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最前線  作者: TF
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Dead End ユ キ・サクラ (89)


初代聖女様…偽りの聖女がいる時代に獣共が攻めてきた。

人々は奇跡を願った、聖女である彼女達が此度も奇跡を起こして助けてくれるだろうと教会に縋ったのだろう。


理由はわからない、ルの力に目覚めようとしていた白髪の少女たちは…今と違って数多くいたそうだ。

その人たちも獣共との闘いに呪い師として聖女と言う立場を隠して戦いに出向き、人知れず、死んでいった。

死なずに戦いに勝利すれば、堂々と聖女の奇跡によって敵を退けたと言うつもりだったのだろう…


最終局面、獣の軍勢が王都眼前にまで迫ってきた時に始祖様が現れ、敵を退けてくれた。


その後に、始祖様が私達を憂いて加護を授けてくれたのは、その生き様だったのかもしれない。

ただ、単純に短命種だから同情してって、わけではないのかもしれない。

献身的に、人の為に、実家から、地元から、連れ去られても…

始まりの聖女様と同じように気高く高貴な魂をもって一瞬だけ強く輝こうとした生き様に何か感じるものがあった結果。未来を授けようとしてくれたのかもしれない。

結果的に見ると、始祖様が、残された白髪の少女たちに未来を与えて、それが繋がって、私達は教会が管理する聖女の一族へと至った。


…では、真なる聖女って何だろう?始まりの聖女が真なる聖女ってこと?私は、違うよ?尊い教えなんて、何もないよ?

「あら、しっかりと話を聞いていたのね。反応が薄いから聞いていないかと思ったわ、偉いじゃないの」

ちゃんと聞いてましたっと膨れっ面で言うと、愛嬌はあるのねっと笑ってくれた。

「私達は…認めたくないけれど、真なる聖女ではないのよ」


”なぜならルの力に目覚めていないからよ”


ルの力?って、術式の事じゃないの?他の人よりもちょっとだけ術式について理解度が高い、それでいて白髪で、命が短いからってのがルの一族が背負った呪いのような使命じゃないの?

「いい?ルの力っというのは、始まりの聖女様が起こした奇跡、どんな傷も、欠損してしまった腕すらも再生させた。その超常たる力に目覚めたものを…村の人達は神からの授かりものだと言う。神から祝福され、この時代に何かしらの意味を持ち生まれ出てくる。神から与えられた役割があるのだと崇められた。神の巫女っと、言う意味も含まれているのよ、どんな事情かどんな事象かわからないけれど、決まってルの力に目覚めたものは白髪になっていくと言われていたのよ」

なら、叔母様も白髪だし、お母様も白髪だから、ルの力に目覚めているのでは?白髪になるのは体内の魔力を限界まで振り絞った結果。私達は呪いに近い特殊体質、魔力欠乏症故じゃないの?奇跡なんて…私は起こせれていない。

「そうね、気が付いていないだけで、私もこいつも…ルの力が在るのかもしれない、けれどね、思い出してごらんなさい、貴女が知る唯一の聖女、同じく命短し呪いという祝福を背負った妹が…貴女の母が何か特殊な…奇跡ともいえるようなことをしてみせたことはあって?」

…言われてみればない、お母様が何か術式を扱っているのを見たことが無い。私に見せていないだけかもしれない。でも、日誌にもそういうのに触れたようなことは書かれていない。

「…奇跡は起こすことが出来ない私だって、多少の癒しの術は扱えれるし、多少の術式に関しては理解はしているわよ?しっかりと、学んできたのだから。でもね…」


”始まりの聖女様が宿した奇跡は誰一人として発現することは無かった”


それは単純に魔力が抜け出ていくから、力の下となる根源的な力が体には残されていなかったんじゃないの?

「貴女の意見も、ごもっともだと、思うわ、貴女達の研究によって、私達が宿した呪いを封じているのだから」

でしょ?魔力が満ち足りていれば、皆、何かしらの力を有していて、ルの力に目覚め行使することが出来たんじゃないの?

「でもね、よく考えてみなさい。」

…考えてるよ?でも、何も結びつかないよ?

「始まりの聖女様は、初代聖女様とは違う、始祖様と交わっていない、っというかそもそも、初代聖女様も始まりの聖女様のような奇跡は起こしていない。っとなるとややこしいわね、私達が魔力を扱えれているのは、きっと、始祖様の血によって強化されているからよ。その血が流れていない始まりの聖女様は…どうやって奇跡を起こしたの?」

…なる、ほど…確かに、始祖様が力を授けてくれる前の時代の人達は弱かったと伝えられている。

勇気くんも、そんな感じの事を言っていた気がする。

「つまり、始まりの聖女様は…私達とは違う、魔力とか、そういうのを関係なく、奇跡を起こす術を知っていたのよ」

そんなことは無いと思う、代償無しで力は行使できない。化学でもそうだし、魔術においても、その原則は変わらない。

魔法だってそうだよ、何かを消費するからこそ、何かを得る。完全なる無から代償無しに何かを産み出す事は出来ない。


何かと何かがくっ付いて、何かが起きる。これだけは絶対だ。絶対の法則だ。覆ることは無い。

私達がまだ、観測できていない何かしらの要因があるのなら話は別だけどね。


…勇気くんの存在を教えてあげたいけれど、過去にそういった情報を漏らすわけにもいかないから、黙っていよう。

恐らく、白き黄金の太陽が始まりの聖女様に何かしたのだと、私は推測してる。


…あれ?白き黄金の太陽って日誌に名前なかったっけ?

