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最前線  作者: TF
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Dead End ユ キ・サクラ (32)

困ったことにさー、ほら?私ってさ、一応生まれは、貴族だけどさ学院?学校?って言うのにいった事が無いんだよね~。

そのせいか、世代の近い人と遊んだ経験が無さ過ぎて、この後は、どうしたらよいのか、どのタイミングでネタ晴らしをしたらいいものか、流れが読めないし流れが掴めないなぁっと…

そんな事を感じながら、どうしたらよいのかと助けを求めるように、何か、この流れをコントロールする流れを掴むきっかけは無いかと、ユキさんにバレない様に視線をちらりちらりと、周りに向けると、皆も完全に、此方に興味がなくなったのか各々でお酒や食事を楽しんでいる様子がわかる…


現状を変える流れのきっかけになりそうなものは見当たらないなぁ…


小さな沈黙を産み出しながら、この先の展開をどうすればいいのか案を出しては却下を繰り返す。

だってさー、目の前にいる人物について何も考えずにどんな失態をしたところで抑えつけれる、それほどに圧倒的な上下関係があればさ、相手の事を考慮せずにどうとでも切り抜けれるし丸く収めれる自信があるんだけどさ~…


お願いされた人の事を思えば、失礼をしてはいけないし、どの辺りまで踏み込んでいいのかラインの見極めがぜんっぜんできない!

はぁ…経験って本当に大事なのだと痛感するな~。


頼りの綱はあることはある!

いずれカウンター奥にお酒片手に来てくれるこういった経験が豊富そうな人物!

年頃の子供を育て、農村で子供の御守もしてきた、ああ見えてコミュニケーション能力激高のこういう時も頼りになる女将!

その人物の手が空き、こちらに戻ってきて助けてくれるのを待っていると、漸く人段落ついたのか、汗をエプロンのポッケから取り出した大きなタオルで拭きながらのそのそと此方に向かってくる!!


やったぜ!っと、心の中でガッツポーズを取りながらもお澄まししたお姫様のようなポーズは取り続ける、手のひらは汗だくだぜ!


「あー、わりーねー!待たせちまった!」


カウンター席の前にどかっと座って、溢れ出る汗をタオルで拭い続けている、厨房の中は灼熱の如くなんだろうなぁ…

おっかしいな、ちゃんと風を産み出す魔道具もセットしてあったと思うんだけどな?想定よりも中が熱いのかな?

改良の余地があるかもしれないから今度、改善点が無いか話を聞いてみても良いかも。


女将の体から立ち上る湯気を間近に見つめ、気苦労が絶えない女将に変な心配をかけないためにも直ぐに返事を返す。

「いいよ!気にしないで、私も混雑する時間を知っているのにさ、女将の都合を考えずに、忙しい時間を避けずに来たのが悪いんだもん」

湧き出る地下水の如くだった、汗も落ち着いてきたのかタオルで拭うのをやめると、手慣れた手つきで、足元から三つのグラスと瓶を取り出して注いでいくんだけどさ~

それって…あっちゃー、それビールじゃん…

まったくもー、営業中にこうやって飲んでばかりいると次の健康診断に引っかかっちゃうよ?


さらに言えば、今の状況でお酒は口にするの難しいんだよなー…


「ほい!ビールの一杯くらいなら水みたいなもんだろう?」

トントンっと手際よく私とユキさんの前に泡立ち、独特の香りのする金色色の飲み物が注がれたグラスを置くと

「これって何ですか?」

ユキさんが直ぐに好奇心からか反応を示す。

目の前にある飲み物を初めて見るのか驚いたような表情で眺めている…


16歳でこういった世界に縁遠そうなユキさんからすれば初見だろうなぁ…


王都の一般家庭では、食事の席にちょっとした安いワインを飲むことがあるご家庭が多いって話を聞いたことがあるから、ユキさんからすればワインの方が見慣れているだろうからビールを見たことはないかもしれないし、お酒を飲まない家系だと…なおさらだろーなー


一応ね、王都では年端も行かない子供がお酒を飲むことを禁止しているんだよねー…子供のお小遣いでお酒は買えないけどね、守ってる方が少ないかもしれないけどね~。

子供は好奇心の塊だもん、憧れる大人が飲んでいたら背伸びしたくなるってもんじゃない?っていっても、15くらいからお酒を嗜む風習が貴族にはあるからだいたい、14歳くらいから味を知っている人は多いよね、子供はダメっていっても12とか13あたり…ん?私そう見えてるってことになる?…ちらりと自身の胸を見る、失敬な!Bはあるもん!いや、Cはあるもん!!


