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最前線  作者: TF
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Dead End ユ キ・サクラ (26)

なんとまぁ、目覚めの悪い…

変な夢をみた、新兵がドラゴンに喰われたり、街の人達が磔にされて二つの槍で心臓と首を刺され、他にもドラゴンの近くでは命を弄ぶように殺されような無残な状態で死を晒し、私達が獣共に蹂躙された夢だ。


こういった類の夢を見て起きるなんて目覚めが悪い以外の表現が見当たらないよね。まったく!もう!気持ちよく寝てたのに!!

目覚めの悪さからか、夢の内容が酷過ぎたせいか、自然と、枕にむかってぽすぽすと幾度となく拳を振り下ろし続ける。

振り下ろし続けていると、悲しくも無いのに、涙が溢れ、頬を伝い、ベッドに染みを作っていた…


気が済むまで、心が落ち着くまで、そんな事を繰り返す。

ある程度、心の高ぶりが落ち着いたら、徐々に体から違和感を感じる、小さな痛みという寝る前には無かった痛み。

きっと、変な夢をみたせいだろうね、胃が痛い。


痛みを紛らわせるために、お腹を摩りながらベッドから降りて、炊事場の隣に備え付けてある冷蔵庫から水を取り出してカップに注ぎ一杯、もう一杯と、水を胃の中に放り込んでいく。


胃の中が空っぽだから胃が痛いわけでは無さそうだ、水を胃の中に入れても痛みがひかない…っとなると、夢見が悪すぎてストレスでってことかな?

うーん、嫌だけど、見た夢をもう一度思い返す、夢とは思えない程、リアリティがあった…このリアリティのある感覚に覚えがある。


嗚呼、そうか、この感覚、このリアリティ…


そっか、私、死んだんだ


覚えがあった、幾度となく未来から突如舞い降りるかのような情報…

未来の私が、死ぬ前に過去の私にメッセージを飛ばした、そして、それが夢となって再生された。

未来からの情報であれば、メッセージに近い言葉が届くことが多い、けれど、今回は今のところないってことは、死に間際に飛ばしたメッセージとは別で飛ばす予定が無かった感情や出来事が送られてきたのだろう。


時折、死にゆく状況の無念なども残滓となって飛ばされるみたいで、時折、その光景が突如、フラッシュバックすることがある。

今回は、夢の中でフラッシュバックしたのだろう。


落ち着かない胃の痛みを誤魔化す様に夢で見た光景を思い出す、メッセージでは無くても明日へ繋げる為の、何かしらのヒントが得られるはずだ。


夢に出てきたドラゴンを思い出す、覚えがある、ようでないようで、ある…不思議な感覚。

きっと、何処かの未来、何処かの過去、何処かの世界で私を殺した存在なのだろう


そのドラゴンを思い出すと、嫌な感情が湧き上がってくる…

湧き上がってくるついでのように、私が持てる最大火力、最大術式をぶつけても皮膚を焦がしただけという敗北原因も湧き上がってくる…

そっか、未完成とはいえ始祖様の術式が通じないのか。


この部分が私のプライドを大きく傷つけて胃にダメージを与えたって事かな?そうだとすると、今後、私が備えないといけないことに対しての警告として受け止めて、更なる術式の研究をしていかないといけないってことだね。


ほーりーばーすとを越えるほどの出力・火力…どうしたものかな~…


確かになー、前々から、決め手がないなって悩んでいたんだよなぁ~…

だってさー、どうにかこうにかしてさ?敵の眼前に攻め込むことが仮に出来たとしてもさ、敵の情報が無さ過ぎて、どれが最も効果を示すのか…

敵を確実に殺す必殺の一撃、決め手の一手ってのがさ、ないんじゃないかなーって、痛感してたんだよなぁ~…


そう思って、色々と攻撃手段を模索し研究はし続けているんだけどなぁ~始祖様が残してくれた異世界の攻撃魔術を研究してるし、始祖様が残してくれた術式も研究してるよ?

必要な魔力が飛んでも無くて再現不可能なモノばっかり!!あの人ってさ、自分が私達の理の外にいる存在だって言うのをわかってないよね?もうちょっと、私達のような弱き民でも扱えれる攻撃手段とか、防衛手段とかさ!残して行って欲しいよね!っていうか、敵は全て殺してから次の世界に行って欲しかったなぁ!もう!!


あーだめ、胃が痛いからつい、感情が荒ぶってんじゃん、お母さんじゃあるまいし、錬成沈着が私の売りでしょ?心を落ち着かせないとね!


始祖様が残してくれた術式はちゃんと研究し続けているから、ほんっとのほんとに一部だけれど解読出来て、発動も出来ている!これは誇ってもいいと思ってるよ?

私が持つ最大火力である、ほーりーばーすともその一つ!

