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最前線  作者: TF
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おまけのおまけ 罰ゲーム、思い出話1

日々の仕事に準じていると、伝令が伝わってくる、内容が会議室に来てっとだけ。

この様な呼びだし方をするのは姫様以外居ない、何か用事だろうか?


姫様から呼び出しを受けたので、皆にそのことを伝えてから、会議室に向かって行く、皆も何か用事があれば呼び出されたりするので特に何も思わないだろう、私だっていつものことだと思っていた。


ちょうど、研究もひと段落したし、仕事のきりが良いタイミングで呼んでくれる辺り、私達の仕事内容などを把握してくれているので、仕事がしやすくて助かります


ふんふ~んっと鼻息交じりに向かって行く、最近は公私ともに順風満帆で毎日が幸せ


会議室をノックすると、会議室の中から声が聞こえてくる、「はいってー」っと、姫様の声がするので

「姫様ー何かなー?」

声を掛けながら部屋に入った瞬間、逃げればよかったと後悔する

いや、今すぐ逃げれば「判断がおそーいだーめ」体を反転させドアに力を入れても開かなかった


そう、部屋の中にはおびただしい程の素材の山、山!やまぁ!!会議室を埋め尽くすほどの量が所狭しと積まれている


「罰ゲームだよ、懐かしいよねー?幼い頃とか、ここに来たての時とか大量に作ったよねー…魔力回復促進剤の原液」


本来であれば私のように熟練の人がする作業じゃない、錬金作業に不慣れな新人が担当する、純粋な単純作業!!

そして、その中でも一番嫌われていてるやつ!!でも、何かと必要なやつ!!


…最近、新人達が晴れやかな顔で違う作業してたよね、そうだよ、そうだったよぉ、こういう事なのね


もう少し、研究塔の長として周りをよくみないといけないのね、研究ばっかりしてるから、そういうのって姫様が殆ど担当してくれてることが多いから。

その~あまりっていうか隅々までだれがどの作業や研究をしてるのか知らないの、ティーチャー君にもその辺り、注意されたことあるけどさ、出来る人がいるなら、してもらった方がいいよね?って、考えにならなーい?


木箱の中にある素材を見ると、絶句する

「ひ、姫様ー?あのー、素材が素材のままですけどー?もしかしなくても、そこから?」


ハチの巣とかって砕いたりと様々な下処理という名の工程がありますけどー?まだ、蜂の子すらいる状態ですけどぉ?白い肉体がこんにちは、しちゃってるよー?


「そうだよ?ぜ・ん・ぶ、全ての工程をしてもらうに決まってるじゃない」


その言葉に魂が抜けていくのがわかる、全ての工程なんて、当然の如く把握している、はあくしているがゆえにわかってしまう このあとに まちうける、、、絶望的な作業量


「っじゃ!よろしくね!」

肩を叩かれてその場に置き去りにされていく、素材の山、その前で立ち尽くす、全工程を独りで行うとなると、この量?無理だよぉ、こんなの無理だぁよぉぉお


絶望の中、一人で叫び続ける、むせかえるような土の臭いに囲まれながら、叫び続ける


はぁっと、ため息をつく、一通り叫んで嘆いたから、心が落ち着きを平静を取り戻し冷静になっていく。

嘆いていても許されるわけではないので、用意された作業着に着替える、用意された作業着がしっかりとした装備だったので、安心する


手袋も頑丈な奴だし、上から下まですっぽりと入る厚めで、暑めの作業着、これを着て作業すると凄く暑いから下着のみで着る、魔力を流せば肩甲骨の下?腰の上?に送風機みたいなのが付いてて、服の中に風を送ってくれる機能が付いている。


顔の部分もしっかりと守るためにゴーグルもあるし、マスクもある、帽子もある、肩先以上もある髪の毛を束ねて帽子の中に入れる


装備も万全なので、作業を開始する。まずは、蜂の子を一つ一つ取り出さないと・・・・


大量に置かれたハチの巣から子供をピンセットで一つ一つ取り出しては、箱に入れていく、時折、逃げ遅れたやつが飛んでくるが術式ではたき落す、刺されないための厚めの防護服だけど、私のような熟練者になれば羽音ですぐにわかるのでノールックで叩き落せるのよ、お母さん直伝なんだから!


