Dead End ユUキ・サクラ (7)
短いと感じる二日間…成功させる確立を上げるために何が必要なのか冷静に計算した。答えは単純、わかりきっている。
その答えに向かって私は動く、それが最も効率的だと判断したから。
時間は少ないけれども…僅かなこの二日間…徹底的に勇気くんを育成することに専念した。
彼を教育するのに貴重な時間、貴重で高価な液体などを浪費する、これは…投資だと割り切る、割り切らないといけない。
「うん!文句なし!」
二日間、経ったの二日間で何が出来るんだと、少々、彼を下に見過ぎていたっていうのは否定しない。
驚異的な才能を目の当たりにしたよ…与えた課題は…全て完璧にこなせるようになっていた。はっきり言って化け物だ、彼はこの為だけに再度、現世に蘇ってきたのだと確信してしまいたくなるほどに、完璧だった。
彼の才能に対して私は賞賛することしかできない!嫉妬なんて湧き上がる余地すらない程に彼の才能は飛びぬけているのだから!!っち…
相手に私の中を渦巻く黒い感情が絶対に見えないように拍手して褒めていると、まんざらでもない表情をしている。…っち。その笑顔が癪にさわるぜ。
「俺だって、やればできる!だろ?ユキ!」
ユキさんもおめでとうっと褒めてくれているのだろう、とても誇らしげだ。昔、お母さんが言っていたことを思い出す、男の子は褒めた方が伸びると、それに倣おうじゃないかええそうともそうとも、幾ら私が研鑽を積んで積んで、長い時を得て会得した技術を経ったの二日で追いつかれてしまったことに対して、な~んも感情なんて湧き上がって来るもんかふぎゃー!!
えふんえふん、いけないなぁ私ったら~やだなーもう、心が乱れてるぞっと☆彡そんなんじゃ効率的に動かせれないぞっと☆彡感情なんて効率から最も遠い場所にあるじゃないかってね☆彡
うん、少し冷静になって考えてみると、これは希望の目だ、認めるよ!
経ったの二日で私が磨いてきた技術を完璧に会得されてしまったっていう事実は奇跡だよ!
後は…知識だけがネックだ。
渡した本については読んでいるが完璧に暗記できているかと言われるとっと、頼りない返事が返ってくる。
そこは、仕方がない解剖学なんて一朝一夕で覚えれるほど単純じゃない、本だけで人体の構造を把握するなんて出来やしない、平面で見るのと立体でとらえるのは別次元だからね。難しいものだとわかりきっている。かといって、人体を解剖する時間も素体もない。培養液で頭のない人体を精製しておけばよかったのだろうけれど、それは、ちょっと、その、倫理に反し過ぎててちょっと抵抗があったんだよなぁ…
想像してよー、こんな薄暗い誰もいない空間にさ、大きな試験管の中に浮かんでんだぜ?頭のない人間の素体がさぁ…こぇぇよ流石に…
無い知識や経験に関してはちょっとアテがある。
それがこれ、『感覚共有』って概念、それを実現するために、魂の同調を応用して出来ないかとちょっとばかし研究してみたんだよね!
久しぶりの術式関係の研究に心を躍らせながら昼間徹底的に研究を重ねたよ!
その結果、陣をちょちょっと改良して、視界共有が出来るようになった…っていっても、ノイズとラグが酷過ぎて、気持ち悪くなっちゃうから、連続して使えれそうもないけどね、でも…感覚の共有は不可能じゃない!希望がまた増えたとついつい手を握り込んで拳を作ってガッツポーズをしてしまったよ。
そんなわけで、勇気くんの視界を共有してもらえれば、随所で、勇気くんが悩んだときに共有してもらってアドバイスを送るっというのは問題なく出来そう。
解剖学だったら私の頭の中には完璧にインプットされているし…人体の解剖は経験済みだから、問題はない、私が知識となればいい。
正に、愛の二人三脚、初めての共同作業!
…じゃねぇっての!残滓共がしゃしゃりでてくんなっての!!
…まぁ、悪い気はしないけどな。適材適所…私の人生で滅多に使う事のない言葉。
適材適所に該当し過ぎる私が全てを解決して来たからね…つっても、ここ数年は地下に籠りっぱなしで外との関りは殆ど無いんだけどね。
「まさか、俺にこんな才能が眠っているなんて…人生終わってから、気が付くこともあるのだな」
言い得て妙だけど、普通はそんな気づきなんて無いんだけどね?人生は一度きりだもんね…私と勇気くんが特殊なだけだよ、つってね…
彼の言葉には同意しか、湧いてこない程に才能を見せつけられた側としては、うん、そうだねって肯定するしかないわけでさ、誇っていいと思うよ?是非とも医療班に欲しい才能だよ。後は知識さえ身に着けて行けば、ゆくゆくは、医療班団長として認められると思うよ。
まぁ、戦士の部が絶対に離してくれないだろうけどね~。
困ったことにその身体能力の高さは女将こと、マリンさんに匹敵するっと噂されているの知ってるよ?
