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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ (3)


鬼が生まれた次の日、鬼の魂が静まっているのか、遠くから様子を見てみる。

物陰から病棟で働くお母さんを眺めていると、何時もと変わらず、穏やかだ。


だが、長い付き合いのある私にはわかる…あれは、まだ鬼だ、猫を被ってるだけだ!


物陰から震えながら様子を伺っていると、近くで足音がしたので、振り返ると、手を振って挨拶をしてくれる。

挨拶をしてくれた人が職場に向かおうとしたので呼び止め、上司である医療班団長の様子を聞いてみるが、普段と変わらず、働いていると教えてくれる。

彼女からそれ以上の情報は得られないと判断し、ありがとうっとお礼を述べて彼女を解放する。


どうやって、鬼を鎮め、冷静に対話が出来るのか、策を巡らせながら鬼を観察していると。

先ほど、会話した人と鬼が会話をしている、先ほどの女性が部屋を出て行った瞬間


鬼が此方に向かって的確に視線を向けてきたので、逃げる!!!

ちくらないでょ!!!密告されたぁ!!!


脱兎が如く!!全速力で逃げる!お母さんがこっちにまで、走って来ようが距離の理がある!追いつけまい!!




運動不足の体に鞭を打って逃げ切ったのはいいんだけど…

これってさ、余計にこじれてしまってないかな?…してる気がするなぁ…どうしたらいいのかな?

「この状況、察することが出来るが、もう少し淑女らしく振舞えないのか?」

「…なら、いい案を考えてよ」

走って逃げている最中にいい足が居たので、声を掛けて飛び乗って私の代わりに走ってもらったから逃げ切れたんだけどね!!

今代の私はガチで体力も筋力も無い!たったの10メートル走っただけで足が震え始めてお腹いたくなっちゃったんだもん!

危なかった!あのままだったら、距離の理なんて関係なく掴まってた!!


そんなわけで、訓練が終わって片づけをしている最中のアッシーに出会えたのが僥倖ってね!

周りからすると、私のこんな素っ頓狂な行動をしていても、左程、気に留める様子はない。

ただ、困ったことがあるとすれば、私を追いかけてきた鬼の様子を見て何かしたのだろうって思われているだろうから、いずれ、手配が回って私の位置が直ぐに鬼の耳に届くようになるだろう。


なので、ここで僥倖と言えると言っても問題ないくらい探していた駒に出会えたのが、ほんっと運が良かった!

手配が回ってからだと合流するのがより困難となる、その前に会えたのだから、これはもう運命!彼に託すのが一番ってね!!

「ってなわけで、ジラさんを説得してきてもらってもいいよね?はい、決まり!」

逃げ切った先で勇気くんの肩を叩いてこれはもう決定事項だからっと念を押す。

「やれることはやる、のが、信条だが、相手はあの方かぁ…」

すっごく、嫌そうな顔に、無理そうだと諦めている雰囲気が伝わってきたんだけど?それでも、威厳ある国王様だったの?肩書だけだったんじゃないの?

「察しの通り、苦手なんだよ、あの人を見ると、その、だな」

「初恋の人が思い浮かぶからでしょ?」

びくっと体が跳ねる、視線を逸らす…もやっとした心の奥底で何かが燻ぶっているのが分かる、恐らく残滓の類だろう。

しっしっと手で靄を払いのける、幸いにして小火にもならない程度の煙、鎮火なんて絶やすいってね、今代の私は私だ、変に湧き上がってくんなっての。


「気まずい相手だってのはわかるけれど、過去の人と今の人を重ねない!出来る出来ないじゃない!やるんだよ!わかってる?ちみぃ?」

ぺちぺちと太ももをビンタするように叩いて上目遣いで煽り続けていると

「君ってやつは、中々に…あいわかった!俺も男だ、この程度でしり込みする程、甘い人生を歩んできたわけじゃない、話し合ってくるよ」

煽りが効いたのか、しかめっ面をしていたけれど、対峙することに対して観念したのか、前へ進む覚悟が出来たのか、最後の方は晴れ晴れとした表情。

決断の速さと言い、思考の速さと言い、こういうところを見ていると頼れる大人って感じが凄くするんだけど…

残滓からの情報だと、どうも、結果が伴っていない気がするんだけど?…うっわ、否定的なことを言った瞬間に残滓共から凄まじい程のブーイングが飛んできた、うるっさぁ!!


