口をつける部分をみるが、地球とは大きく違ってフィルターが無い。直はそうとうきついんじゃね?まぁいいか。

正直、この手の趣向品は試してみたいっという好奇心が前々からあったので、口をつけて先端に灯りを灯し、吸い込むと

「っげっは、げほ…」

思いっきりむせてしまうと、隣で煙を鼻からも口からも出している人が笑っている。

「っくっく、姫様といえど、いきなりは上手くはいかんであるな」

煙を此方に吹きかけてくる人の脇腹を肘で小突く、一口吸って分かった、これ麻薬じゃねぇただのタバコだ。なんだよ、ったく。


つっても、この大陸じゃタバコも禁制品だけどね。ったく、どこで手に入れたの?…


少し考えるとすぐに入手ルートが思い浮かぶ、そうだった、カジカさんのご実家は貴族だったよね?正確には奥様がだけどね

想像するがやすし、実家の御父様かな?

ご禁制つっても、仕事を引退した貴族達は吸っても良いことになってるんだよね。元気いっぱいの働き盛りは吸ってはいけないってだけ、後、人が集まる場所で吸ってはいけない、自室でのみ許されている、だから、こんな誰かが通るかもしれないベンチで吸うのはダメだし、年齢的にもアウトなんだけどね。

っで、引退した人たちが吸っていい理由は単純、仕事が無いのなら早く死ねって意味らしい。ひでーよな、王政ってやつは。


むせた影響なのか、煙が目に入って痛いからなのか、目が涙目となってしまう。

涙を拭うことなく、隣の人物を見ながら、もう一口、筒から煙を吸い込むように、ゆっくりと口に含み、肺に入れず鼻から煙をだす。

ん~香りが微妙、思っていた感じと違うなぁ。もっと、豊満な香りと言うか、絵も癒えぬ快楽が待っているのかと思っていたから拍子抜け、何か、こう、これがないと生きていけない!って感じに虜にさせるようなものだと思っていたけれど、んー…好みじゃないな。


しかめっ面で、煙を堪能しようと努力していると、ぼふぁぁっと心から気持ちよさそうな笑みを浮かべている人がお前も虜になるであろう?っと声を掛けてくる

「…ふぅ、これを吸うとな、一時とはいえ、感情がリセットされるような気がするのである、息抜きとして最高である、こんな素晴らしいものがどうして禁制品なのか、わからぬのである、そう思うであろう?」

同意を求めてくるなっての悪だくみを正当化したい悪ガキかっての…残念だけど、私はそこまで感情の切り替えに苦労はしていない。

貴女が求めている物ってさ、それって、単純にニコチンによって思考が停止されてるだけじゃないの?毛細血管がきゅっと細くなって酸欠状態になっただけじゃん?

そういう作用で気持ち良くなってるだけ、私は別にそれが無くても気持ちを切り替えれるからいらないかなー…まぁせっかくだし?貰ったものだし?火をつけちゃったから?最後まで堪能するよ?滅多にない機会だもん。ただ、フィルターが付いていないから肺に入れるとむせて痛いから、香りだけ楽しもっと。煙をもくもくぷわぁってね。


煙で輪っかを作ろうと頑張ってみるが難しいっと、煙で遊んでいると指先まで灯りが近づいてきた人が落胆した顔をしながら最後の煙を吐き出している。

「はぁ…」

一本吸い終わって床にぽいっと捨ててガシガシと踏んで消している。フィルターが無いから土に還るからいいけどさ、ポイ捨てすんなよって思っちゃうよな。っま、この世界にそんなマナーなんてないけどさ…ちょっとお仕置きするのもありかもな?

何が良いかと考えると、直ぐに思いつく、カジカさんが嫌になることなんてたった一つだよね、きしし。

さて、そんなマナーの悪いお馬鹿さんには、ちょっとした逸話を語ってあげよう、タバコが人体にもたらす健康被害っていう逸話をな!

