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最前線  作者: TF
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Dead End ユ キ・サクラ (20)


私も、数多くの絶望を…愛する人々が蹂躙されていく世界を見てきたから…彼の悲しみが嫌と言う程に理解、できてしまう…

…私と同じ苦しみを…彼も…背負っているのだという部分が、より強く共感を生み、似た者同士という部分が彼に親近感を抱き、更に、彼に惹かれていくのを、うっすらと感じてはいるが、見ないようにして、次の質問を思い出そうとする。



「どうして、ユキの体を扱えれるのかって?…うーん、これまた、説明が難しいな…扱えれているっていう部分も引っかかるな…」

次の質問として、②どうして、ユキさんの体を操作できるのかっ、それをダイレクトに質問してみたけれど、普通に考えれば如何様にも誤魔化しが聞いてしまう質問ではないかと今更になって気が付いてしまう。


この質問に対して彼は、言葉を選んでいるのか、時折、口を開けるが、声は出ず、顎を触ったり、額をトントンっと親指で叩いて考えを巡らせている

コロコロと表情が変わるっと言う部分ではユキさんと同じ、雰囲気も似ていると言われたら似ているのかもしれない。彼の話を全て鵜呑みにすれば、血筋が同じだからだろうか?ユキの遠い先祖だからだろうか?


「そう、だな、うん、そう、しないと良くない、な。うん、この質問に対してこれを言わない限り、進まないっか…前提としてまず間違っている気がするが、それはさておき」

悩み悩んだ結果、答えというか、結論がでたのか、迷いが消えたような表情で此方を真っすぐに瞳を向けてくるので、目と目が合った瞬間、ちょっと眩暈がしたような気がした。

「姫様、質問に対して質問を返すのは良くないのは重々承知だ、だけど、こればっかりは、先に質問をさせてくれ」

質問を質問で返すのは確かに良くないけれど、何か意図があるのだというのが伝わってくるので、こくりと頷く。恐らく、彼なりにわかりやすくするために、私を気遣ってのことだと思われるから、断る理由が無いよね。

「こういった質問がくるっということは、姫様が何を俺に聞きたいのかってことだよな?俺の考えた正しければ、恐らく、質問の順番を間違えていないか?」

質問の順番?…じゅんばん?どういう意味だろうか?

「先に、俺が一体何をしにこの場に現れたのかっという質問を聞くべきじゃないのか?それとも、俺がこの場にいるという部分は聞かなくてもよい部分なのか?」

鋭い指摘だと、思う、っていうか、うん、痛い部分を突かれた、気がする。


そうだよね、まずは、どうしてこの場に居るのかという疑問を解消する、つまりは目的を知ってから手段を知るべきじゃないかな?

確かに順番を間違えている気がする。私は、先に手段を聞いて、目的を後回しにしてしまった。確かに質問する流れとしては正しくない。


ユキさんの体を操って何をしているのか。


それを知ってからの方が答えに辿り着きやすいって事、だよね。そこに全てが内包されているってことか。


「納得してくれた感じみたいだな、質問内容がまさか、一足飛びの質問が出てくるとは思ってもいなかったよ。君は賢過ぎるから答えを先に求めてしまったのかな?っというか、目的なんかよりも、手段の方が好奇心が勝ってしまったのかな?自身が求める不可思議に対して、一刻も早く答えが知りたい!待ち遠しい!という感じで、己の欲求が勝るってことだ、良い事ではあるのだがな、そういう人が世界を開拓していくものだ、素晴らしい才能だよ」

優しく微笑みながら頭を撫でてくる、何時もの様に、ぽんぽんっと叩く様に撫でるのではなく、子供を指導する親や先生の様に、褒めながら撫でてくれる。


「では、まずは、前提として、俺がどうして新月の夜にこの様な、他からの干渉を防ぐための空間を作り出しているのか…その目的を教えよう」

撫でられた腕が離れ、自身の胸に向かって親指を当て

「ユキを守るためだ」

…自分自身を守る為?…違う、この人は柳、ユキっていうのは昼間にいる人格のことを指している?ややこしい…

「ユキはな、特殊な魂なんだ、その魂を守るために俺は新月の夜にありとあらゆる干渉を防ぎ、ユキの魂に平穏を与えているんだよ…特にこの街に来てから干渉が強くなってしまってね、この経緯を考えれば致し方ないさ…ユキの魂はここから遠い遠い場所に居る、この大陸を我が物にしようと企んでいる存在が用意した魂なのだからな」

