Dead End ユ キ・サクラ (75)
さて、戦士達が配置につき備えてくれることに関しては細かく指示を出す必要も無い、次の一手を考えよう。
敵の攻撃が途轍もなく威力が高いというのは先ほどの一撃で十二分に理解できたし、戦士達も肌で感じたはずだから無策で敵に姿をさらす様に飛び込むことは無いだろう。
散開してくれてよかった…あの威力の高さ…一か所に集まっていたら、一網打尽となるのはほぼ確実!全員負傷しかねない…
それを避ける為にも、敵が光を打ち出す予兆を見極めたいし、次弾を放つのに何秒必要なのか情報が欲しい。
その為にも、此方がギリギリ視認できる場所で観察がしたい!私が言うまでも無く戦士達も情報を集める為に息をひそめてくれてい
る!
後ろを振りかえると、マリンさんも少し離れた場所で息を潜めて呼吸を整えている。流石だね、息を殺し、風景に溶け込む能力が高い。
戦士達の位置と様子を把握できたので、視線を前にいる敵に向けつつ、脳内にいる私達に呼びかけ光が集まっていく時間を確認する。
今で凡そ10秒経過!…まだ発動しない辺り、一発一発の間隔は長い?なら、次の一撃を放った後は余裕をもって、近づく時間がある?
散開した戦士達に細かい指示を出したい…けれど、声を出すわけにもいかない。かといって、光などで、合図を出すわけにもいかない!此方の位置が明確にばれる!
散開した戦士達に、連絡を取る行動が取れない!
こういう時に、誰にも気づかれない様な通信手段が欲しい…いつか、通信魔道具を作らないといけないなぁ…
ソニック音波すら、今は使うのを躊躇ってしまう、魔力は、温存したい…それだけじゃないけどね。音に敏感な人型だったら、放ったソニック音波によって草木が不自然に揺れてしまったら、そちらを警戒する可能性もある。
迂闊な行動が全滅に繋がる緊張した状況!全員が息を潜め、敵の次の一手を警戒し続ける。
その間も、カウントを続けていく
15…まだ敵は動く様子が無い、光が一点に向かって集まるように動いている。
30…まだ動く様子が無い?30秒も?敵は身動きを取らないんだったら、此方からすると、次の一手をやり過ごしたら…やりたい放題だよ?
45…逆に不安になってくる、敵にこれ程までに時間を与えてしまってもいいのだろうか?選択肢を間違えてしまったのではないかと不安になり手汗が酷い。
60…一分は経過した!!光が一点に集まってるのが望遠鏡が無くても、分かる程に収束している…一点が強く輝いている!
これはいけない、選択肢を間違えてしまったかもしれない!!
75…光が強く輝いている!さっきの光がどの程度の大きさだったのか、見えなかったのが辛い!
今溜め込んでいるのが、どれ程までに強大なエネルギーを含んでいるのか比べる術がない!!
90…心臓がバクバクと強く唸っている!…痛い。だが、この状況で前に出たら的になる!あの凄まじい威力が直撃したら確実に死ぬ!!動けない!
100…この空気、皆は耐えれているのか?お願いだから、飛び出さないで!迂闊に…前に出たら救いようが無い!!…うごいた!?ひかりが
収束していく大きな光の粒がゆらめく様に動いた!?私が居る方向とは違う場所に向かって動いていく!?
何処かに向かって光が飛んだと、思った瞬間に物凄い光と音が衝撃波と共に襲い掛かる!?幸いにして敵が光を放った場所は私が見えている限り、戦士が居ない場所!
風か何かによって木々がゆらめいた場所を向かって放った、感じかな?
どうやら、敵は音を頼りにしている可能性がある!此方を目視して放ったのではない!適当に放ったみたい!!
…もしくは、敵が移動していることを想定して、恐らくこの辺りじゃないかっという、感などを頼りに、自分なりに予測しての行動かもしれない?
発生した事象を目の当たりにして、先ほどまで湧き上がっていた愚かな考えを否定する
いや、違う!これは!!
敵の動きが何の意図があるのか読めた時には遅かった…敵が放った爆発によって木々や大地が吹き飛ぶ、当然、私達の周囲に吹き飛んだきた木々の破片が地面に降り注ぐ。
私の反応が遅れてしまったために、私を守るという使命を背負っている戦士がどう動くのか…これが裏目に出る時がくるなんて考えた事も無かった…
吹き飛んでくる破片で怪我をしないように、本能的に、至極当然のように、戦士が盾を掲げる。
上空から降り注ぐ木々の破片や小石などで私が怪我をしないように防ぐために盾を掲げてくれる、本来であればその気遣い、思いやりに感謝しかない、だが…今回に限り、その思いやりが悪手へと転じてしまう!!
自然と出てしまった行動、一瞬でも反応が遅れたのが失態だった…
慌てて、盾を掲げるという行為、多少の飛来物くらい当たっても耐えるべきシーンだった…
止めさせようとしたが時すでに遅し!降り注いだ木々が戦士の盾に当たり、ゴンゴンっと、自然界には無い音を奏でる!!
自然にはない音!すなわち、敵にとってそこに何かが潜んでいると知らせる音だ!!私達の位置がバレてしまった!!!
直ぐにでも動かないと、好機を逃す!敵が一撃を放ったのであれば、直ぐに攻撃に転じれないはず!位置がバレてしまった以上!守りに徹したら死ぬ未来しか無い!!
「でるよ!!」
音声拡張術式で周囲にGOサインを出す!散開していた戦士達が立ち上がり駆け出す、各々、既に得物を抜いている時点でこれが好機だと感じていたのだろう!
