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最前線  作者: TF
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Dead End ユ キ・サクラ (44)

新兵達が丸くて黒い丸薬を齧る様に食事をしながら、先ほどの一連の流れを先輩達に質問している。


先ほどの流れで弓に興味を持ってくれる新兵が居るみたいで嬉しいね!

新兵の中には弓に対して適性がある人物が居てくれると嬉しいかな~、弓ってさー本当に!ほんとのほんと!本気で人を選ぶ!


いくら練習してもある一定の所で成長が止まる人が多い。


卓越した超人的な域に到達できる人って本当に数少ないから、新兵の中にそういった才能を持った人が居ることを祈るばかり!

誰が、どの才能を秘めているかなんてわからない、だから、こういった弓兵のかっこよい憧れるような卓越した技術を目の当たりにして自分も身に着けたいって興味を持ってくれるといいんだけどなぁ~。


ベテランさんってさ、基本的に全ての武具を扱えれる、当然、弓も扱えれるけど、卓越した神業っていう力量迄、弓に精通しているわけじゃない、神域には、到達していないんだよね。

だから、弓をメインで戦うことが殆ど無いから、ベテランを見て育った人は弓に興味を持つことが少ないんじゃないかな~って思っちゃうんだよな~。

南の大地、女将が住んでいる村付近であれば、弓矢で猟をする人もいるから、弓に精通する人が居たりするんだけど、そういうのって稀だからなー…

王都騎士団も弓が一番の得物だと声を高らかに宣言する人は少ない、皆、始祖様に憧れて槍を持つことが多いんだよな~、でも、基本的に槍じゃなくて剣を支給させている辺り王族の闇だよね、神聖なる槍を振るっていいのは始祖様だけだって言いたいんだろうね。


和気藹々としている一団を遠目で眺めていると親衛隊がすっと椅子を持ってきてくれる、折り畳みが出来るタイプの椅子でセーフティーエリアで部隊長とかが偉そうに踏ん反り返りたくて用意している椅子、どっから持って来たんだって野暮なことは聞かず、椅子に座る


親衛隊に、昨日の夜で個人的に気になって報告する迄も無い事があれば何でもいいから話してよと声を掛けると、うーんと腕を組んで考え込む

この様子だと昨日は本当に何も特別なことは無かったってことになる。


なら、どうしてこんなにも獣共が防衛ライン付近をうろついてんだ?それも雑魚ばっかり?攻める為に偵察してるとか?

答えの出ない問題が実はずっと気になっている、答えを導き出す為に、私が気が付かないことに誰かが気が付いていないかっていう、確認は随時している。


長きに渡りこの大地で活躍している戦士が気が付かないのであれば、まぁいいやっと切り捨ててもいいのだろう。

此方としても、今回みたいな雑魚たちが向こう見ずに攻めてくれるのは嬉しい、探す手間が省けるからだ。死の大地で採取できる貴重な物資は何時だって欲しいからね。


死の大地の獣共は貴重な素材だもの。


食べることはできないけれど、骨も、肉も、角も、牙も、皮も…使い道は山ほどある。

そもそも、構造は普通の赤い血液が流れている獣と同じような構造をしているけれど、構成している材質が違い過ぎる。


地球の知識で例えるなら、骨はカルシウムなどで構成されているけれど、死の大地の獣だとカルシムだけじゃない、骨の中に、鉄のような鉱石が混じってたりするって感じ。

鉄かどうかわかんないけどね…鉄の様な頑丈な物質って感じで、錬鉄することもできるから、その特性を利用して建築の材料にしたり、武具の材料にしたりすることができる。


獣達の事を何年も何年も研究し続けて、手に入れた素材、それの新しい使い道が無いか常に研究しているのも、研究塔のお仕事の一つ!

