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最前線  作者: TF
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Dead End ユ キ・サクラ (80)

敵に私達の位置はバレていない、見つかっていないっという安堵。


なのに、敵は突如、攻撃を開始した。


想定以上の時間をかけて魔力を込めた一撃は想定通りの破壊力だった。

凄まじい光と轟音によって木々や大地が吹き飛び周囲に衝撃と共に撒き散らせる。


疑問


どうして、無駄に攻撃したのか、どうして、時間をかけたのか。

無駄に攻撃したことに関してはあてずっぽうっという可能性もあるし、先に述べた可能性も否定できない。更地にするという極めて低い可能性。

時間をかけたのが、純粋にあれ以上、魔力を込めることが出来ない、つまり、臨界状態で維持することが出来ないタイプという可能性。

その、可能性があるのではないかと言う疑問を感じた瞬間、その二つが否定される事象を思い出す。


私達の癖、私達の習性を利用されてしまったのだと、気が付いてしまう。


私達は身に着けている防具を頼ってしまうという習性だ。

凄まじい爆発によって吹き飛んでくる破片、周囲の草木を考えれば、私達に直撃したとしても、頭を下げていれば頭蓋骨陥没などの致命傷を負うことは無い、だが、爆発物は放物線を描き上空からも落ちてくる。


その程度の落下物であれば多少の痛みに耐えるべきだった、咄嗟の判断として身に着けている盾を落下物に備えて構えてしまった。


盾に数多くの飛翔してきた落下物が当たる、それすなわち、自然界にない音を奏でてしまうという結果に繋がってしまった。

爆発時に飛んでくる飛翔物が鎧などにあたるのであれば、木々や岩に当たる音に紛れるし、轟音の中なので、敵に補足される可能性は低かった。


だが、上空に吹き飛んだ、木々の破片や小石は時間差で振り下ろされる様に落ちてくる、敵が攻撃した目的は此方を補足するという目的だと判断し、直ぐに全員で突撃する。

敵が放った一撃が渾身の一撃で在れば、最充填に幾ばくかの時間が必要だと、連発はできないという判断を元に攻撃を開始する。


速くても10秒、最充填に必要な時間を予測し飛び出した瞬間に、敵は私を真っすぐに見据えていた。

私を見据えるのは想定済み、声を出したのが私だからだ。散開した戦士に瞬時の合図を送るのは声を出す以外に方法が無かったから。


(本当の所は、焦りを感じて、考え無しに動いてしまったから、何だけどね…あのまま、何もしなかったら死ぬしか無かったっというのもあるけどね…離れた場所にいる人達と簡単に連絡が取れる手段が欲しい…光や音を使わず、そして、魔力もつかわない方法…ないだろうなぁ…)


ここで、選択肢を間違えたことに気が付く。敵が持つ杖に光の粒が見えた瞬間に…


杖の先端から光が解き放たれ、光の粒が此方に向かって飛んでくる。


事前打ち合わせで、光の粒が何かにあたればその場所で爆発するであろうという、推測されていた策によって、周囲に散開していた戦士がスリングショットで光の粒に投石する。

歴戦の戦士であれば、幾ら、光の粒が小さかろうが当ててくれると信じていた。


信じていた通り、光に石が当たったと、目視することが出来た、この時点で爆発に備えて次の攻撃に向けようとした。

だが、石にあたったにも関わらず、光が爆発することが無かった。


今だからこそ考えられるのが、衝撃を与えるべき箇所が見えている範囲よりも…予想よりも小さく、そこに被弾しなかったから、爆発しなかったのか。

それとも、光の粒が爆発するにはもっと強い衝撃が必要だったのか。


考えたくないのだが、爆発させる瞬間は魔道具を持っている術者が選択できる遠隔起動できるタイプだったのか…

今だからこそ、落ち着いて考察することが出来る。当時の一秒ですら惜しい状況では、ここまでの考察はできなかった。


光の弾の速度は非常に早く避けるという選択肢はできない。

私の眼前にまで届きそうになるのを、私を守護している戦士が事前に構えていた盾で衝撃を防ぐように動くのが見えた、と同時だった。

視界が真っ白に染まった瞬間に真っ暗に染まった。気がついたら爆発によって吹き飛ばされ、地面に叩きつけられ転がり続けた。


この間に、他の戦士達はどう動いていたのか私は知りえていない。

粉砕姫は、どう動いていたのか?


粉砕姫に報告してもらう。

戦士がスリングショットを放ったのを見た瞬間に、事前に打ち合わせしていた作戦通りに動きだした。

投石によって敵の攻撃が弾けるのだろうと、敵の眼前で光の粒が爆発するのだろうと予測する。

作戦通りに、爆発に備える様に先に見た爆発力から予測して、この程度、爆発地点から離れれば衝撃に耐えれるだろうと敵から少しだけ距離を取り爆発による視界不良や衝撃を防ぐために構えた斧によって視界を塞ぐ。


