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最前線  作者: TF
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Dead End ユ キ・サクラ (65)

程よく心の隙間全てが緊張によって埋まっていく。

戦場に出るのだから、神経を研ぎ澄まさないと…甘き死は何時だって傍に居て、何時だって肩を叩いている、少しでも視線を落とせば不気味な笑顔が見える、振り返れば心臓を掴まれる、膝を付け頭を垂れると優しく頭を撫でられ絶望の渦へと吸い込まれ、何も考えなくても良いという甘いあまい…甘言によって魂を溶かされてしまう。


何度も死の大地に踏み入り生還してきているからと言って、驕らない。少しの油断、隙によって、誰であろうと命を落とす。

共に出撃する戦士達は、それを重々理解している経験豊富、此方からそういった事を注意する事すら誰に物を言っているんだって感じになる程に、彼らは頼もしい


戦士二人に視線を向けると、鎧の隙間から見える筋肉が怒張するかのように隆起している、どんな状況でも動けるように適度に緊張が残り、尚且つ、瞬発力を瞬時に発揮できるようにリラックスもしている、ベストコンディションと呼んでも差しさわりのないだろう。

瞬時に自身の状態を切り替えることが出来るくらい経験豊富で、こんなにも、頼もしく感じる戦士達でも、魔道具持ちの人型とは一対一で戦うと確実に負けるっという、考えたくない現実。


はっきりいって、此方の駒と敵の駒…個に対しての戦力差がありすぎるし、敵はまだまだ切り札を隠している。

これが何かの戦局ゲームだとすれば、理不尽過ぎるだろって愚痴をこぼしたくなるよね…


こんな糞みたいなゲームバランスを考案したやつを殴りたくなる、のだが、敵との闘いは今に始まったわけじゃない。

長い歴史を振り返るとさ…この理不尽を敵も味わってるわけなんだよね、それも初手にさ…


当時の敵達は、縦横無尽に人を吹き飛ばし、街を壊し、命を蹂躙して、大地を我が物顔で駆け抜けていき、人々が集まっている王都、人々をまとめている王族が目の前にいる。

ほんの少し、あと、ほんの少しでこの大陸の覇者になれる!笑みが零れるような状況、勝利目前まで攻めてこれたのに、突如、何処からともなく現れた理不尽過ぎる力の暴力、力の化身によって、打ち滅ぼされ、逃げるのが遅かったら全滅していた。


そんな内容のゲームなんて、理不尽過ぎて、私だったら机をひっくり返してるよ。

っていうのを、敵側も味わっているって部分を考えると、今は、向こうのターンなのかもね~…理不尽には理不尽をってか?

それなら、私だって!理不尽な駒をもう一度使いたいよね!始祖様っていう最強の駒が欲しいなぁ~って常日頃、思っちゃうわけ!


…それが叶わいのはわかっているからさ、代わりと言っては何ですが、地球の化学力が欲しいなぁ…魔力が貧相な私達でも、ううん、魔力を持っていない人でも気軽に扱えれる殺傷能力の高い近代兵器ってやつ?核とか…欲しいなぁ…このゲームを作ったのが神様だっていうのなら、バランスをとるために授けてくれないかな?地球の技術者一式をさ…


っは、馬鹿なことを考えてる。なぁ~んってねってね…無い物ねだりってやつだよね。

これでもさ、頑張って地球の科学を参考にして色々と頑張ってきたけれどさ、前提が違い過ぎて科学を再現するのが難しすぎる。


特に兵器関連は、ね…人に通用する程度の物であれば簡単なんだけどね!


「姫様、転移陣起動完了!テストも問題ありません!いざ!参りましょう!」

声を掛けられる、転移陣などの準備が完全に終わったって感じだね。

加速する様に廻る思考が逸れ始めたので、思考を戻す為に、すぅふぅっと幾度かの深呼吸を繰り返しす。転移陣の中に親衛隊と共に入っていく。


転移陣を抜けると、移動型前線基地として機能してもらうために隠蔽部隊と医療班が駆け回っている。

主に、補給部隊が運んだ物資を保管したり、戦士達が束の間の休息、怪我の治療などを行う為に、安全地帯を設置&管理するのが、彼らの仕事。


人型が出てきたため移動を余儀なくされたっと、話を聞いていた通り。

普段使用しているセーフティーエリアとは場所が違う、普段使用しているセーフティーエリアを破棄し、何時でも敵が攻めてきたら移動できるようにしている。

移動しながらの休憩基地って感じ…こういう状況になっているってことは、思っていた以上に攻め込まれているってことだよね。地下に籠っていることが多いから常に戦況を見定めているわけではない。人型以外にもこういった状況は逐一報告を受けた方がいいのかもしれないけれど、そうなると…研究どころじゃなくなる。