…これを真だと捉えるべきなのか、偽だと捉えるべきなのか…私は柳という人格が敵が用意した魂だと思っていた。

だけど、真実は違うということ?柳が言うにはユキさんの魂が敵が用意した魂だと言っている…


どちらを信じるべきなのだろうか?判断材料が少なすぎる。

私の勘は間違っている可能性も勿論ある。柳という人物が正しい事を言っている可能性もあるのだけれど・・・


だめだ、今の私は何処か遠い世界にいるような感じで、ぼんやりとしている?ふわふわとしている?心と考えが一致しない・・・


唐突に自分が考えていた前提が崩れてしまったことに、突如知ってしまった新事実、嘘か真か…想定外の内容にどう向き合えばいいのか、瞬時に答えを見つけ出せずにいると

「…む、すまない、どうやらここ迄のようだ、ユキの魂が目を覚まそうとしている。続きは、また新月の夜に頼むよ」

すっと、立ち上がると微笑みながら私の頭を撫でてから、ゆっくりと広場から離れていく…


離れていく後姿から視線を外すことが出来ず、固唾を見守る様に、ただただ、彼の後姿を眺め続けてしまった。

彼が去った後も、思考が定まらず、ぼんやりとベンチに座ってしまう。


理性的な私が、また風邪をひくから早く部屋に戻って布団の中で呆けろっと言ってくる。

情熱的な私が、撫でられた頭の感触を反芻するかのように何度も何度も、思い出しては照れて笑っている。

冷静的な私が、彼の言葉を何度も何度も矛盾が無かったのか粗が無いのか探りだす。

乙女的な私が、次の新月の夜にまた会おうと約束を取り付けてくれたことに大喜びでジャンプし転げ回っている。

冷酷的な私が、彼がいう西の大地に赴いて現地の人に歴史を聞くのはどうだろうかと提案してくる。嘘で在れば処せと…

初心的な私が、お尻に敷かれているハンカチがまた増えてしまった、彼にはどうやってこの礼儀を返すべきなのだろうかと、頬を染めている。


…様々な湧き上がる感情をどうやって統一すればいいのか、判断が出来ない。こんなことは初めてだったから。


取り合えず、現時点でわかっていることは一つ、身の安全を考えるべき。

冷静で理性的な私が言うように、まだベンチにある彼の温もりが消えてもいないというのに!

尾を引かれながらもベンチから離れ、夜空の星々に見守られながら自身の部屋に向かってふらふらっと足元が暗いにもかかわらず地面を見る事も無く天空ばかりをみつめ、覚束ない足取りで帰路に就く。



夜の涼しい風が、全身を過ぎ去っていくのだけれど…体の芯から湧き上がる火照りは冷めることが無かった。



─ここまで掲載済み



あの後、眠ることに関してはすんなりと眠ることが出来た。

一晩寝ると、思考等が整理されたのか、今後の方針として、何をするべきなのか、何を優先するべきなのかを、理性的に判断できる。


次の新月までに何をするべきか、何を指針として動くべきか、心は決まった。

自分のためなのか、明日を勝ち取るためなのか、迷いを感じることはあるけれど、これに関しては私しか動けない、だから、私が自由に動けるようにスケジュールを調整していかないといけない。


なので、現状のスケジュールを確認するのだが、現状では、西の街に行く用事が何もない…


宰相にギナヤの経歴を調べてもらっているのだけれど、期待はあまりしないでおこう、たぶんだけど、っていうか、恐らくだけどさ、ギナヤが王都の政策に関わることを認められた人物として、つまり、他の国を統べていた領主から、王族として認められてからの情報しか、記録なんてされていないだろう。