内容としては、恐らくだけれど、魔力によって光の粒子を産み出し、それらに熱と質量を与え敵に向けて光の速さで飛ばして、熱量を伴った質量を敵にぶつけて削り燃やす術式って解釈してるんだよね。

だから、火の玉を敵にぶつけるように確実に敵を焼けはらえるって思うんだけど…それが通じないんじゃなぁ…


ほーりーばーすともね、どーも、解析しきれていない部分があってさ、もしかしたら、その部分に何かしら術を増幅させる作用があるのかもしれないし、敵に命中させるための照準的な役割があるのかもしれない、そんなわけで、その部分がわからないかぎり、ほーりーばーすとを更なる火力を求めて強化することが出来ない!

私が求める先に進めない気がするんだよね。


他にも始祖様の術式である程度、解析が出来ているものがあるんだけれど、あくまでも予想って感じだから、実際に、術式研究所が襲えている小さな広場を用意してあるんだよね。

その、ちょっとした実験場で発動してみて、どの様に発動してどの様に現象が収束するのか、実験してどのような作用があるのか色々と確認したんだけどさ、物によってはさー実験によって失うリスクが高すぎるんだよね?

その最たる例が、現時点での私の最大火力!であるほーりーばーすと!こってさ、仮にだよ?全ての前提を取り払って無条件で発動できるとすればだよ?

この、ほーりーばーすとを始祖様の記述通りに発動するとさ、とんでもないことになりそうなんだよね~…王都くらいっていうか、王城すら軽く貫通しかねないんだよね!


まぁ、発動したくてもさ出来ないんだけどね。

必要な魔力を軽く凡そって言うか予測を込めて計算するとね、街の人達から集めた魔力…

下手すると5年分くらい消し飛びかねないから、机上の空論から出ることが出来ないんだよなぁ、その後を見据えるとさ、迂闊に実験できないんだよなぁ~…


始祖様のような無限ともいえる魔力が欲しい…って言うか寧ろ、始祖様を解体研究してみたいっていうダークな思想は横に置いておこう、考えるだけで不敬だよね。


それにさー、その5年分の魔力を一点に集めて解き放つことが出来るのかって?

人のような脆く弱い脆弱な肉で実現できるのかってことだよね。

高密度の魔力を土台にしたとんでもない術をさ、近距離で発動したら、ほーりーばーすとの余熱とか、光で、術者が蒸発しかねないよ?

過去に粉砕姫と呼ばれ、畜産の王であるララさんの奥様、私が試験的にっというか、この街が人が住める街を目指して建設している商業エリアでいつも戦士達のお腹を満たしてくれている女将こと、マリンさんのような天性の肉体を持っていないと支えきれないんじゃない?光対策で目を保護する物、えっと、サングラス的な?遮光的な装備が必要だよね?


つまるところはさ、その衝撃に耐えれる材質が無い!ってこと!


絶対に発動できるって自信も無いからさ、もしも、術式を発動してミスったらこの世の終わりになりかねない!

恐らくだけれど、っていうか、一応、計算はしてみたから、その通りなると、この辺り一帯、全てが熱と質量によって吹き飛んで~、人が生きていたっていう跡形すらも全て蒸発!瞬く間に文明が消え去りそる!!っていう可能性が6割超えてるんだよね…


リスクに未来への影響を考えるとさ、大規模な実験が出来ないし、大規模な実験をしたとしても、敵に気が付かれて邪魔されそうな気がする。

いっそのこと、全てを捨てて、この世界線を実験だけの為に犠牲にするっていう考えもあるんだけれどさ、私だって死にたくないって、わけじゃん?

流石に、自暴自棄になって我が身を犠牲にする程、犠牲心高くないんだよなー私って、私だって生きたいもん!成し遂げたい、勝ち取りたい望みがあるもん!


ぐるぐると思考を巡らせて胃の痛みが紛らわせようとするが、今考えることは、それじゃないよ?っと言わんばかりに胃の痛みがしくしくとちくちくと訴えかけてくる。


胃の痛みを紛らわせるようにもう一杯水をぐっと飲みほし、ぷぅっと息を吐きながら一息つく、これ以上はもう飲めない苦しい。

使ったカップは翌日にでもメイドちゃんが掃除してくれるので、カップを洗面台の中に置いておく。

胃の中がちゃぷちゃぷ言うくらい飲んでみたけれど、胃が何かに悲しむかのような痛みがひくことが無かった。


痛みに対してある程度の耐性があると自負している私が、こんな風に痛みがいつまでも、気に障る程度に残るなんて珍しい

珍しいからと言って痛みが好きなわけじゃない。


胃薬でも飲もうかとお母さんが用意してくれた薬箱を取り出して、箱を開けて中を見てみる、濁った色の液体が入った瓶が数多くある、瓶の淵には、どれがどの作用がある薬なのか注意事項がしっかりと書かれているので、今は痛み止めが欲しいかな?胃の痛みの原因がわかってるわけじゃないし、下手な胃薬はだめかも?

