Dead End ユ キ・サクラ (87)
意識が浮上する?…目を開ける。
目の前にはスケスケのネグリジェから薄っすらと見えるショーツ…うーん、これはエロい…こんなエロい下着をお母さんは幼い頃の私に着させていたのか…
今にして思えばさ、お母さんって、結構その、うん…エロい下着が好きだよね?薄っすらと透けてたり、なんていうか、うん…表現しがたいモノが多かった。
この当時の?貴族の最先端の下着がこういった類のものなんだろうなぁ…そういう世界で生きてきたから、これが当たり前なんだろうなぁ…きわっどすぎない?
この姿を見て、ふと、思い出してしまう。
過去に、そういった会話をしたことがあったなー…
貴族の風習っていうか、側室としての風習?勤め?習わし?習慣?みたいな感じ?としてさ
愛する殿方に、いつでも求められても良いように殿方が好む下着を着るのが側室としての務めだって…言ってたような気がする。
つまり、お母さんは若い頃、恐らく私と同じような年齢10歳のころからこういう下着を身に着けていたってことだよね?
慣れた下着の方が過ごしやすいとはいえ…お母さん…相手いないのに、これを身に着けていたのかぁ…よく襲われなかったね?
夜にお母さんの部屋に誰か来た記憶がない。
もしかしたら、私と一緒の部屋だから、お母さんの事を陰ながら思っている人は夜這いにこれなかった、っとか?
当時のお母さんの周りにいる人達を思い出してみると…うん、幹部からは完全に未亡人扱いで、私のお母さんって扱いだった、女性って言うよりも誰かのためにある人って感じ?
確かに、そんな状況でどんなにアプローチしたところで振り向いてくれないか。
かといって、新人達には男女問わず、さらっと下ネタを言ってドン引きされてたりもするから…このころから、っていうか、昔から、残念美人扱いだった気がする。
っさ、思考もはっきりしてきたことだし、動かないとね。背中にまわされたお母さんの腕から抜け出す。
結構しっかり目に抱きしめられていたので抜け出すのにちょっと手間取ってしまう。
この時の私はいつも、お母さんに抱きしめられて寝ていたっけ?あー、そうそう、そうだった。
その影響で抱き枕が無いと熟睡できないんだよなぁ、お母さんに巻き付いて寝ていたから。
大人の私にどんな時も抱き枕はもっとけって忠告出してあげたいかも。
ふふっと心の中で笑ってしまう、なんて平和な忠告なのだろうかと
さてっと、意識も長い事…浮上することはできないだろうし、やることをちゃちゃっとやってしまおう。
暗い部屋に灯りを灯すわけにもいかないので、術式を使って暗視を発動する。
うん、この時代の私はお母さんが念入りに魔力を注いでくれているし、研究に魔力を消費し過ぎていないから余裕がある。
若い体っていいなぁっとこれだけで、感じてしまう。
ベッドから降りて、体を動かす
うん、封印術式が完成しつつあるって状況!いいじゃん。ちゃんとやってるやってる。
暗視のおかげで世界がモノクロに映って見えているので、何処に何があるのかわかる。
何かにぶつかることなく、机の方に向かう、つい、窓から映る空を眺めてしまう
新月の夜だ
まさか、新月の夜が私にとって特別な日になるなんて思ってもなかったなぁ…
窓から視線を下げ、机に向かおうとすると…体が膠着する…危険を察知して…
はは、確かに、これは怖い…
乾いた笑いが心の中で響き渡る
ベッドの方に視線を向けると、暗くてもわかってしまう程に、確実に此方を見つめている視線がある。暗闇なんて関係ないと言わんばかりに視線が刺さる。
この雰囲気は…叔母様だ…当時の叔母様は復讐する事だけしか、考えていないから…怖い。人を殺すことに躊躇いなんて無い。
気持ち良く寝ていたら、見知らぬ気配を感じて起きたのだろう…殺気を弛めることなく、此方に向けている。喉元がチリチリとする…やだなぁ…頸動脈に狙いをきっちりと…
警戒を解くためにも同族である証しを示す。
叔母様に向けて、私達が…聖女として伝えられている、始祖様から教えてもらった作法がある、それに倣い、お辞儀をする
気を付けの姿勢で、視線は上を向ける、そこから、腰から曲げるように軽く曲げて、ある一定の角度になったら頭を垂れるように下げる。
この作法は私達、聖女の一族しか知らないし、他でする事も無い。これで、叔母様も警戒を緩めてくれると助かる。
この一連の動きで突き刺さるような殺気が無くなる、どうやら、同族であると認めてくれた、かな?