独り憤慨しているとユキさんの驚く様な声に女将が反応している、けれど、困惑してるね。

「なにって…うん?…ん?…ぁぁ、そうさーねー…」

声っと言うかどの様に返事を返せばいいのかわからないってわけではなく、純粋に声を出した人物に見覚えがあるのか、ユキさんをじっと、漸く見つめている。

じっと見つめられている状況にユキさんも困惑することなく女将の事を真っすぐに見つめ返している。


漸く、私の隣に居る人物が誰なのか気が付いたのか、一瞬だけ驚いたように眉を上げて口角が上がってからも、ユキさんをまじまじと眺めている。

「・・・・ぁあ!戦士長のとこの!?いやー!おおきくなったさぁーねぇ!!!いやー!一瞬わからなかったさーね~」

嬉しそうな表情に嬉しそうな声…きっと、頭の中のイメージと今のイメージが完全に繋がったって感じだろうね。

幼い頃に会ったきりだと成長した姿だと一瞬わからないこともあるんだろうなぁ、実家の弟や妹に会ったら私といえど、気が付かないかもしれないんだろうなぁ…


さてさて、この流れ、私が口を出す流れではないだろうから、これからどうなるのか、大人しく見守ろうかな?


気配を消しながら二人の会話を見守る姿勢に入る

「あ、はい、お久しぶりです」

ぺこりと頭を下げる辺り、挨拶はちゃんとできるんだよね~っと思いながら無意識に用意されたグラスを手に取る

「それで、これって何ですか?」

目の前にある金色の液体が注がれたグラスを指さして、再度、同じ質問を女将に投げかけると

「なにって、お酒さー?こういった席で出す飲み物の定番はお酒さーねー」

決まってるじゃないかっと不思議そうな顔で教え、何時もの様に、流れる様に私と女将はお互いのグラスをカンっと当て口に着けようとすると

その流れを見過ごせなかったのか私の事を子供だと思い続けている人物が目を見開き


「だ、駄目だって!子供がお酒飲んだら!」


勢いよく手を伸ばし、こういった子供の持っている物を取り上げたりするのに手慣れているのか、瞬時に、私が手に持っていたグラスを奪われてしまう…

むぅ、喉が渇いている時のビールは美味しいのに…


しかめっ面でユキさんを睨んでいると、理解できないユキさんの行動に女将が驚いたような声が漏れ出て

「な、なんだい?突然、きゅうに…ん?こども?」

どうしてグラスを取り上げたのか、ユキさんの発言を口に出し、此方を見て、ああっと、呟き、この状況をどうしたらよいものかとむぅっと悩み始める。

流石だよね、この一瞬でその違和感に辿り着き、その勘違いが何なのか導き出す頭の回転の速さ。


あのデッドラインまでたどり着き王族を無事返したという伝説の一人!王都でも尊敬される伝説の戦士の一団!ってわけだね。


人よりも耳が良い獣共と闘う為に身につけた、声を出さずに連携するために、無言での意思疎通を取り続けただけあって、状況把握能力が高い!

だからこそ、単独での護衛任務にすっごく適しているんだよね。


この能力の高さは本当に逸材なんだよね~。

これからも王都に長く滞在するときは護衛をお願いしたくなるってもんだよね。


女将の評価は常にうなぎ上り!

私の心と成長を傍で見守り続けてくれたのがジラさんなら、マリンさんは娘を外敵から守り続けてくれた肝っ玉母ちゃんって感じなんだよね!