敵の動きやパターンなどが報告で上がればちゃんと保存して、手に入れた獣をばらす過程で、どういった構造をしているのか調べて、どうしてその行動を選択したのかっていう推測とか、分析したりするのもお仕事の一環!…他にも私から仕事を山ほど渡してたりするから、研究塔は常に大忙し。


幸いに、次代の長は獣共のことを知り尽くしたいみたいで研究熱心!流石は、医療の父、研究塔の長、二人の優秀な血を引く人物ってことだね。

一つ気になるのが、何でか知らないけれどさー、私の事を嫌っているのか距離を感じるんだよなー、っていう話をお母さんに言うと、あの子は基本的に色んな人と適度に距離を離しているって教えてくれたから、純粋に人付き合いが苦手な人なのかもなー。


そんなことをぼんやりと考えているとユキさんが声を掛けてくる、巡回任務は怖いイメージがあって不安だったし、師匠であるカジカさんがあっさり怪我をして退場したから、恐怖心が凄かったけれど、姫様のおかげで、不安が消えましたって言われると悪い気はしない。

そのまま、こっちに来て困った事とか悩んだことがあったら気軽に言うんだよ?っと世間話をしていると

ユキさんと私が接しやすいような雰囲気で会話しているのを見て、新兵達が集まってきて色んな質問が飛んでくる


この街は、王都で暮らしていたころよりも暮らしやすくてびっくりしたとか、大浴場が凄くて想像していた過酷な環境とは真逆で驚いたとか、いろんな感想をくれる。

貴族出身の子達も自分の屋敷よりも設備が整っていて感無量と褒めてくれる。


他愛のない話をしていたら、純粋な質問も飛んでくる。

猪の倒し方で他にも一例があれば教えて欲しいっか…


何を話そうかと思っていたら隣で控えるように立っていた近衛騎士がこほんっと咳払いをして、注目を集めさせる

「では、私めが、伝説に聞き及んだ粉砕姫先輩の例をお話ししましょう」

その一言で伝説の一団を知る貴族出身の子は歓喜を上げ、平民出身で伝説を知らない人は誰の事だろうと首を傾げていた。


近衛騎士が語る内容は絶対に参考にできない内容だと分かっていても、こういうのは語り草、伝説として色褪せない様に語り継がれていくんだろうな、尾ひれがついて。


粉砕姫と言う方は、伝説と謳われる人物で、大の大人でも持ち上げるだけで腰が折れてしまいそうな槌と斧が一体となった斧を片手で振り回し、熊だろうが虎だろうがその剛腕で粉砕していった、という伝説を称え、その渾名を与えられたと言われている


昨日、我々が倒した鹿に至っては素手で倒すことが多かったですよ

突進してきた鹿の角を手で掴み腕力で角を圧し折り、片手で鹿の顔面を掴み天空へと放り投げ、脳天から地面に叩きつけ絶命させたり

突進してきた鹿の角を掴むことなく、拳一つで脳天を砕いたり

突進してきた鹿の鼻っ頭を掴んで、そのまま握力のみで持ち上げ、突進してきた鹿の後方にいた鹿目掛けてぶん投げて鹿の群れを吹き飛ばしたり

飛び掛かってきた鹿の足を掴んで地面に叩きつけたり、そのまま振り回して周囲にいる獣共を掴んだ鹿で薙ぎ払ったりとされていました


淡々と語る内容は、誰もが真似できるわけがない豪胆すぎる内容…参考にできないよね。


この話を聞いて、思い当たる人物がいたのか、ああ、あの人かな?っと呟いているユキさんがいる、うん、思い浮かんだ人だよ、今は、ノンビリと子育てして、旦那の仕事を手伝って、夜はお酒を出してくれていて、何時、寝ているのか疑問を覚えてしまう程に働きもので、皆から愛されている気さくな女将だよ。


その後も猪はこうやって倒していたっと言う武勇伝を語りだす。

突進してきた猪の首根っこをアームロックで捕まえ自身の体重と上腕二頭筋の力を重ねるように地面に叩きつけて首の骨をゴキリっと圧し折ったり

猪だろうが片手で持ち上げて地面に叩きつけたり、背中を片手で掴んで持ち上げて周囲にいる敵や岩に投げつけたり、頭を掴んでその場で横回転するように飛んだと思ったら猪の首の骨を捻り折ったりなどなど…力だけではなく俊敏性も兼ね揃えた人物で、私達では絶対に真似できない素手で獣共を粉砕するその姿勢は、憧れがとまることはなかった。


