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最前線  作者: TF
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Dead End ユ キ・サクラ (69)

何時まで続くのだろうかこの殺戮は…各持ち場の人が誘導してきた敵を殲滅し終わるころには、違う持ち場の人が誘導してやってくる…殲滅が終わる。敵がまた誘導してやってくる、この一連の流れを1ウェーブとすると、だいたい、2ウェーブごとに魔道具を操作する人が代わる様に指示を出す。

後退した後は、補給部隊がいる場所に移動してもらうと研究塔の人に話しかけられている。後日、上がってくる報告書が楽しみだよ。


6ウェーブが落ち着くころになると、偵察部隊から連絡が入る。

その情報を元に指示を出す、これ以上、私達が死の大地にいる必要がなくなった、各部隊が抱えている敵の多くを殲滅することが出来た。

撤退するっという指示を全体に出す。


殲滅した大量の敵を街に運ぶために、手が空いている騎士達に指示出して帰還する。この大量の獲物を転移陣がある場所に運ぶわけにはいかないので、歩いて帰る。

使用した魔道具や、補給部隊+研究員を守るような形で街へ大量の手土産と共に帰還する。


長い時間歩いて、街に帰還してから、広場にある時計を見て時刻を確認すると、半日以上、死の大地に居たことになる。

半日あったら、研究は何処まで進めれたのだろうか?っという考えが一瞬過ってしまう、自己都合過ぎるのでそれ以上先の事を考えるのを止める。


頭を振って、意識を切り替え、周囲を見渡す…そうだよね。死の大地に慣れていない人からすれば、あんなにも長い時間、死の大地にいたのだから、よく耐えたと思うよ。

私は、幾度となく、数えきれないほどに死の大地に出撃しているし、椅子に座って指示を出していたから、そこまで疲れてはいない。

でもね、死の大地に慣れていない研究塔の人は青ざめた表情でヘタレ混む様に地面に突っ伏している。今にも胃の中身を全て吐き出してしまいそうな程…


それを見かねた戦士が鎧を脱いで、研究員を起こし、肩を貸して病棟とへと向かって歩いて行く姿を、何処か遠い世界のようにぼんやりと眺めてしまう。私も少なからず疲れているのだろう。

ぼんやりとしている視界に、補給部隊が使用していた魔道具を研究塔へと運んでいる姿が見えたので、確認したいことがあるので呼び止める。

研究員が戦士達から調書を取っていたので、その書類を持っていないか声を掛けると渡してくれる。さて、使用した人達だからこそわかる問題点が何かあるのか確認する。


殴り書きで読みにくいけれども、報告書として完成されている…あんな状況だっていうのに、彼の熱意には見張るものがある。

魔道具から打ち出す弾の残量を逐一チェックしていて、具体的にどれくらい消費しているのか1ウェーブごとに記録してくれている。

1ウェーブによって箱の中からどれ程、消費するのか、目分量ではあるが、書かれている…この通りだったら消費材料が想定より多く消費している。

撤退するまでに消費した量が、何年も溜め込んだ鉄屑や、乾いた砂が残り残量僅かになる、かなりの量が消費されていた。


打ち出す弾数は、まだまだ余裕があるだろうと考えていた。

正直、後、2ウェーブも続くと打ち出す素材が無くなると思われるくらいに消費していた。危なかった…

計算していた以上に継続した戦闘能力が低いってことになる…このデータを取れただけでもすべて良しと思えてしまうくらいに重要な内容。

打ち出す材料は即席で用意できるものじゃない。大量の材料も持ち歩かないといけないって考えると、やっぱり、砂を使うのは防衛戦のみにした方が…

敵地の奥に迄持って行けない、っか…残念だけど、これを発展改良はしない方針で固めよう。劣化した魔道具でこれに近い性質を持った防衛目的とした魔道具として、今後は開発する方針で行くべきかな。