「ふぅ…まったく、非常識ね、貴女には昼夜なぞ、関係ないと言いたいのね、こんな夜更けに。名前は、確か…さくら…だったかしら?私の知らない聖女の一族…合っていて?」
「はい、あっていますよ。叔母様、私は の娘、さくらです」
ぶっきらぼうな問いかけに冷静に当たり前のように自己紹介を澄ませるようにお母様の名前を出すと、軽いため息をつきながら、叔母様はゆっくりとベッドから起きてきて此方を見る、眺めるように…ううん、これは品定めをしている?違う、得体のしれない人物の情報を集めようとしているだけ。
その瞳からは殺気は無いけれど、警戒心は無くなってはいない。
「ベッドから出るの面倒だからここで良いわね?」
「はい」
不躾な雰囲気が何処となくお母さんとかぶってしまう。その影響もあってか、叔母様を怖いと思う感情を感じない。そりゃぁ、殺気を向けられたら怖いけど、殺気が無かったら別にって感じだよね。
雰囲気が似るのは、あれかな?未来のお母さんは無意識下で叔母様と混じっていったからっとか?
混じっていったから、雰囲気が似てると感じるのか、そもそも、元から似た二人だったのか、どっちだろうか?
まぁ、どっちでもいいかな、私にとっては、二人は家族だもん。
その部分がある限り、二人は二人だよね。些細な問題。
「こんな、夜更けに…まったくもって、何用かしら?下らない用事だったら許さないわよ?」
「今の研究がどの程度進んでいるのか、間違いがないのか、見落としが無いのか、チェックしようとしているだけですよ、叔母様」
私だって、どうして唐突に意識が浮上してきたのかわからないもん、取り合えず、意識が浮上したから、確認しようとした内容を伝えると
「そう、悪意じゃないのならいいわ、貴女、嘘は得意そうだけど、今の言葉に虚は見えなかったから良しとしましょう」
叔母様ってどんな人だったのか、知るすべが無かったけれども、お母様が遺した日誌に多少書かれていたから叔母様が歩んできた経歴は、ある程度は知っている。
だからこそだろう、叔母様は人を見る目がある、っというか、そういうのに敏感なのだと思う。
お母様を守るために、始祖様と言う絶対的な力を崇めようとする一派が増えていき、聖女と言うのが過去のものになろうとしていた。
その、聖女と言う立場を高めるために、その前例となるべく、教会という枠組みの中で成りあがっていこうと努力を積み重ねてきた人
家族の為に我が身を犠牲にしようという考えに至っているって時点で、この人は…善性なのだと思う、根っこの部分はね。
「叔母様、一つ宜しいでしょうか?」
「・・・・」
返事が返ってこない、叔母様としても迂闊に返事が出来ない事情はわかる、叔母様も私と同じで本来であれば…あるはずのない存在だから。
「私を…サクラを…姪を…可能な範囲で良いので…何かのきっかけで、相談とかに、乗ってあげてくださりませんか?」
「・・・・」
返事は返ってこない、でも、私の知る限りの記憶だと、叔母様から教えてもらったことは多い、それだけじゃない、色んな事を相談した記憶がある。
今は無理でも、叔母様の中で変化が起きたらきっと、応えてくれるだろう。
「ふん、そんなの、どうでもいいわ、私は寝るから、好きにしなさい」
毒気でも抜かれたのか、ベッドで横になり視線を此方から外す。
これ以上の対話は無理なのだろう、深入りすることも無い、未来を知りすぎている私が語ってはいけない。
机に散乱している資料を見て、現在の状況を確認把握し、必要なことがあれば追記していく…
ある程度、研究資料に目を通して、おかしな点や、こういったものはどうだろうかと、提案するように書き込む。
惜しむらくは、時間が無いってことかな?全部の書類を見れるほど、私の時間は残っていないみたい。
意識が今にも落ちそうになる感覚を感じて、ベッドに潜り込むと、体が無意識に動き、お母さんの胸の下に潜り込み、抱きつくように腕を回すと、お母さんも無意識に抱きしめなおしてくれる。
暖かい…なんて幸せな…安らかな世界なのだろうか…この時代の私が最も満たされているような気がする…
守らなきゃ…この温もりを…
意識が浮上するのを感じる…次は何処の時代だろうか?
ベッドから起きて、情報を求めるように部屋を見渡す…
これだけだと、何処のどの時代かわからない、殺風景すぎる!この時代には、欲しかったーこれらを買ってーっとか、そういうのがあれば目印になるんだけど…
お母さんってどうしてか、そういうのに興味を持ってくれないだよねぇ、調度品とか、工芸品とか、適当に見繕って部屋に置いて置けばよかったかも?
…いや、置いて置いたら勝手に、会議室のどっかに運んでそう。邪魔だし、私独りが見るよりも多くの人が見る方が有意義でしょ?って言いそう。
ふぅっと心の中で軽くため息をついから、何をすればいいのかわからないので、取り合えず、今の時代の私を装って、ソファーの椅子に座る
座って直ぐに気が付いた…目の前に居るのがお母さんではなく叔母様であると。
うわ、ミスったかも?何で、叔母様が普通に意識を表に出して行動しているの?
時計の針を見て納得してしまう。時刻が時刻だ、普段、特に何も無ければ私もお母さんも熟睡している時間だ
そもそも、そんな時間に起きてベッドから顔を出した時点でお母さんが声を掛けてこない方がおかしいって気が付くべきだったかも!?
…まぁいいか、向こうも気が付いているみたいだし。殺気も向けられていないし。