その会話を聞いて、どんな風に誇張されるのかと期待していたんだけどさ…

うん!尾ひれなんて一つもついてない!まごう事なき事実ばっかりだった!おんなじ話を冗談っぽく女将もしていたし!お母さんもその話って、いうか、その光景を見たことがあるって言ってたからまごう事なき事実!他にもそれを目撃してる人は山ほどいるんだよなぁ…その肉体をどうして娘さん達は受け継がなかったのかなーもったいないよねー…


鉄板ですらあっさりとひん曲げてしまう馬鹿力だもんなぁ…戦士として憧れるよね、異次元のパワーだもん。

この話を聞いた男の子たちは目をキラキラ輝かせているよ。ステゴロってやつは、地上最強ってやつは、男の子の憧れってね…


仮に、全盛期の女将たちが居た時代に私が居たら…デッドラインを超えてその先にいるであろう…ドラゴンを殺せることが出来ただろうか?なんてことを考えたことは一度や二度じゃない。幼き頃の私だったら出来る!って言うと思う。


でも、幾度となくあいつらに殺され続けた私達の声は…どう足掻いても勝てないっと意見が一致している。


だからこそ、私はそれ以上の力を求め研究を続けている。

伝説の粉砕姫を越え、死の一撃を放たないと勝てない相手に犠牲無く勝てるように。


その後も粉砕姫の伝説を語り、全員が一息ついた後は再度、巡回任務に出る。

幸いにしてなのか、敵の唐突な突撃も落ち着いてきたのか、その後は敵に遭遇することが無かった。


次の日も同じように出撃するが、完全に終息したみたい、敵の気配が無い。

どういった意図なのかつかめる事も無く、敵の考えを推測の域が出ることが無い、もやもやとした感じで終わった。


まぁ、数多くの戦利品を手に入れたからさ、いいっちゃいいんだけど?どうして、こんな無意味に突撃してきたのだろうか?

頭をガシガシとかいても、推察する材料も、考察する判断材料も何もない、ただのきまぐれだろうっと結論付けてしまいたくなる。


四日目にして、カジカさんも現場に復帰したので、バトンタッチをする。

タイミングよく、地下施設も殆ど準備が整っていたので、中に運び込む研究用の魔道具を確認するが、此方の製造はまだ終わっていない。

それでも、机とか、本棚とかは用意できるので色々と必要なモノを少しずつ揃えて搬入していく日々



気が付くと…お月様は細く細くなっていた。



この一か月も濃かった…小さなアクシデントもあったけれど、寧ろ、そのおかげで色んな人と関わることが出来た。

私の立場上、どうしても幹部や私と長い付き合いの人としか関わることが無いから、新しく街にやってきた人達と関わる時間が無いって部分は気にはしていた。

不安を抱えてこの街にやってきた人もいるだろうから、そういう人達の悩みや、苦しみは、出来る限り把握しておきたいもの。


不穏分子に育つ前にっていう黒い部分と、純粋に心配だからって言うのもある。

この大地は…人を拒み過ぎている、始祖様が与えてくれた大いなる壁があろうと、死の匂い、死の気配は…他の街の比じゃないから。


死という甘美な誘いに誘われ消えてしまう。


そんなことはさせるわけにはいかない、この街は、最終防衛基地、死の大地と…人類の明日を勝ち取り闘うための最前線は何時だって人手不足なんだから。



さて、明日は待ちに待った勇気くんとの月一の会議!報告するための資料も頭に入っているし、計画の進み具合もばっちり

来月の中盤ごろには必要な魔道具もそろうから、研究もスタートできる!


ある程度、研究成果も出来てきたらユキさんに見せてあげて希望を持って過ごしてもらえれる様に道を示してあげたい。


後は…っていうか、私が知りたい情報ってのが特にないから、何か勇気くんから教えてもらえるのなら聞きたいかなってくらいで~…他に私から話す事ってないんだけど


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