他にも戦士から使用感や問題点などが書かれているのだが、これといって役に立ちそうな情報は無かった。

書類を一読した後、ついでに、魔道具一式を見せてもらう。あの連続稼働でどの程度、損傷があるのか確認すると…

目を瞑り、自分の頬を叩きたくなってしまった…


これは良くない、失敗したのだとすぐにわかる。

やらかしたと反省しないといけない程に盛大なミスをしてしまった…


大元の、敵から奪った空気を圧縮して打ち出す魔道具…あの決死の行軍…命がけの戦いで手に入れた魔道具…

人型が保有し、数多くの人達がこの魔道具によって死んでしまった魔道具…一部の人がこれを見ると嫌悪感を示すほどに辛い思い出を背負った魔道具…


その大元の魔道具が連続使用に耐えきれなかったのか、本体にもダメージが残ってしまっている…これ程までに損耗が激しいっていうのは想定外すぎる。


完全に壊れていないか、試しに、起動するのか…チェックをする。

結果としては、起動はした、だけど…魔力の流れが悪くなっていて、起動に時間を有しているし、空気を圧縮するのも…

手に取った魔道具をそっと、補給部隊に渡すと、補給部隊も私の表情を見て困惑している。


この魔道具に負荷がかからない様に設計をしていたけれど、何かしらの問題があって損傷している。私のミスだ…


擦れる声で、補給部隊にお願いするような悲惨な声で指示を出してしまった。

この魔道具を解析して、詳しい解析情報を出す様に研究塔の長に伝言をお願いした。

私が滅多に見せない落胆した表情に、声の様子からあの魔道具がもう使えないのだと伝わってしまったことに関しては反省しないといけない。


私に釣られて悲しそうな表情をした補給部隊を見送ると、あの魔道具を使用した戦士が興奮気味に声を掛けてくる。

「あの魔道具は素晴らしい!」っと、鼻息を荒げて語ってくる…私は…この輝く瞳を曇らせないといけないという事実を知ってしまっている。

自分の失態であるその事実を…その先の言葉を飲み込まず、ありのままを伝える。


戦士は一瞬だけ落胆したように表情を曇らせるが直ぐに笑顔になり、「姫様ならこれ以上を期待してもよろしいですよね?」っと、さらっとプレッシャーをかけて去って行った…

彼らからしたら、至極当然、当たり前、俺らが尊敬する開発の姫は何時だって自分たちの想像を超えてくるって…当たり前に思っている。


期待に応えないといけない立場の、私からしたら相当なプレッシャーを感じる時もあるんだけどなぁ…

特に、敵を楽々と易々と葬り去る程の殲滅兵器開発なんてね…前提条件が厳しすぎて難しいっての…


笑顔で立ち去って行った戦士の後姿を溜息を殺しながら見送る…


その背中に向かって大丈夫!任せて!って叫びたくなるが、叫ぶわけにもいかない。

だって、他にも開発している計画段階での、決戦兵器は数多くあるけれどさ、今回みたいに未来への影響が少ない兵器は…無いんだよね。

壊れてしまった魔道具だって、完全に環境を汚染しないのかって言うと打ち出している素材が環境を汚染しないのかって言われると…軽度の影響はある。


それにね、私が持ちえる最大級の火力である、ほーりーばーすとだって打ち方を誤れば地表を焼き尽くすことだってある。

ほーりーばーすと研究していた時に、試しとして地面を一点だけ焼いたことがある。

結果だけ見ると、この術式が危険なものだと背筋を凍らせる程の結果だった。


恐ろしいことに、焼いた地表…2年も経過しているけれど、未だにその1点だけ、草が生えてこなかった。

付与した質量が何なのか、付与した熱量は何なのか…考えてはいけない、それに近しい性質を地球の技術で私は知ってしまっている。


明日を…未来を考えれば土壌を汚染するような、土壌を壊してしまうような戦いはなるべく避けるべきだ。

未来への環境を考えずに大暴れしてしまった死の50年、それのせいで、この大陸はどれ程までに飢餓に襲われたか…

数多くの小さな村が滅んだのは主にそう言った理由だと教えてもらったことがある。


研究塔の理念としても、未来を奪わないっていうのが私が来る前から伝えられている、私もその考えには大きく賛同しているし、今の職員たちもその理念を胸に刻んで励んでもらっている、だからこそ、危険な魔道具を開発したとしても封印指定することが出来る。危険な力に溺れてしまった人が居たら、とっくに…外部に漏れ出ているからね。


あのお母さんですら使用を躊躇う毒系統の魔道具…

よく未だに封印できてるよねって驚くよ、研究塔に所属する職員全てが聖職者なのかな?って思うくらいに、人に対して絶対に使用してはいけないって考えを根強く持っていて、受け継がれている。


…でも、私としては…その理念を無視しないといけないって、覚悟は決めている。

どうしようもない時は、使わないといけないのだろう。


その業は私が背負う…

未来に世界を救った人物として名前を残し、その更に、未来では人類の明日を奪った魔女として名を遺す覚悟はとっくの昔に…腹は括ってるよ。


ふぅっと、悲しいため息を、少しひんやりとしてきた風の中に混ぜ込む…

覚悟の話は置いといて、今は違う事を考えよう。

反省すべき点として、私の設計ミスによって、決戦兵器…一つの開発プラン、未来を閉ざしてしまった。


恐らく、ううん、ほぼ確実にあの魔道具は100%の出力はできない。


今後に備えて新しい魔道具を作る方針に切り替えていくべき、かな。非情に便利で使い道が山ほどあった魔道具なだけに惜しい事をした。

惜しむらくは、敵から奪った魔道具の材質って私達が把握している材質では無い物が殆どだから、完全に同じものは生み出せない、劣化したものしか、私達が持つ技術では作れない。


心の中で盛大な溜息をついて、何処をどう間違えたのか設計段階から思い返し過去の自分に託すとすれば、どの様に改良すればよいのか考えをまとめ終わり、ふと、いつの間にか…

気が付くと、地下の研究室に辿り着いていたので、どうせなら、あの大地特有の嫌な臭いを消す為に、備え付けてあるシャワーで体を綺麗にしよう。

でも、その前に、食堂のおばちゃんに何か軽食をお願いしますの紙を添えてエレベーターを動かす。

それから、服を脱いでシャワーを浴びに行く。


シャワーから出てくると、嫌な臭いよりも、体が求める匂いが研究室に広がっている。パンにベーコンとか、焼いた卵が挟まっている軽食がエレベーターの中に用意されている、嬉しいことに、私が外に出ているのを知っているのか、果実のジュースが入った瓶も一緒に入れられている。

キンキンに冷えた瓶を一口飲むと、火照った体には心地よかった。


ルッタイさんとも、長い付き合い、だからこそ、私の好みを把握してくれている。

食に関しては、ルッタイさんがお母さんって感じだよね…


用意された軽食を口の中に放り込む…困ったことに最近、味を感じにくくなっている。

料理に使われている素材を見て、過去に食べたことのあるモノだったら、こんな感じのものだよねっていう認識で脳内で味を思い出しながら食べることが出来る。

…完全に味覚を感じないわけじゃないから、まだいいけれどさ、いつか…味がわからなくなってきたら嫌だなぁ…


はぁっと、盛大な溜息をついてから、ソファーの上で背筋を伸ばす様に横になってから、丸くなると、肉体も脳も…精神も疲労しているみたいで、一瞬で夢の中に落ちて行った。




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