取り出し終わった後は、一つ一つハンマーで砕き、洗浄するのだけれど、、、想像以上に多いなぁ、洗浄用の魔道具ほしいなぁ

次の工程はどうしようかと、悩んでいると突如ドアが開き「素材もってきたさぁ!あと、運ぶものがあればよこしな」女将から大量のハチの巣を渡される…


女将にハチの子を取り出したハチの巣があるけど、これの下処理をしたいから、研究塔に運んでくれるのかお願いできるか頼んでみると

「ああ、そういうことさぁねぇ、あたいの罰ゲームは運搬作業って言われてねぇ、手伝うなっとは言われてねぇから、そういう意図じゃねぇのかい?」

どうやら、分業制っぽい!たすかったぁ、洗浄粉砕は魔道具を頼りにしてるから、洗って砕くだけで、一日がおわっちゃうとこだったぁ


たぶんだけど、女将は女将で何処かで罰ゲームしてそうだよねぇって作業しながら思っていたらそうみたい。


その後もひたすらハチの子を取り出しては箱に区分けしていく、すると女将が取りに来る、取りに来たついでに、次の工程の段階へと処理されている。

粉砕されて、洗浄もされているハチの巣が置かれる


普段から魔道具で行っている工程は使っていいってことでいいのかな?まぁ、それなら、うん、納得できるけど、追加されるのは想定外だよぉ

なんで、木箱5個も追加されてるのぉ?


「女将さ~ん、追加ってまだまだある感じですかー?」

ハチの子を抜き取ったハチの巣が入った木箱を持って行こうとする女将さんに聞いてみると

「ぁ、追加とかそんなんじゃないさぁね、元から用意されていたのを、あたいが運び終わってないだけさぁねぇ、いやー、重いのはいいんだけどねぇ、往復するのがしんどいねぇ・・・」

あ、ぁ、ぁぁ…追加とか、そういった話ですらなく、私の勘違いってことかぁ、この部屋にあるだけだと思っていたら、純粋に準備が終わってなかったってことなのね

絶望に打ちひしがれていると「あと、5往復辺りで終わりさぁねぇ!っさ!気合れていくよぉ!」女将から漏れ出る言葉が追い打ちとなり心が折れそうになる。


背筋をぐぐっと伸ばしてから「さぁいってくるとするさぁねぇ!」ドスドスと、大股で出ていく女将を見送り、木箱を開けて中を見る、綺麗にみっちりと入っている

しかもちゃ~んとハチミツを取り除いて蜜がない綺麗な状態、でもハチの子はいるし、何匹か大人もいる…


おかしいなぁ、蜜を取り出す過程で子も大人もいなくなるものじゃないの?どうやって蜜だけ?…ぁ、よく見ると結構こびり付いてる見えてなかっただけかな?


ぼけーっとハチの巣を眺めながらも、耳障りな羽音、目掛けて発火の術式を使ってを羽を燃やして落とし、さくっと踏みつぶす針を持っていないタイプだけど、危険が無い蜂だろうけど、耳障り…あと八つ当たり


はぁっと特大の溜息をつきながら作業を再開する


心を無にして、錬金作業が楽しかったあの頃を思い出して単純作業に没頭する。


日が暮れるころには全てのハチの巣を砕き、洗浄し終えたのでハチミツを少々加えてからすり潰しながら混ぜていく、ボリゴリバリと様々な音を出しながらすり潰していく

ある程度すり潰したら月見草と呼ばれる花を取り出す、姫様曰く、別の名前の方がいいよねー月見草って聞いちゃうと違う花がでてきちゃうからーっと仰る、意味がよくわからなかった、姫様は不思議な人だから、その辺りはスルーするのがいい。