予定通り、近距離で爆発した衝撃が敵を襲い、仰け反ったり、動きが封じられた瞬間を狙う為に待機していた。


だが、予定通りに事は運ばなかった。

作戦通りに事が運ばず、飛んで行った光は敵の眼前で爆発することなく、真っすぐに飛び、司令官の前で爆発した。

これを目撃した、戦士が一堂に敵に波状攻撃をしかけるべきだった…だが、先ほどの司令官を襲った爆発によって他の戦士達も衝撃によって初動が遅れていた。

粉砕姫と、戦士部隊長が唯一動けることができ、敵の追撃を防ぐために急いで敵に近寄るが、距離を取っていたのが失敗だった。


更に、追い打ちをかけるような失態がある、それが、敵の魔道具が連発できるという点だった…


敵の魔道具を見ると、薄っすらと光輝いていたのが見えた瞬間に、魔道具を破壊することが最も最善手であると判断し、粉砕姫が得物によって魔道具破壊の為に左腕の膂力で得物を投げつけようかと降りかかろうとした、戦士部隊長も即座に敵から魔道具を奪う為に敵の手元へ目掛けて片手剣にて攻撃を加えようと駆け出している。


だが、敵の動きの方が速く、魔道具の先端から一粒の光が解き放たれた、敵が見据える方向、視線のその先。

敵は自身に多い掛かってくる二人の巨漢に対して一瞥すらなく攻撃を放った。ここにきて、我らが長年敵と闘ってきた、培ってきたノウハウ通りに敵が動く。


人型は、一番最初に見つけた獲物を…執拗に狙う、この場合だと司令官が執拗に狙われることになる。


魔道具から解き放たれた光の粒を防ぐ手段は斧では間に合わない。司令官に向かおうとしている光の弾、吹き飛ばされた司令官を守る盾は…機能して、いなかった…

これが司令官に飛んでいけば誰にも守られることなく吹き飛ぶ…司令官はどう足掻いても死ぬ。この状況下で司令官を失えば、私達の命もない、そう、あの街にいる全員の命が消える。あの街が滅びたら王都も滅びる。

無我夢中で、世界を守るために、咄嗟に右手を伸ばし光の粒を握り込んだ、実体のないモノだと、掴んだかどうかの感触が無く、本当に掴めたのかわからない、実感がわかない、本当に掴めているのか、先ほどみたいにすり抜けていないか不安を感じた刹那…


気が付けば、右腕が何処かに消えていた。


激しい光すら、激しい轟音すら握りつぶしたかのように、粉砕姫の右腕が皆の未来の代わりに消し飛んだ。

四方八方に右腕だったものが飛び散った、その隙間を縫うように一人の戦士が大弓を引き、渾身の一撃を放とうとしていたのが見え。

吹き飛んだ右腕の痛みをなんて気合で無視して、左腕にありったけの力を込めると、大弓から放たれた矢が敵の眼球にめり込む様に当たり、突然の痛みに敵が叫ぶ怯む。


全身の力を左腕に込め、戦士部隊長と共に杖の破壊を優先して連携を取る。

敵が痛みによって怯んだおかげもあってか抵抗なく、粉砕姫が槌を振り下ろし光が集まる杖の先端を砕くことに成功する。


だが、杖の先端を砕くと、爆発を産む光の粒が地面に向かって零れ落ちるのが見え、戦士部隊長が左手に持つ盾で光の粒を地面に叩きつける様にし、地面と盾によって蓋をし、衝撃を受け止める為に全身を盾に乗せる様に覆いかぶさった瞬間、激しい衝撃が戦士部隊長を撃ち抜き、その爆風は、戦士部隊長を軽々と上空へと吹き飛ばした。


余りにも激しい爆風によって粉砕姫が仰け反り、無防備な状態となり、ありとあらゆる急所を無残に晒してしまう。

その隙を逃すほど、敵は甘くなく、壊れた魔道具だろうと、人型が持つ膂力であれば…急所を突く様に叩きつけられたら粉砕姫であろうと死ぬ未来しか無い。

何故なら、王都にいる王族御用達の意匠が作った鎧であろうと、人型が持つ剛力と、魔道具の固さが合わされば…紙も同然だからだ…


その光景を見た司令官が粉砕姫を救う為に何をすればいいのか即座に判断し、敵の右目に矢が刺さっているのを見て術式を発動させる。

本来であれば、人型に向けて発動しても効果的ではない術式で、平常時の人型であれば、発動したとしても、避けられたり、弾かれたりと、有効打とならない術式であるが、この状況下であれば敵に有効となる。


なぜなら、敵の強固な皮膚を貫き、刺さっている矢があるからだ。


刺さった矢の矢羽根に座標を合わせ術式を打ち込み、矢羽根から鏃に向かって術式を伝番させ、鏃を起点にし超高温を産み出し敵の頭を熱で溶かす様に吹き飛ばすことに成功した。


間一髪のところで敵の動きが逸れ、振り上げられた先端が砕かれた杖の魔道具は粉砕姫から逸れ、地面に突き刺さった。

即座に、敵に止めを刺す為に、首を落とした。


闘いの音によって次の敵が集まる前に、全力で撤退すると司令官が判断したため、戦利品を回収せずに撤収した。


幸いにして、潜んでいた部隊には被害が無かった。

連絡を伝達してもらったり、何かあれば物資を運んでもらう為に、待機させておいた部隊が、敵が周囲に来ないのを確認したのち、戦利品を運べるだけ運んでもらった。

その際に、周囲に散らばっていた、戦士の遺体も運んでいただき、弔事が出来た。


負傷者及び、死者、被害などは別紙の報告書にて。




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