Dead End ユ キ・サクラ (91)
目覚めは最悪だった…ベッドの上で、自然と口がへの字になる。
ここ迄、情報と言う名の濃厚なスープを強引に流し込まれるなんて考えた事も無かった。
頑張って飲み干して出てきた感想はただ一つ、苛立ち
…たぶん、ううん、今回の私は犠牲になる。犠牲になるように仕向けられた、未来の残滓によって。イライラする。
何故なら…
賢い賢い私の頭脳が直ぐに答えを導き出しちゃったんだもん。
渡された濃厚なスープから得られた情報で、どの様な結末へと進んでしまうのか、演算して教えてくれた。
どう足掻いても、滅びる、私達は負ける。
冷静に思い返してみても、その結末を回避するのは出来そうもない。
その大きな起因、要因?要素?っとなるのが…
私としては順調だと思っていた研究、未来の私から託された研究がこの時点で、終えていないからだ。
苛立ちが更に湧き上がる。
未来から託された研究に関しては、ぶっちゃけると、正確には終えてある、結果は出ている!実用段階に入ってる!
だが、未来の私が求めるような、錬成するための水準には…達していない、到達できていない。
培養液っという研究物。
それそのものは、結果的に見れば完成している。
臓器くらいなら造れる。移植するための技術も実用段階だが、完成していると言っても差しさわりが無い。
ただ、未来の私が…残滓が求めている水準には到達していないだけ。
まだ、研究の余地があるのはわかってる、改良の余地があるのも十二分に理解している…っが、誤算だったのが、期日がもう残されていないってこと。
あと一年でどうこう出来る段階じゃない。
臓器を精製するのに、現時点では、時間が凄くかかっちゃう。
だけれど、出来るの!臓器や四肢を精製して培養することが出来ているの!
突如渡された課題をクリアするために!!効率性を高めて高めて、無駄を省いて省いた!だけれど、未来の私が求める速度での…培養は、悔しいけれどできない。
副産物っていうか、それらを研究している段階で絶対的に必要だから、編み出した新しい技術もある。
名前を考えたり名付けたりするのが苦手な私が考えた、浸透水式っという新しい医療の術も出来つつある。っていうか、出来てはいる。ただ、扱いが難しいだけ。
後…現時点では、ちょいと厄介な現象が発生したりするのは目を瞑ってほしい、かな…
それと、扱いが難しすぎる、難度がすっごい高い、今のところ、扱えれる人が私とお母さん、だけ?かな?
医療班でも練習に取り組んでくれているはずだから、他にも、いるの、かな?…そういう部分は一切関与していないからわかんないんだよなぁ。
っていうか、お母さんも出来るのかと言えば、すこし?ちょっと?怪しいかも?
完璧に、扱いきれる、出来る人が私しかいないっていう、不安要素とかが、山積みのように…かなりある!けれども!条件さえ満たせば、実用段階まで持って行けそうな気がする。たぶん!でも!1年じゃ無理なのは確か!
なら、何年あれば、培養液や、その他の関連するもの全てが、未来の残滓が要求してきている段階へと持って行けるのか…ざっくりと計算はしてみた。
このペースで研究を続ければ…早く見積もっても、後、5年…5年は欲しい。5年あれば、ざっくりだけれども、求める水準に持っていけれる、と、思う。
突如突き付けられた期日に溜息が零れる、っていうか、零さないとその辺の物に八つ当たりしてしまいたくなるほどに苛立ちが溢れ出てくる。
かといって、未来の私が…残滓が今の状況を見たら、貴女は何をしていたの?って罵られてしまいそうな気がする。
かなり昔に情報を飛ばしたのだから、時間はあったよね?って、容赦なく罵ってきそう。
非情で非道な未来の私だけれど!事情を知ってくれたら許してくれるはず!
貴女が警告してくれた驚異的な敵の情報、その全てに対してどの様に対処するべきなのか、策を講じて、策を実行するために着手しながらも!期日付きの研究を行うという凄まじい激務をこなし続けてきたんだからね!っていうか、期日があるなら先に言えっての!!って、文句を言っても駄目なんだろうなぁ。やってのけろよって言われるんだろうなぁ。自分ながらに、そんな非道な事を言う人物に苛立ちを感じてしまう。
私だって、私なりに頑張ったんだもん!
与えられた、敵の情報を見て、いつ来るかわからない敵の群れとか、備えるべき相手に向けて何が必要なのか判断してさぁ…
このままだと、現実的に物資を搔き集める時間すら勿体無いっと判断したわけで!お陰様で?連絡なんて取りたくなかったけれど?
取らざるをえなかったからお父様に協力を仰ぎました!!!
ほんっと、イライラした!!何年ぶりに会ったと思ってんだっての!!少しは親として融通きかせろっての!!
あのハゲデブ親父め!娘との取引位さー!すんなりと応じろよ!取引の日取りを決めるだけのやり取りだけで何日かけんだっての!何回も何回も!非効率的な手紙のやり取りをさせやがってよぉーもぉー!日付ぐらいすぐ決めてよ!!
取引内容だってさぁ!!おま、高くね?って、感じだったしなぁ!!
欲しい人が居るのなら価値がわからなくてもふっかけろってのは商売人の基本だけどさぁ!!
娘にすな!!本当に容赦ないよ、あの人…
これがさぁ、一切、親孝行していないのなら仕方がないよねってなるけどさぁ、家族としての縁を切ったからっとか言ってくるけどさぁ、一応、私からしたらさ、親じゃん?
だからさぁ、貴族の人達が親元から離れて、成功したら皆がしてるように…例に倣って、親孝行の一環として!私の貯金から、結構な金額を!前々から、実家に寄付してんだろっての!