この月見草は、月夜だけで育てた花、ある花があって育った時の環境によって成分が異なる。

太陽だけの光で育てる、月だけの光で育てる、それだけの違い。


草そのものは何処にでも生えているのだけれど、しっかりと、どちらかの環境にしないと、特殊な成分を持たない。


太陽の光だけで、育てると医療班の方で使われる水、浸透、だっけ?なんとか術式に用いる為に必要な特殊な液体を錬成するのに必要な素材

月の光だけで、育てると魔力を豊富に蓄積するみたいで、魔力回復促進剤に適した素材になる


この花を乾燥させて、この花から採れる種から油を抽出して、その油と混ぜるようにゴリゴリとすり潰したら、先ほどすり潰したハチの巣と一緒に混ぜる


なお、この油と乾燥させた花が非常に苦くうっかり手についてしまった状態で舐めてしまうと生きていることを後悔する程の苦みを感じる

知的好奇心で舐めた時は舌を抜き取りたくなったほど。


太陽と月、満遍なく当てて普通に外に出して育てると、適度な苦みが美味しい野草になるって女将が言ってたけどー誰が好き好んで苦い葉っぱ食べるの?

花の部分は食べれないから捨てるらしい


見分け方も凄く単純でわかりやすい


色が違う


太陽だけで育てると、ちょっと、ちょっとじゃないか、見比べると明確に違う、黄色い花が咲く、葉の部分とか、茎の部分だけだと、わかりづらい

月だけで育てると、真っ白な花になる、わかりやすい、私は真っ白な方が綺麗で好み、花言葉も寵愛が欲しいって意味だから、好きな人に渡す花としても有名だもの

両方の光で育つと不思議とピンクと白のグラデーションがかった色合いになる。


月見草を見ていると愛する夫の事が好きになったきっかけを思い出してしまいそうになるね。


この街にある、月見草は姫様が畜産の旦那に頼んで大量に育ててもらっている、No2が居た時代にも育てていたみたいだけど、今ほど大規模な農園ではなかった

月見草、光見草を育てる過程で蜜が手に入るから蜂を栽培して、特殊な環境を用意して、蜂だけが花が育っている場所に通れるようにしていて、この花から蜜を作ってもらっている。

だからこそ、この街で錬成される魔力回復促進剤は非常に効能が高くて、王都でもかなりの値段で取引されている。


それだけじゃなく、ちゃんと2種類の蜜を作ってる、月見草から作ったハチミツ、光見草から作ったハチミツ


この二つも成分が異なるし味も違う。月見草から作られたハチミツは独特の風味があって苦みがあるような甘いような蜜になっていて、喉に非常にいいと言われてて、喉に対する薬の元として使われたりする

光見草から作られるハチミツは、甘い、純粋に甘い!主に食事用に使われる。


種は大きな違いがない、気持ち、光見草の方が大きいかも?それくらいしか違いが無い。


月見草や、光見草は王都でも栽培されてる身近な薬草、普通のご家庭でも鉢植えで育てられてたりするくらいどこでも手に入るけれど、ちゃんとした錬金素材にする為には、凄く手がかかる。