周囲にいる人達の様子を伺う、前線基地を維持している人達の様子を見ることで、全部隊の心にゆとりがあるのか把握することが出来る。

周囲の音に対して耳を澄ます、大きな声を出せないけど、色んなところから聞こえてくる言葉からは、激情が伝わってくる。

すんっと匂いを嗅ぐ…周囲の匂い、薬の匂いや、消毒液の匂いが薄っすらと漂ってくる。その先に視線を向ける勇気が今はない…その先にお母さんがいるから


すぅはぁっと、鼻から空気を入れ、口から空気を吐き出す…目が覚めるような空間…


…戦場の空気、ぴりつくね…


現場に漂っていて課せられた使命を果たす為に自分以外に興味が無く四方に散らばっていた緊張の糸が、瞬時に一点を集中する様に一瞬だけ交差する。

その数の多さ、何処を見返しても目が合いそうな程に、複雑に絡まっているように見えて辿り着くゴールは一つだけ。全ての期待を背負うっていうのはこういうこと、一部隊を背負っただけでプレッシャーに潰れそうってのは、弱いって一笑したくなっちゃうよね…こういうのは向き不向きがあるものだと知っているから強くいえないけどね。

期待を込められた熱い視線が何を求めているのか、私は知っている、胸を張り大きく目を開き、前を見る。


まかせて!私が何とかするから!っと言わんばかりに、集まった視線達に目くばせをすると全員が静かに頷いてくれる。

その頷きから伝わってくる想い、”姫様なら何とかしてくれる”この熱い想いに幾度となく応えてきた、今回も応えてみせるよ。


時間に余裕があれば、現場にいる人達に頑張ったねっと、檄を飛ばし励ましてあげたいけれど、時間的余裕はありそうでない。

なので、先ほどの目くばせを檄を飛ばす形としては…十分じゃないけれど、十分でしょ!皆の心は一つとなっていると信じている。


二人の戦士に目くばせをした後、敵から発見されにくくするための認識阻害の術式を展開している範囲から出る。


さぁ、前線基地の状況を見て、まだまだ余裕がありそうだというのも確認できたし!敵が待っている現場に到着するためにも、手早く動かないとね!!

敵の位置は既に把握済みとはいえ、死の大地、各持ち場で戦士や騎士達が陣取り相手取っているとはいえ、漏れ出てくる敵がいないってことはない。

十二分に気配を探りながら不意打ちをくらわない様に慎重に、されど、急ぎ足で向かう!


行軍といっても、私含め三人だから、今更、作戦概要の確認、なんて要らないかな?まぁ念のために移動しながら戦士達に伝えていく。

転移陣を使って私達が先に現場に到着して、現地で人型と交戦しているであろう騎士部隊と合流して、用意した魔道具が現場に到着するまで、人型を食い止めないといけない。

どうして用意した魔道具を転移陣で共に運ばなかったのかって?…今回使用する決戦用魔道具ってやつを稼働させるための仕様がね、転移陣を通るってのは無理なんだよねぇ~…


敵が、かなり此方側に接近しているからこそ出来る起死回生の一手なんだよな~。


理由を説明すると納得してくれたみたいで、周囲を警戒しながら走り続ける事、30分…

体力が無さ過ぎる私が途中でへばっちゃったので、戦士におぶさりながら運んでもらいましたけれど何か?

ちゃんと、おんぶ紐?らしきものを事前に用意していると声を掛けられ、誘導されるままに、それに乗っかると、戦士が私を背負って軽快に走りだす。

勢いよく走る戦士から滑り落ちることもないっていうか、これって紐じゃないんだよなぁ…なんて表現したらいいのかな?おぶさってるわけでもないんだよなぁ…

イメージ的に、戦士に足場しかない籠を背負ってもらって、私はその足場しかない籠に乗って、私は鎧の襟元?を握って落ちないようにするって感じ!

私が外で戦う為に親衛隊達が考案してくれた私を運ぶための道具だけど、思った以上に乗り心地は悪くなかったよ!…ごめんね、体力無くて…


戦士達からすると私みたいな軽い存在、背負ったところで重みを感じないので何時でもお申し付けくださいって感じみたい。

もう一人の戦士がちらちらと私達を見てくるけれど、ちゃんと周囲を警戒しなよっての…帰りは、此方を羨ましそうに見ている彼に頼んだ方がいいかもね。


周囲を警戒しながら走り続けて、現場に到着したんだけど!…ん?思っていた現場と違うなぁ、最悪の状況では無さそう。

これは、想定以上に、運が良かったってやつかな?