これを聞いて、どんな顔をするのかな?きひひ


邪悪な笑みを一切隠さずに脅すような感じで一つ一つ丁寧に、ゆっくりと、そして冷酷に淡々と煙草によって発生する健康被害を伝えていく

持久力が下がる

どうして?っという不思議そうな顔をするので、理由を説明してあげる。

「肺が黒くなる?肺とは?」っと質問されるので、呼吸する臓器でそこにたばこの煙がつまって真っ黒になる

まじかっという…困惑した表情をする。


血管が細くなるので血の流れが悪くなる

「それが何になるというのだ?」っという、質問に貴方はどうしてベテランって渾名がついているの?っと質問に対して質問を返すと

「それは、ありとあらゆる武具を扱えれるからだ」っという、真っ当な説明を返してくるので、裏の意味の方だよっと伝えると

「…むぅ、姫様がそちらの話題を言うのは珍しいがそれが何か?」股間に指をさして、アレが大きくなるのは血が通うからだと伝える

「…?」意味が分かっていないみたいなので、都市伝説ではあるが、その可能性があることを伝える


血の流れが悪くなるっと…


漸く理解したのか青ざめた表情をしている、頭のてっ辺から汗が流れ落ちていき、涙目になっていく。

その表情を肴にタバコを吸いきり、カジカさんに向かってゆっくりと煙を吐いてから、もう消えてしまいそうな程、短くなった先端に灯りが灯った白い筒を空中に投げて術式で一気に燃やし尽くし灰となって空中を舞っていく。


はぁぁ、たまんない…男の人が表情を崩すのを見るのが癖になってしまいそう。


「ひひひひめさま…な、なおるであるか?吾輩はまだ、遊び足りないのであるぅぅぅ」

色々と堪能できたし、気分も晴れたので、立ち上がってその場を去ろうとしたら袖を掴まれてしまう。

この手の診療相談をお母さんにするのは嫌だろうから、私にしか相談できないよねー?しかたねぇなぁ~。

「吸い始めたのはいつ?」「つい最近であるぅ、二日?三日?くらい、前からであるぅ、本数も30本くらいしか吸ってないのであるぅ」

以外と吸ってるねぇ、タバコって高い筈だけどなぁ?そんなに頻繁にさ、実家に帰ってるの?いや、タバコくらいなら配送してもらえるか。

「これからは、吸うのを辞めたら回復するんじゃない?知らんけど」

にこやかな笑顔で立ち去ろうとするとカジカさんの顔がくしゃっと崩れ泣きそうになっている。きひひ、良い顔。

「ぅぅぅ、待って欲しいのであるぅ」

縋るような顔をしてもだーめ♪禁制品に手を出したのがいけないんだよ?

掴まれた手を払いのけようとすると

「あ!!姫様!!」

懐かしい声がするので、視線を向けると、やつれた表情のメイドちゃんが此方に向かって手を振って駆け寄ってくる、着ている服に慣れているみたいで、綺麗な足運び。

「お久しぶりですー!!」

涙目で挨拶をしてくる…んー、やっぱり色々と押し付けちゃったからストレスで大変そうだね。表情で伝わってくるよ。メイクで隠しているつもりでも、痩せてしまったら、顔が変化するよね…メイクでは隠せれないほどに。

「あれ?ベテランさんと一緒なんて珍しいですね」

近くに来てカジカさんと一緒にいるっと言う珍しい状況に驚いている。

それにしても、メイド服じゃない状態のメイドちゃんを見ると、新鮮な感じがする。

「ぅぅ、代行ー!お主がいらないからと押し付けてきた煙草のせいで、吾輩はー吾輩はー」

縋る様な情けない声、でも、その声で勘違いが正される

…ぁ、そっち経由か、成程ね、っとなると、この煙草の出どころは大陸の方か。だから、香りが微妙だったんじゃねぇのかな?あっちは基本的に何でも粗悪品だもんなぁ。

「え?なんですか!?何で、涙目なんですか!?…まさか、吸ったんですか!?禁制品だって伝えましたよね!?」

「代行がー、吾輩に渡すからー」

「私だって、そんなの貰ってもいらないんですー!ベテランさんだったら、ご実家の御父様にプレゼントとしてどうですかって、ご自身では吸わないっと、言ったじゃないですか!だから、渡したんですよ!?」

カジカさんってちょいちょい女々しい所あるよねー。心が強いようで弱いんだろうなぁ…

だから、影でモテているのか?意外と、見えない所で女性達に甘えてるって噂があるけれど、信憑性高くなるよね、こういう姿を見ているとっ、さ。

「好奇心であるー!抗えなかったのであるー!!」

ぺそぺそと情けない言葉ばっかりいうので、これは流石に、らしくないって、感じがする。カジカさんがメイドちゃんに弱音をはき、縋るのは見たことが無い。

何かあったのか聞いてみると。


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