ある程度、すり潰して混ぜ合わせたら窯の中に放り込む、この状態で寝かしている間に、次に入れる素材の下準備をする


トゲトゲした葉っぱが特徴で、数年に一度、運が良ければ花が咲く?っと言われている草のこれ、葉っぱ?だっけ?葉肉って本に書いてあるから葉っぱでいいか。

その部分を太い茎の根元から取り外して、緑の葉っぱの部分をそぐと、中から透明で粘着きのある肉が出てくる、これを取り出して刻んで窯の中に放り込む

緑の部分は使わないので乾燥させてから肥料にする。


このねばつく部分が直接肌に触れると人によっては痒くなるみたいだから、気を付けないといけない。

粘っている部分を洗い落とすと透明の葉肉が、痒くなくなってお肌にいい成分だけが残るので、王都の貴族の間ではお肌のケアに使われてたりする


そのねばりっけのある液体が、葉と肉を繋ぐ役目があって、成分がとても特殊でとある錬金物を作るのに必須

このねばりっけのおかげで、液体がどろりとしたまとまりをうみ、魔力回復促進剤の成分を安定させる。


緑の葉っぱの部分は肥料として、中にある透明の葉肉は魔力回復促進剤の材料として、中間にある粘性の液体は魔力回復促進剤、医療班に使われる。


さらに、みず、しんとう、式?医療班で使われる特殊な術式でも必要だから、大量に必要なので、こちらも畜産の旦那の元で大量に育てられている。


育てるのは、非常に簡単で、週に2回ほど水を上げれば、日当たりのいい場所であればスクスクと元気に育つ

これまた、王都の奥様達に育てるのが楽だからってことでよく育てられていて、株分けも、らくなので、色んな人がおすそ分けしてもらい育てている。

運よく花が咲けば、その花が貴重な薬の素材になるので高値で売れる、奥様達のお小遣い稼ぎにもなってたりする。


なお、こちらでは、その花を咲かせる法則を見つけ出したみたいで、毎年、花が咲いているから、貴重だとは思えない…


この特徴的で薬剤として優秀な草、名前の由来が不思議で面白い。

葉っぱが料理を作る時のヘラに似てるからヘラが由来、ヘラだけだと料理の方と、混同しちゃうのでヘラに棘が生えてるので”へ”に濁点を付けてベラって名前がつけられたってお母さんが教えてくれた。


そんな雑学を思い出しながら、作業を続けていく、時計を見ると、もう夜、ご飯どうしようかな?


ご飯の事を思い出した瞬間に私のお腹は正直に悲鳴をだして、栄養をよこせー!って我儘をいう。

しょうがない、面倒だけど防護服を脱いで食堂にでもいこーかなーっと思っていたら突如、部屋のドアが開き

「お仕事、ご苦労様です、食事の方をお持ちしましたよ」

愛する夫がご飯を持ってきてくれました。


服を脱ぐのが面倒なので、ご飯を食べさせてもらいました。


食事は何かって?ナッツと~とある虫を甘辛く炒めた、あるタイミングになると食堂に大量に並ぶこの街の風物詩、最初はうぇぇって思ったけれど、慣れると不思議と好んで食べるようになりました。


そう、ナッツと先ほどまで穿り出していた蜂の子を数日間ハチミツとお酒で漬け込んで、香辛料と一緒に炒めた料理。


ナッツと、蜂の子を、香草でクルリと巻いて食べるのが美味しい!見た目がアレだけど、見えなければ意外と、どうとでもなる!!!

夫に、食べやすいように一口サイズに包んでくれたのを大きく口を開けて食べさせてもらってます。美味しい!!


たまーにこれに燻製肉とか、酸っぱい果肉が入ってるときもある、どっちも美味しいから私は好きだけど、人によっては酸っぱい果肉はいらないかなぁっていう人もいる。


でも、残すと食堂のおばちゃんに睨まれるから残せない、残すくらいなら頼むな!って怒られちゃう、頼むなっていうけど、その日のメニューは、おばちゃんが決めてるから変更できない、一応、料理に使われる材料から派生できる料理がある時は複数の種類が用意されているけれど、この時期はほぼほぼ、これ関連のメニューになる。


食べたくない人は街に行って空いてるお食事処見つけて逃げ込む、虫が苦手な人も結構いてるので、そういう人は肉が食べたいなら女将のとこ、野菜が食べたいなら違うところ!って決めてる人が多いかな?