到着した現場を瞬時に観察する。

人型の周囲だけじゃなく、周辺も水浸しだけど、人型の近くが一番かな?地面が泥だらけ。

人型に視線を向けると、敵も水浸しなのか、毛がしめっているっていうか、水を纏ってるっていうのが表現として正解かな?

後は、顔から上が濡れていなくて首から下が水の膜に覆われて…うん、よ~~っく見ると覆われてるって感じ?雰囲気的にコップに水を限界一杯迄入れた表面張力が全身に作用しているって感じ?

猿の種類は良く見るタイプ…かな?腕とか足も細くて、鼻が長いタイプの猿

過去のデータによると魔力量もそこまで持っていないタイプの可能性が高いかな。擬態してなければね…


観察も終わったので、現場で、必死に戦いを続けている騎士の人が此方に近づいて来てくれたので、今まで、敵に対して何を試したのか確認する。


弓矢はダメ、水に阻まれて致命傷を与えれない。顔を狙っても当たらない。

槍もダメ、毛が濡れているが、水の膜を纏っている様な感じで衝撃が肉体に届かない。顔を狙おうとすると直ぐに見破られて下手に色気を出すと逆手に取られてしまいそうで、できない。

槌も同様にダメ、衝撃が吸収される。顔を狙う事は出来ない。

剣もダメ、幾ら切っても水が弾け飛ぶだけで、敵を切れている手ごたえが無い。槍と同様、顔を狙うのは得策じゃない。自分たちの技量では不可能。

術譜で敵が纏っている水を凍らせれないか試してみたが、手持ちの術譜全てを同時に消費しても全身を凍らせることはできなかった、っというか、表面が凍っては地面に氷が落ちて流されてしまう。


ふむ、ってことは、常に毛の内側から水が溢れてきて、流れを生み出しているって、感じかな?

ってことは、毛の奥に魔道具がセットされているって考えるのが無難で、そうなってくると、ネックレスタイプかな?指輪タイプで全身を水で覆うのは難しいだろう

女将みたいに人外の力を持っているわけでもない、まだまだ未熟な騎士達ではネックレスタイプを壊すのは至難の業だから、壊すという考えを現場の騎士達が抱かなくて良かった。身の程を弁えている。欲を出して蛮勇なことをやらかしてたら確実に命を落としていただろうね。


冷静に報告した内容をベースに、再度、敵の周りを観察する。今は、到着した私と共に駆けつけた戦士二人が相手取って敵に攻撃を加えている。

今まで対峙していた騎士が少し下がり、呼吸を整えながら、次の一手を伺っている。

良い連携、普段からしっかりと訓練に励んでいるからこそできる、阿吽の呼吸ってやつだね、素晴らしい。


現時点で観察して得られる情報はっと…

恐らくだけれど、騎士達が、ひたすら敵に向かって攻撃を繰り返した影響によって周囲が水浸し。

どうして、攻撃した影響って思うのかって?現時点での敵の動きを見ていると、こいつの行動原理が読めてくる。

こいつは、自ら動いて戦士や騎士に対して攻撃を繰り出さない。今も戦士二人の攻撃を受け止めることに集中している。

つまり、人型は自らの肉体による攻撃よりも、魔道具頼りの戦法を選択しているとみていいんじゃないかな?


だとすれば、前情報通り、魔道具が自身のタイプに適してないな、これ。

偶にいるんだよね、魔道具の力に溺れているのか、過信しているのか…はたまた、そういう事しか命令されていないのか…

動きに制限があるタイプの人型だ、それなのに、魔力が乏しいタイプ、どうして、魔力を大量に含んだタイプを投入してこないのか?敵の意図が読めない。効率を重視していない?コストパフォーマンス度外視?なら、情報収集が目的?テストタイプとか?


…っち、考えても考えても埒が明かないやつだこれ、こうなると、純粋に思考を邪魔させたいっていう悪戯心?悪だくみ?っとしか考えれなくなる。一旦、敵の意図は忘れよう。考えてもイライラするだけだ。


冷静に現場の状況から判断して適切な指示を出そう。

予測通りだったら、やることは一つ。


魔力を枯渇させよう

魔力を枯渇させる頃には決戦兵器も届く…でしょう!


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