「白き黄金の太陽?ああ、いる、わね…それが何か?ただ、始まりの聖女様の傍に居たかどうか定かではない騎士の名前でしょ?…え?あれって、後から作られた御伽じゃないの?」

…なるほど、教会側が作った幻想的なおとぎ話っというか童話的な感じだと思ってるわけだ?

確かになー、私も童話とか、英雄譚の何かだと思ってたもんなぁ…

だって、白き黄金の太陽が遺した遺物が無いんだもん。何処にも…

子孫だっていないし、何処に行ったのか、何処から来たのか、何も書かれてなかったし、そうなると、作り話じゃないの?って思っちゃう。


でも、勇気くんの感じからすると、実在した人物っぽいし、異形な雰囲気を感じる。

下手すると、始祖様と同じで外の世界に人なんじゃないかって勇気くんと会う前には仮説も立てたこともある。


っで、実際に、勇気くんと話をして、全てを悟ったよ。

白き黄金の太陽は地球の人だってね。


もしくは、地球の文化に触れた人。


…もしかして、叔母様ってイラツゲって何の意味か知らない?

「イラツゲ?知ってるわよゲツライって意味でしょ?何処か遠い大陸の言葉で月下美人っていう花の別名…名前でしょ?それくらい知ってるわよ」

なるほど、なら、ギナヤは?

「ギナヤっというと、ギナヤ家ね、もう殆ど没落した貴族じゃない、王家と何か、関係があるって感じの貴族よね?」

それが柳って意味だと知ってる?

「ヤナギ?…逆さ読み、まさかそれって」

柳っという漢字を知っているので書いて見せると

「見た事も無い国の言葉ね…これがヤナギって読むの?まさか、ギナヤ家は」

そうだよ、獣共に殺された一族の果て

「なるほど…ね、もしかしたら、当時はヤナギっと名乗っていても、逆さ読みでイラツゲと同じような経緯でギナヤになってしまったっということね。なるほどね、まぁ、それが何?って話よね。それがどうしたの?」

イラツゲっという名前は白き黄金の太陽が始まりの聖女に与えた名前だっていうのは知ってる?

「ええ、しって…まって、少し読めてきたわ、まさか、白き黄金の太陽って実在していてたってことね…っで、それだけ?」

それ以上もあるけれど、それ以上は言うのは良くない気がするので黙っておこう

「一瞬視線を逸らしたのが気になるけれど、成程、間違いを正してくれたってわけね。そうなんだ…実在していたのね、大層な名前だから、教会が勝手気ままに生み出した想像上の人物だと思っていたわ」

私も同意見。勇気くんに会うまでは、名前だけで、何かの比喩とか、何処かの王族で名前を書けないのだと思っていた。

「これで、少し合点がいったことがあるのよ、王族がどうして、黄金の鎧を儀式のときとかに持ち出すのか、純粋に富と権力の象徴かと思っていたら、そこにあやかっているのかもしれないわね。始祖様って鎧らしき鎧を着ていないそうですし、青い服だけだと、確かに威厳も儀式感もないって思っていたから、そういった理由で選択肢から省かれていてって思っていたら、そういうことだったのね。」

うんうんっと、頷いて自分の中にある答えが結びついたみたいだけど、叔母様ってもしかしなくても結構、自我が残っているのかもしれない。

もしくは、限定的に今この瞬間だけ、私と同じように自我を、意識を表面に浮上させているだけなのかも?


ちょっと、逸れちゃったけれど、真なる聖女ってどういう意味なのか、叔母様の感じた、辿り着いた結論や意見を聞きたい。

「ああ、ごめんなさいね、真なる聖女って意味ね、それは、貴女の事よ」


どうして?どの部分が?私に期待を込めてるのだとしたら見当違いだよ?奇跡なんて?起こしてたら…何度も死んでいないよ。

「過去・現在・未来っていうのかしら?…貴女の力を使わせてもらった、便乗させてもらったから言えるわ、あの力は始まりの聖女様が持つ奇跡と同質のものよ」

…時渡…


”粛清されるぞ”


背筋が凍り付きそうな悪寒がした…


「どのような原理なのかわからないけれど、あの時、感じた感覚には覚えがあるのよ、あれって、寵愛の加護を通して何かしているのでしょう?」

この問いかけにこの時代で、応えても良いのか、答えを与えても良いのか…今夜は新月…

すっと、破邪の力を使って、小さな結界を作ると、何かしらの術が行使したのが直ぐにわかったのか、叔母様が身構える。

「…何をしたの?場合によっては」

いけない、叔母様は攻撃的な人だ、直ぐにこの力がどういったものか、説明しないと。

「そんな、力も…貴女は持っているの?出どころはって言いたいけれど、未来では、無限の可能性があるってことね…良いわね、真なる聖女様ってやつは。神にでも祝福されているのかしら?」

祝福されていたら、死んだりしないよ。叔母様は冗談が上手だね。


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