つまりは、柳が語ってくれた内容は王家では知りえることが出来ない情報なのだと思われる。


ってことはさ、彼が話した内容が本当に正しいのかどうか、確証を得る為には、私自身が西の街にいって地道な聞き込み調査ってことになるわけ

…そんな時間が私にあるのだろうか?いや無い!忙しくてそんな時間なんてないよ!やることが山積みすぎて…誰かに任せれたいけれど、それが叶わないんだよなぁ、取引くらいメイドちゃんが代わりにしてくれてもいいんだろうけれど、最終決定権を私が持っているから結局のところ、会いに行かないといけないんだよなぁ…


せめて、取引先の貴族たちがこの街まで来てくれたらいいんだけれど、そればっかりは絶対に出来ないんだよね…

この街の評判が悪すぎて、絶対に近寄らないって空気だもんなぁ。死の街って評価とイメージは永遠に消えないのかもしれない、敵を殲滅しないかぎり。


だからといってさ、西の地方に柳について調べる為に、調査員を編成し派遣したところでさ、絶対にぶち当たる疑問があるんだよね。


『この調査は、何のために?今を必死に生きる為に闘っている我々がすべきことなのだろうか?』っという、庇いきれない誤魔化しできない疑問が湧き上がってくるよね?

そうなっちゃうとさ、モチベーション下がるし、忠誠心も落ちると思わない?


『調べる必要性とは何か?徒労に終わるだけではないのだろうか?姫様直々の依頼だけれど、実は厄介払いをされているのでは?』っという辿り着いて欲しくない負の答えに辿り着く恐れがあるんだよ!


疑心暗鬼って本当にやっかいで、一人がそうなっちゃうと共に派遣した調査員にも伝番しちゃうわけじゃん?

負の感情が調印達の心を蝕み忠誠心が薄れた結果、優秀な人物がこの街から離れてしまうっという、危険性もある。


リスクを考えると…やっぱり、そうだよね、この考えに行きつくんだよね~『調査員を派遣出来ない』ってね…

私達の街が、王族が監視するという縛りを切って、私が建国しておけば、不穏分子の調査とかそういった、理由をでっちあげて、念のために秘密裏に調査してきてねって、出来るんだけどなぁ…


今の状況で使えそうな理由は何だろうか、考えてみて直ぐに出てきたのが、市場調査とか、かな?これならなんとか、理由をつけるべきだろうか?


うーん、ちょっと考えると内容が弱すぎる、だって、そんなものを必要としない程に私の事業は安定しているから。

このことを私に心酔している人達に話をしたら、そんなの分かり切ってますよ、不必要ですよね?何をおっしゃってるんですか?って一笑されてお終いなんだよなぁ…


だったら、文化とかの発展に力を入れているのを知っているだろうから、それの発展形として各町の歴史書を作るっという理由はどうだろうか?

…客観的に考えても無理だよな~、偉大な王がその地方から生まれたからとかそういった理由だったら、何とか…ならんよなー、なら、王族が歴史書を作ればいいのでは?って思っちゃうよねーなんで、王族嫌いの姫様がそんなことを?って、なるよねー!

せめてさー東の地方だったら私の出身地ってことで歴史書、作っちゃおうかな☆彡って言えば喜んで向かってくれるんだけどなぁ!!


あーもー、幾ら考えても名案が思い浮かばない!無理なんだよねぇ~、どう足掻いていも無理だにゃー!!


だって、そんな時間が合ったら、人類が敵を倒す為に違う事をするべきでしょ?って、この街にいる人なら絶対にそう思うもん!!

平和になってからやれよって思うもん!!私だって、そんな事をいう奴には、平和になってからやれよ、時間無駄にしてんじゃねぇよ馬鹿じゃない?って正面切って言うもん!


ふぬーっと項垂れながらため息が漏れてしまう。


少し考える角度を変えてみよう、そこから何かいい案が思い浮かぶかもしれないし。

まず、純粋に、この街にある数多くの部署から誰かを派遣する余裕って、どうだったかな?

うーん、危ない場所ではないから、どの部署からでも派遣することはできる、ってことは、あることはあるけれど、問題は誰を派遣したとしても煙が生まれるよね?

派遣された人は納得しないとだろうっという不信の煙がね…っとなると、うん、それを防ぐために自然な理由が欲しい。


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