愛する夫も最初はこの料理が苦手だったけれど、私が食べてるのを見て、食べるようになりました。


後ね、この蜂の子って、お酒が好きな人は結構、好きな人が多くて、食堂のおばちゃんに頼むと特別に酒のつまみ用に味付けなどが調整された特別のつまみを出してくれる。


二人っきりで食事を楽しんでいるとドアがガラガラっと音を出したので誰か来たのかと視線を向けたら女将が両手いっぱいにお皿を持ってる、美味しそうな匂いがするから何か作って持ってきてくれたみたい


「ぉぉっと、新婚さんのお楽しみタイムだったかい?すまないねぇ、何か食べれるものって思って作ってきたんだがいらぬせっかいだったかねぇ?」

料理に乗せられてきたのは女将が好きなブーメランって呼ばれている肉の部分に骨を突き刺して作られたのが、トマホークブーメランだっけ?っていう香辛料たっぷりの料理

女将曰く、骨を突き刺して焼くことでうまみがますらしい、店では骨に余裕がある時に作る、無い時はそのまま焼く


ちなみに命名者は姫様。ブーメランに骨さして投げて帰ってきたらそれはもう、トマホーーーークブゥメラン!って姫様だけキャッキャ笑いながら命名してくれたって女将がいってたっけ?


ベテランさんが仰るには、外で食うときは骨が刺さっている、何故なら、骨の部分を手で掴んで食べるので食べやすいからであるって教えてくれたことがあるけど、真実は不明。

ちなみに、トマホークって部位もあるよって畜産の旦那が教えてくれた、あれは、人気の部位でお手頃価格だから主に王都騎士団に売れてるって

たまに、女将のお店でもトマホークステーキってのが出るけれど、本当に稀、出てきたらラッキーって感じ、味付けは全部同じ香辛料だから、違いが私にはわからないっていうと、残念そうな顔で夫に見つめられたことがある。


どうせなら女将が用意してくれたのも食べたい!

「そんなことないですよ~女将さんのお心遣い感謝感謝ですよー食べたい!」

「そうかい?無理はするんじゃねぇよ?」

私の言葉に嬉しそうに持ってきて料理を運んでくれる、私の状態では食べにくいので夫が食堂でナイフとフォークを取ってきてくれて食べやすいサイズにして食べさせてくれる、甲斐甲斐しく世話をする夫の姿を見て「優しいってのはいいけどねぇ、過保護すぎるんじゃないよ?」女将が釘を刺してくる


別にいいよね?私は甘えたい派だから~こうやって甘えさせてくれるのがいいのー!お父さんが厳しい人だから、その反動で甘えさせてくれる人が好きになっちゃったのかも?だから、いいよね?

お父さんだって、お母さんに甘々なのにね?どうして、私には厳しいのか、解せぬ。


夫も女将の言葉に「普段なら、ここまでは、しませんよ」にこやかに返事を返す

夫からすると女将は大先輩で尊敬する大人物、絶対に逆らえない。


夫の数少ない言葉に、女将は納得してくれたみたいで「よそ様の家庭に口だすものじゃねぇしな、ほどほどにしねぇとな」

立ち上がって部屋を出ようとドアに向かって歩いていくと、ドアが開き外から誰かが入ってくると同時に声を出す

「手伝いにきったよ~、、、あーそのー、、、お邪魔だったかも?」

姫様の元気な声が聞こえてきた、私が大きな口をあけてひな鳥のように食べさせてもらっているところだったから、姫様も言葉の終わりが、呟くような小さな声になっていた。


口の中が、幸せいっぱい肉汁一杯になっていて、直ぐに言葉が出せない、もぐもぐとゆっくりと噛んでいる間に

「いえいえ、お気になさらず、妻のことを心配してきてくださってありがとうございます」

夫が代わりに挨拶をしてくれる、その間も私はモグモグとお肉を口の中でしっかりと嚙む噛むはむはむ


その後は、皆で食事を楽しんだ後、手分けして作業をする、まさか、姫様も手伝ってくれるなんて思ってもいなかった


ハチの巣をさらに細かく粉砕するのは女将が握力で握りつぶしてくれるので早い、あの人は人間じゃない

洗浄する簡易的な道具を夫が持ってきてくれたので、夫が洗浄をしてくれる

姫様は手際よく窯に火を灯して、窯の中に入れた素材を適温で茹でながら、次々とベラを捌いてパーツごとに解体して分別していく、意外だと思われるかもしれないが、姫様は錬金も達人の域にいる、驚きの正確性で手早くこなしていく、苦手なのが力仕事だけ、性格以外は本当に完璧すぎてびっくりする