流石は、筆頭騎士の家系にして、我らが心の底から敬愛する偉大なる戦士長の息子さんってね…血筋だけ見れば極上だよね、今回はそれだけじゃない、人が争い続けた戦乱の時代を生き抜いた人の魂まで宿しているんだから、ね。反則じゃね?ってなるわけよ。
外に出ないのによく知ってるね?って?へへ、完全に外に出ないわけじゃないんだな。
お母さんによく言われるんだもん、外に出て運動しなさいってね、だからね、たまに気晴らしで外に出たりするんすわ。
そういう時に、近くを通りかかった戦乙女の子に声を掛けて、街の事とか、彼の事とか、色々と話は聞いてたりするんだな、当然、周囲の評価ってやつは、耳に入ってるんだな。
最近の話題だと、勇気くんったらすぐに頭角を現しちゃって、あのベテランさんに剣で一本取ったんだってね。
大人げない、勇気くんって人との戦争を経験してきてる人でしょ?経験値の差が違い過ぎるっての。
対人戦においては一日の長があるだろうってのに、先輩に花を持たせるってことをさ、しなかったわけ?大人げないよねー、これだから男子ってさ、負けず嫌いだよね~。
そんなカッコいい姿を色んな人たちが目撃しているわけでさ、そうなると、当然だよね?戦乙女の間では勇気くんの株が急上昇ってわーけ、話してくれた戦乙女ちゃんなんて完全に女の顔になってたもんなぁ…ちょっとね~困ったことにさー残滓共がその表情を見て、殺気を込み上げてきたからさー、抑えるのに大変だったもん。
私としては、流石は王国最強の筆頭騎士の血筋にして、偉大なる戦士長の息子!!って感じるのは致し方ないと思うよ?
そういう人物が目の前に現れたらさ、強い遺伝子を求めている戦乙女ちゃんからしたら、ゆくゆくは戦士長になる人物!唾つけかなきゃ!って本能の部分でも感じちゃうのは仕方ないよね?美貌も相まってさ、何人の女性が骨抜きにされちゃうんだろうね?こうなるとさ、魅了の魔眼なんて関係なしだよね。
っま、そんなわけで?私が知らない間に?気が付けばこの街で、ハーレムとか、作ってしまいそうな程に人気急上昇中なんだってねー?
はいはい、残滓共は静かにしなー?今代の私は私だからねー?殺気を膨らませるなー?抑えるの大変なんだぞー?っつってね。
っま、殺気を抑えなくても、目の前で浮かれて上機嫌でユキさんと会話している人が気が付くわけも無いし、ハーレムを作るんじゃないぞなんてな、そんな些細なことを注意する気もうせてしまう。
それにさ、そもそもだよ?この大陸は一夫多妻制だっつーの、甲斐性さえあれば、別にいいんじゃね?好い男を独占したいのはわかるけれど、世界の宝だと考えれば、独占する方がまちがいだっつーの。
それにさ、私独りであの笑顔を独占するのは、あの美貌を独り占めするのは気が引けるよ…
あれ程までに屈託のない輝く笑顔を見せつけられるとね、しょうがないよね。みんな、あの笑顔を欲するってわーけ。しょうがない…しょうがない、独占したいけれど、しょうがない。
さて、浮かれている人に予定を伝えないとね。
「ってなわけで、明日はお休み!しっかりと魔力を練って、明後日の本番に備える!っで、いいかな?」
「ああ、そうだな。魔力の消費が高いからな、魔力を練って蓄えておくよ…」
うんうん!嬉しそうな笑顔をしちゃって、自分の存在意義と言うものを感じて感じて仕方が無いんだろうなぁ。
うんうん!良い心がけだっと手土産に4本小瓶を渡すと笑顔が引きつっていた。
凍り付いた笑顔のまま、去り際に手伝える仕事が無いか確認してくれるけどさ、今は大丈夫っと笑顔で送り出した。
…本当は話し相手になってほしかったけれど、この二日で体力も魔力も相当、消費しているはずだろうから、休めて欲しい。
階段を登っていく後ろ姿を見送った後、ふと、静かになった地下室を見渡す。
心臓がきゅっと小さくなるような感覚が伝わってきて自然と頬に冷たい水が伝っていく。
ははっと、頬を伝って行った水を袖で拭ってから、独り寂しく研究を再開する。
薄暗い闇の中には、私さえいればいい…