心の中でファイティングポーズを取って、拳を振っている間に、気が付けば、勇気くんは鬼が待つであろう場所へと旅立っていた。

彼の勇姿を目に焼き付けとけよっとジャブをボディに貰うので、容赦なく残滓共に右ストレートを打ち込んでから、地下の研究所に向かって歩いていく。

今代の私は私だっつってんだろ!指示すんなざーこ!





…予想はしていたけれどさぁ、未来の残滓共はこれに、どうしてそこまで、想いを寄せれるんだろうか?見た目だけじゃね?

「不甲斐ない」

本当にね…大人しく地下室に来て、大人しく昨日の作業の続きを初めてさ、無言で何も言ってこない時点で察してたけれど、お願いした側としては結果は知りたいわけで、確認したらこれだよ…


正座して首を垂れるのが王族なのかなー?

嫌味を五臓六腑に染み渡るくらい屈辱と言う名のお酒を流し込んであげようかな?ってな感じで攻めてあげたくなるけれどさ。


分かってたから良いよ、あの鬼を御せるとは思えん!


私の一手が既に間違いだった、あれが無ければゆっくりと懐柔できる、可能性は…無きにしも非ずだよね。

考え無しの一手で相手の逆鱗に触れちゃってさ、それが無ければ、たぶん、感情に任せずに話を聞いてくれただろうし、懐柔もしやすかったんじゃないかなぁって今になって思っちゃうんだよなぁ。

お母さんって、感情の人だから、一旦、火がつくと本気で止まらないからなぁ、如何に火をつけないで緩やかに攻めて行けるかってのがポイントだと、わかってたんだけど、全ての策を講じずに愚直に行き過ぎた私が悪い。


そして、今この目の前に頭を垂れながら、膝をついている人物がいる…

ふっと、脳裏に過る言葉


生かすも殺すも私次第、まさに生殺与奪の権利を握っているのだと。


過ってしまったいけない考えに背筋がぞくりとする、いけない心が育っていく。

純情無垢な私がそれはだめー!って叫ぶ

彼の心を手に入れたいどんな手を使ってでもっと考える私がやれっと叫ぶ


っふ…どちらの考えを選ぶのかって決まってるじゃん、そんなの。


「いいよ、気にしなくて、結果はわかってるし次の策も考えてある。こうなってしまったらお母さんを…ジラさんを説得できるとは思っていなかったし、もしかしたら、勇気くんなら出来るんじゃないかって一縷の望みを託しただけだから。」

ぽんっと肩を叩いて慰める言葉掛けるけれど、立ち上がる様子が無い

「情けないモノだな、これでも、一度の人生を満足のいく形で終わらせたというのに、ただ一人の女性を宥めることすらかなわず、何が国王だ、俺は…二人の影に隠れて、お零れを貰っただけの情けない男だ…」

自責の念に駆られているみたいで、動きそうもねぇや…うん!めんどう!放置!

肩に置いた手を外して「うんうん、そうだね、気が向いたら作業の続きしてね」軽く声を掛けてから、自身の研究に戻る。


薄情じゃないかって?付き合ってあげても良いんだけどさ、こういうプライド?的な?そういう奴に関わっていてあげれるほど、今代の私に残された時間は無いのー

かまってちゃんは放置放置、自分で帰って来るでしょ、いい大人なんだから。


さて、次策の為に準備をしますっか…もしかしたら、勇気くんならって少しだけ期待して待ってたけどさ、結局はってね。

これで懲りた?残滓共?過度な期待はするなっての、彼はそこまで大層な人じゃないって、期待を何重にも重ねんなっての。

はなっから準備しとけばよかった、まったく、時間無駄しちゃったなーもう。


さて、情けない自分と向き合っている人が失敗に終わったから独りで出来るかどうか確かめないとね。

その為には、最近使っていなかった透明な水槽を軽く掃除しないとねっと、久しぶりに使うからちゃんとね~不純物があると難易度があがっちゃうからね、だから、使う前に掃除しとかないとね~。