それなのに、欲しい金属を購入するのに足元見やがって!大量に買うんだから少しは安くしてよ!!びた一文も下げないその姿勢!!業突く張りすぎんだよ!はぁ~思い出すとイライラしてきた!
お父様じゃなかったら絶対に二度と取引するか!って、関係各所に通達だしてるよ!!
あーだめ、血管キレそう、全身の血管が沸騰しそう、ダメダメ、あんなのに1秒たりとも思考を割く時間がもったいない!気持ちを切り替えよう!
何度か深呼吸をして心を入れ替えていく。入れ替えれば入れ替える程、全てを捨てて逃げたくなる。何処かに旅立ちたくなってしまう。
どこでもいいから、ふらっと全てを忘れて遊びに行きたいなぁ…
心の溜息を地面に向かって吐き捨てて何度も何度も踏みつぶす様に踏み抜くと…少しだけ、ほんの少しだけだけど、冷静になれた。
直ぐに心を切り替える為に現状を見直す。
お父様と取引するしか無かったのは、間違っていない、私達の街で一番近くて稼働している探鉱はあそこしかないから、仕方がない。選択肢はなかった
鉄だけだったら、貿易で取引しやすい、だけど、鉄ではダメだと分かってしまった以上。
実家の地方でとれる鉱石に頼らざるを得ないと判断した。間違っていない、この判断は正しかった誤算があるとすれば、相手が悪かっただけ。
私が求める金属は、この大陸では、実家の地方でしか取れない。
貿易だと、似たような別の金属を混ぜ込んできそうで、それらを判別するのに時間もかかってしまう。
この大陸を隈なく探せば、他にも発掘できそうな気はするけれども、一から探している時間はない。
他の大陸でも、見つかっているけれども、使い方が知られていないだけって可能性もある。
一番手ごろで手に入りやすい場所が、お父様がもつ探鉱だけ…私が欲しいのはそこにある。めちゃくちゃ嫌だけど、頭を下げれば融通を利かせてくれる相手。
頼らざるをえなかったってわけ。
久しぶりに会ったときに少しくらい笑顔で出迎えてくれても良かったのに、昔と変わらず、仏頂面で高圧的に取引をするかって言いだしてきた時は、ああ、こいつは親じゃねぇって感じちゃったよ。マリンさんや、ジラさん、セレグさんとは大違い!
取引内容を簡潔にまとめると、無理を言って、お父様が保有している金属、倉庫に寝かされている金属たち、その全てを私達に売って欲しいってお願いしたんだよね。
これがさ、世間一般でも知れ渡っている金属で私たち以外も必要だと求めている金属だったら高値でも文句言わないよ?
使い方を知らない、よくわからない鉱石、発掘したは良いけれど、どこに取引を持ちかけたらわからない鉱石、お父様は捨てるっという行為が嫌いで、売れそうな気配がするものは取り合えず取っておく人だから、そういうのは、適当に捨てないで、取り合えず倉庫に保管してある。
もしかしたら、その中に私が欲しい金属がある可能性が高いと、前々から狙ってはいた。でも、会いたくないから行く気がしなかっただけ。
今回みたいな事態にならなければ、取引を持ちかけるつもりは無かった。
どうしても必要だから、会いたくない相手、頭を下げないといけない相手に…取引を持ちかけた。
具体的にどの鉱石を保有しているのか品質状態を確かめたいってのもあって、倉庫の中を見せてもらったあら、知りたくも無い新しい一面を知ってしまった。
お父様が意外とマメな性格をしているのだと、知ってしまった、メモリーの一部にそんなどうでもいい情報なんて保存したくないのに知っちゃったよ…
倉庫の中は本当に綺麗にしっかりと品質を保つように管理されていた。似たような色や形をしている鉱石をしっかりと分けて保管していたし、錆びる鉱石に関しては錆びないように創意工夫されていた。
丁寧に管理されていたから、もしかしたら、集めていたかもしれない、実は鉱石コレクションするのが密かな趣味だったのかもしれないって思ってしまう程に、丁寧に扱われていた。
価値がどれほどあるのかわからないものだっていうのに、我が子以上に丁寧に扱っていたのが腹が立ってしまったのは内緒。
そんな、密かに大事にしていた鉱石たちを安値で買いたたく気にはなれなかったので、そちらの言い値で購入すると言ってしまったのも良くなかったのだろう。
だからと言って、ただで転ぶ私じゃない、条件はつけたよ?言い値でいいから、その代わり、出来るだけ早くに売って欲しいって、出来るだけ早く、私達の街に運んで欲しいって条件は付けた。
だって、そうでも言わないと、何度か取引として会いたくない相手に会わざるを得ない状況になりそうだったんだもん、一回で蹴りをつけたかったぁ!って魂胆も相手には見えていたのかもなぁ…
思い返してみても、相手に対して、けっこう無茶な取引を持ちかけているのだと…冷静に思い返してみても、無茶な取引の仕方だと…次があるとすれば、そこの部分は、反省しないといけないなぁ。それをわからせたかったのかな?商売人として横暴な事をすれば横暴な仕返しがされるぞって言いたかったのかな?って、好意的に見ればそうだけれど、取引が成立した時の邪悪な微笑みは純粋に自分の懐が潤う取引が出来たことに満足しているだけの商人としての顔だったなぁ…
ってなわけで、無茶ぶりでのお願いをしたのだから、足元を見てくるのは、商人として、貴族として当然だよね。
甘ったれなのは私…頼るつもりなんて、絶対にないって思っていたのに、なぁ…