この状況を瞬間に整理して、考え違いが起きていないか瞬間瞬時、ゼロコンマで危険が孕んでいないか見逃していないか思考を加速させる!
考えろ!どうして敵は攻撃を当てずっぽうに放った?私達、人類が周囲にいると判断したから?当てずっぽうでも溜めに溜めた必殺の一撃を撃てば、運が良ければ私達が慌てて巻き込まれないように逃げる、潜んでいた場所から顔を出すだろう。
狙いはそれだけじゃない!
ここで厄介だと感じたのが、知恵無き相手では考えられない行動、一度で二度の効果を狙った行動を取ったことだ!
敵は私達を殺すつもりで放った一撃によって木々を吹き飛ばし、周囲にソナーの役割として飛び散った破片が潜む者たちが絶対に身に着けている金属製の物質…鎧や盾にぶつかることで音が出る。敵に位置がバレてしまったら前に出るのが正解、のはず、何か、失念をしている気がする。
飛び出す瞬間、敵と目が合う…敵の視線は…こっちを見ていた!?しまった!?私が声を出すのが早すぎた!?焦ってしまった!?
人型は、固執する!獲物と判断した相手を執拗に狙い続ける習性があるのを失念していた!!
司令官が狙われるという良くない状況ではあるけれども!後の先を取り続けろ!敵にこれ以上自由にさせるな!情報は多少だけれど得た!
これ以上、敵に魔道具を使わせるわけにはいかない!溜める時間を与えるな!此方のターンだ!!波状攻撃を開始して、少しでもてき、の
誰が、敵の攻撃が、連発できないって決めた?
最悪の選択肢を、読みを、まちがえた
ひかりが とんで くる、、、!?
杖の先端に光が宿っているのが見え、ゆっくりと杖から離れようとする瞬間がスローモーションのように見える!?
先ほど、撃ったばかりだっていうのに!?最充填無しで!?どう、して!?なんで!?
疑問がわくが、直ぐに自分自身が愚かな私を注意してくる…固定概念に囚われるという研究者としてあるまじき考えを捨てろと、可能性を捨てるなっと…
…そうか、装填できるのは一発ってわけじゃないってことね!!あれだけの時間があれば複数ストックできたってわけね!!
連射即射出来るのなら、一撃の威力はそこまでじゃないって祈るしか…今は出来ない!!飛んでくる光をどの様に対処しようかと選択肢が迫られる!!
私を守る戦士が悩み判断が遅れている私の指示を待つ前に動き、敵からの強烈な攻撃を受け止める為の覚悟で盾を構えた瞬間に声が聞こえてきた。
「その速度なら!!」
投擲を担当している戦士が光の弾に向かってスリングショットで石を発射している!!
この状況を読んでいたのか、敵が光の弾を打ち出すのとほぼ同時に動いてくれている!これであれば!敵の攻撃はふせげ…
杖から 放たれた 光が 石を 光に当たったのに 爆発 しな い? すり抜けていく?
真っすぐ 速く はやく 光が こっち に すぐ ちかく
光の弾が 弾ける …
世界が真っ白に染まる …
「…ぅ、ぁ!?がっ!!」
世界が真っ白になり、一瞬にして視界が真っ黒に染まる、それと同時に体の至る所から痛覚が一斉にパニックを起こした人みたいに大きな悲鳴を上げる。
痛みを遮断させ、どうなったのか、衝撃や痛みからどういう状況に陥ったのか冷静に分析を開始する。
背中からの衝撃で肺の中身が全部溢れ出るような感覚!?これって、地面に叩きつけられる感覚だよね!?
小さな体が爆風によって吹き飛ばされ、湖に丸い石を投げて水面を撥ねるように大地を転がり続ける。
何処が空で何処が地面で、何処が…私を守る戦士の背中なのかわからない。
撥ねる衝撃から解放されたと、感じたら次に伝わってくる感触は鑢で、ううん、チーズをグレーターするかのように、地面を擦り続けるような音が耳元で鳴り響く…
げばっという普段では聞きなれない音が、自身の喉から聞こえてきたような気がした。
衝撃で動くことのできない体をもう一度、冷静に分析する。怪我の状況によって動いてはいけない方向に動くと痛みによって一瞬だけ動きが鈍くなる可能性があるから!!
地面に叩きつけられた影響で脳震盪を起こしているし、更には、肺の中身が全部抜け出てしまったからか、呼吸が上手くできない。
口の中が切れたのか、衝撃で内臓が裂けたのか、血の味がする。痛みを術式で一時的に感じにくくしたせいでわからないけれど、地面に叩きつけられた衝撃で肋骨と腕か、足の骨は折れていると想定!!
術式である程度、遮断させたとはいえ、耐え切れない痛みが出ていない、つまり、ショック死していない!なら、まだ、うごけ、うごける、はず!だめだ、さんそが・・・たりない・・・
脳に酸素が届かなくなった影響か、痛みによる意識のシャットダウンか、脳震盪による影響か、もしくはその全てが螺旋状に相互作用させる負のスパイラルによって視界が霞んでいる。必死に意識を飛ばさないように視界から得られる情報を取得しようと意識を集中させると
悟ってしまう、把握してしまう、理解してしまう…諦めてしまう。
霞む視界の先に薄っすらと光が見えた…
嗚呼…此度の旅路は何も得られず、何も残せず終わるのか…祈る時間は無さそうだ…
この状態で、どうやって、回避するのか…
目を閉じて死を受け入れる…
閉じた瞼を貫く様に…光が弾ける…