頼もしいマリンさんがこういう状況だと、どう動くのか参考にさせてもらいたいので大人しく流れを見守る

「こ、これってお酒なんだよね?お酒は大人になってからだよ?そう決まってるでしょ?だめじゃん!大人が子供にお酒を渡したら!」

己の中にある正義感から、語尾が少しずつ強く成り声が粗ぶって来ている?

たかがお酒ひとつでここまで目くじらを立てるのってどうなんだろう?お酒に何か恨みでもあるのかな?


どうして、ユキさんはお酒に対して感情的になるのかその背景を考察し、女将の顔を見る

やっぱり頭の回転、速いよね、女将って。表情をみて直ぐに伝わってくる。


そういうことかっと、ユキさんが放った言葉の意味を直ぐに理解した女将はちらりと此方を見て、ああ、教えてないんだねっと小声が漏れてくるのが聞こえるのでウィンクしてお願いっと小声で女将に伝えると、まったくもう、っと一瞬だけ呆れた表情をした後、真剣な表情になり

「息子さんや、あんた勘違いしてるよ?」

真っすぐにユキさんを見つめ、真剣な空気を作り出す。

この言葉に、この雰囲気、流石のユキさんも、これが冗談ではなく本気で本当、大真面目だということが伝わったのか、何も反論せずにだまって、自分が何の勘違いしているのか考えはじめ、答えに行きついたのか手の平をぱんっと叩き


「あ!お酒じゃないってこと?って、ことは!これって、どんな飲み物なの?」


興味深々で眺めていたのか飲んでみたかったみたいで、私から奪ったグラスを口につけ、くっと一口、ビールを飲むと

「うっわ!?にっがぁ!?なにこれぇ!?」

うえーっと舌を出して辛そうな表情をしている。


はっはーん?君はさては下戸だな?って思ったけれど、初めてのお酒がビールってのはちょっと厳しいかも?

独特の苦みがあるし、慣れないと美味しくないもんね。


「苦いのは苦手だったのかい、姫様が連れてきたからさー、あたしはてっきり、いける口かと思っちまったのが良くなかったみたいさーねー、早とちりだったみたいさーねー」

私に用意されたグラスをユキさんが口をつけて飲んだので、さっと、ユキさんに用意されて口をつけられていないビールが入ったグラスを手に取り近くに置き、飲もうかと思ったら、女将が足元から新しいグラスを取り出して白い液体を注いでユキさんの前に置く。


たぶん、牛乳だろうね、女将のとこでとれる牛乳はとっても美味しいから、それは気にいるんじゃないかな?


ユキさんは口の中の苦みを消す為に渡された牛乳に口をつけると

「っわ!美味しい!すっご!のうこー!ぇー、これいいなぁ!」

気に入ったみたいで輝く様な笑顔になる。うん、表情がコロコロ変わるし、ユキさんって、子供っぽいね。

輝く笑顔を肴にして、ビールを喉に流し込む。


うん!喉が渇いている時のビール!この一口目だけは格別に美味しいんだよなぁ~…二口目からちょっと他のを飲みたくなるんだけどね。


「…あ!だめ…じゃないのか?それお酒じゃないってことだから」

目ざとく私がビールをごくりと飲んだのを見逃さなかった、一瞬だけ手が伸びて止めようとするが、すぐに引っ込める。

ビールがお酒じゃないって勘違いしてるねー。これどうやって訂正していけばいいのかわかんないっていうかめんどくさくなってきちゃった。

女将にウィンクして説明してあげてっと丸投げすると、しょうがないねぇっと小声で呟き了承してくれた。

「あーっと…え~っと?…あれ…歳さーねー?…名前は?」

何か思い出そうとして思い出せなかったのか、諦めて名前を聞く辺り…

あ、女将の悪いとこがでてるー、女将って人の名前覚えるの苦手だよねー?

たぶんだけどさ、私の名前すら、時折忘れている雰囲気があるんだよなー、まぁ、名前で呼ばないでって言ってるからいいんだけどね?


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