後、気持ち的にさ、この中に液体を入れて自身の体が浸かるんだから、綺麗にしとかないと気持ち悪いじゃん?っていうか、衛生面的に良くないからなぁ~…

はぁ、念のために独りで出来るようにある程度、揃えといてよかったけれど…


失敗したら死ぬんだよなぁ…


念のために先に過去の私に、研究データ飛ばしたいけれど、それをするとなると、どの道、魔力切れで詰みだしなぁ…

ぶっつけ本番、独りオペ…私はブラックジャックじゃねぇっての!

これが失敗して死んじゃってさ、お母さんに惨劇を目撃されたら、あの人の事だから悔いに悔いて、自決しかねない。

だから、お母さんの命を守る為にも失敗は許されない。


水槽を掃除した後、装着するための魔道具に配線を繋いで魔力が流れるのか確認。問題なし。

水槽の周囲を囲むように施している陣が問題なく稼働するか確認。現時点では問題なし、稼働前に独り用に術式を書きかえれば良し。

材料の確認、問題なし。

麻酔の確認、問題なし。

念のための輸血用、培養血液、問題なし。

傷口を回復させるための栄養素を溶け込ました点滴、問題なし。

回復を促す陣、問題なし。


後は…覚悟を決める、失敗を恐れない勇気だけだ…死ぬ覚悟で成す、やり遂げる、失敗は許されない。


…浸透水式の陣に手を触れながら、何度も何度も深呼吸を繰り返しながらイメージトレーニングを行う。


水槽に専用の液体を入れて、

繋げるための魔道具を液体に漬けて、

陣を起動して、

局所麻酔を注射で投与して喉に麻酔薬を入れて麻酔が効いてきたら吐き出して、

人工呼吸を繰り返し行ってくれる魔道具を喉の奥に突っ込んで、

外れないようにテープで繋いで、

服を脱いで水槽の中に入って、

両腕を水槽の中に入れて術式を起動

背面、胸椎の8番目辺りの皮膚から内部へ侵入

肝臓迄、意識を侵入させ、肝臓に到達させたら、座標アンカーを打ち込む。

打ち込んだら、一旦、意識を外に出して、予め漬けてあった魔道具を持ち上げて、先端をアンカーを打ち込んだ座標に向かって突き刺す。

あっと、いけない忘れてた、突き刺す前に、神経や血管を傷つけないように、侵入経路から魔道具に当たらない場所に少しだけ動かして一時固定。

固定完了の後に、魔道具を背部から肝臓に向かって突き刺す。

突き刺したのちに、再度、座標アンカーしたポイントまで潜る。

潜り終えてから、突き刺した魔道具と、肝臓の組織をくっつける。先端の部分は培養した肝臓の組織で構成しているので、適合はする、はず。

後は、突き刺した魔道具が簡単に外れないように、固定するだけ。固定方式は胸椎にボルトで固定、あ、そうか、骨も削らないと…

先に骨を削ってから固定、いや、位置がずれると大変だから、後で削ればいいかな?…いたそうでやだなぁ…

固定する際に胸椎周囲にある血管神経も当たらないように固定させてから、だよね。うん、その方が術後、後遺症無く動ける。


術式の手順をおさらいする、一度や二度じゃなく、何度も何度も…医療の知識は、私よりも医療班の二人の方が豊富だから、是が非でも協力を約束させればよかったんだけど、断られたのだから仕方がない、仕方が無いから独りでやる。成功確率は…


10%あれば上々、っへ、残滓の皆さんは計算がお得意ですね~…10回やって1回成功か、博打が過ぎる。せめて50%は欲しい。

少しでも確立を上げる為にも、意識を再度、イメージトレーニングへとうつす。

残滓の皆さんに何処が不安なのか相談しつつ、ね…



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