瓶を一つずつ取り出して、痛み止めがあるのか探してみると、痛み止めと書かれている水薬を見つけた。


注意書きには、どの程度の痛みに対して、どの程度の水薬を飲めば良いのか書かれているので、それをしっかりと見て、適切な道具を取り出す。

小さじスプーンを取り出し、小さじ一杯の薬を口に入れるのだけれど、過去の経験上、こういった水薬は苦くてまずいのを幾度となく経験しているので、舌に触れないように、術式で水薬を薄い膜で包み込んでから、口の中に放り込んで、薄い膜事、飲み込む!こうすれば、苦くない!んだけど、薬の独特の風味は登ってきちゃう、こればっかりは防げないから耐える!


お母さんってさー健康オタクだからさ~、色~んな、薬とかそういうのを私に飲ませてくるからねー、それに付き合う為に編み出した術式なんだよねっと。


痛み止めの薬を飲み、薬箱を元の場所に戻す、薬箱の隣には封っと書かれている箱がある…

お母さんがもしもの時に備えて用意してくれた劇毒、もとい、劇薬…


使い道を誤れば即座に精神崩壊をきたすが、それでもこの薬を頼りにしないといけない場面がくるかもしれないからと用意してくれている。

個人的にも使えば最後、廃人になるだろうから、使うつもりはないけどね!


薬を飲んでから、暫くの間は痛みに耐えないといけない、少しでも痛みを紛らわせるために何かに集中したい。

取り合えず、意味深な夢、あの夢で見た映像を思い出しながら紙に書いてまとめようかと机に座る。

椅子に座るころには少々痛みがましになってきたのか、ちょっとだけ、楽になる、流石は毒の名手、薬学に関してはあの人が一番だと思う。

時代が時代なら、暗殺者として世界を震撼させたかもしれないほどの逸材…敵に回らなくて本当に心の底から良かったと思うし。


私のお母さんと言う立場に最も相応しいと思えれるほどに素晴らしい人。

なんてね、上から目線で感想を述べてみたけれど、ジラさんが居たからこそ、私がここまで生きてこれた、感謝という言葉以外、何も湧いてこないよね。

愛してるよ、お母さん。いつもありがとう。


んふぅっと小さな吐息を漏らし、胃の痛みから解放されたことに安堵を感じながら、机の上に置いてある紙とペンに手を伸ばす。


①ドラゴンに負けた

└私が持てる最大火力が通じないのならそれ以上の火力を用意するだけ、だよね~。力には力で対抗じゃい!って、考えるのは違うよなー

 取り合えず、熱に対する耐性を持っているのかもしれない、だとすれば、私が持つ最大火力とは相性が悪いことになる。

 もしくは、魔力に対して何かしらの抵抗する術を持ち合わせているのかもしれない。

 純粋に力での勝負ではなく搦め手も重要ってことになる。

 敵に毒が通用するのかどうかは定期的に実験しているので、現状持ち合わせている毒がドラゴンに対して有効なのかどうかは未知数だが

 用意しておくことは大事だよね。


②新兵がドラゴンに食べられている

└他の人達は磔にされたり、殴り殺されていたけれど、新兵だけ?

 これはどうしてなのだろうか?

 理由が読めない…たまたま、新兵がドラゴンに辿り着いて戦いを挑んで噛みつかれて負けたってことだろうか?

 …どうして、私は、捕食されている人を新兵だとわかったのだろうか?

 うーん、夢だとなぁ、っていうか、今も少しずつ記憶が薄れていってんだよなぁ。

 確証が無いので、ただ、そういう風に見えただけってことにしておこう。


③磔にされていた人々が居た場所に見覚えがある

└たぶんだけど、あれって、王都じゃない?

 殆どの建物が倒壊してるけれど、教会がある広場っぽい場所があったし

 王都の建物っぽい雰囲気があるから

 ってなると、私達は死の大地でもなく、この街でもなく、どうやってそうなったのか見当もつかないけれど

 王都で最終決戦が始まったってことになる?

 そうなるとさ、敵は空、または、海を渡ってきたってことになる?

 どうやって?

 うーん、これまた、推測の域をでないなぁ…放置で良いかな?夢だし

 もしかしたら、闘いの流れで徐々に徐々に私達が追い詰められたりとか、逆に私達が敵を追い詰めて追い詰めて逃げるところがない程まで追い詰めたら

 ドラゴンが飛んで逃げて~王都にまで敵がっていうか、ドラゴンがきてしまったってこともあるだろうからね


こんなものかな?っとペンを机の上に置くと


突如、予想だにしていない反応によって、背筋がぞくりと冷たくなる


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