全員で黙々と作業をしていると姫様が自分の分が終わったのと同時に

「やることなくなった!おーさー、何か面白い話して!」

っぐ、こういうところが、苦手…


基本的に人と話をするのが苦手なのに…


姫様からの無茶ぶりにどうしようかと、作業の手をとめずに考えていると

「妻は、集中していますので、申し訳ありません」

夫が代わりに返事を返してくれる、たすかるー、最高の夫でうれしいな

「じゃぁ、代わりにおもしろい話し、してー!あ~つ~ぃ~」

防護服から上半身をだして汗だくの姫様が防護服から生まれ出る、あのー、愛する夫の目の前で下着姿になるのやめてもらってもいいですかー?っていうか風を送る機能ついて、ない、旧式の防護服だ。

見かねた女将がタオルで上半身を包むように包む


「あーそっかそっか、男居たわ」

キャッキャっと嬉しそうに笑っている、姫様ってちゃんと叱ってくれる人がいないと自由気まま過ぎる時がある

だんちょー、No2ー、おねがーい助けてー


「ほ~ら~、罰ゲームの一環だよー?話題が思いつかないのなら、えぐい質問だすよ?」

ほあ!?やばい、こういう時は本当にえぐい質問が飛んでくる!!

「月見草!!!これの話題でいいかな?恋バナだけどいいかな?いいよね!?」

手元にある月見草の花を乾燥させたやつを粉々にすり潰しながら、夫との思い出を話していく


あれは、何年前だっただろうか?


まだまだ、若くて…今も若いけど、今よりもっと若くて、この街に来て日が浅い時だった


今日みたいに、魔力回復促進剤を大量に生産するために必要な材料が足らなくて野生に咲いているのも必要になりそうな状況になってきたので、素材を採取しにいかないといけないと判断し、当時の責任者に進言すると、私独りで探しに行くのは危険だと言われ、夫であるティーチャー君が一緒に付き添ってくれることになった。


最初は、危険性が低い場所から探すことになり、壁からの内側のエリアを探索していたのだけれど、純粋な月見草を野生で見つけるのは本当に難しい、中間のやつは山ほど見つかるのだけれど、目当てのやつは見つからない、そもそも、野生で本当にあるのだろうか?


二人で静かに行動を続けていく、当時の私は、正直なところ夫が苦手だった

接してみてわかったのだけれど、この人は教養がある、貴族とは違った特殊な教養が節々から感じ取れる、瞳の奥に宿る奥深い闇を感じてしまった。


それに気が付いてからは、この人の傍にいるだけで身の危険を感じてしまう、何度か王族の人とお会いして話したことがあるからこそ、わかる、王族と何かしら関係のある人、しかも根っこの部分に


直感でもわかってしまう、この人は、王族の血筋だ…


向こうも私のことを警戒しているのか、無駄な話は一切しない、野営の準備もお互い一言も話さず黙々と設置し、何も会話せずに携帯食を食べて終わらせる。


こういった日々が過ぎていった


内側を隈なく探したけれど、一つも見つからなかった

諦めるのがいいのだろうけれど、姫様からは探してきて欲しいっと置手紙があるだけだった。


畜産の旦那さんにどうしたらいいのか相談をすると、壁の外側、つまり、死の大地に、可能性があると、とある場所があることを教えてもらう

壁を超えてから西に向かって歩いて森林エリアを超えた先にある、小さな洞窟の入り口が見えてくる、その中に月夜だけが差し込む不思議な場所がある洞窟が、あるらしい


過去の文献にその様に書かれているそうで、場所が記された地図も保存されている。

過去にこの街で働いていた薬師の方が命がけで見つけた場所で、いざという時はそこで月見草を採取していたらしい、その文献も100年以上も前のもので、今もその場所に洞窟があって、月見草が自生しているのかは、不明…


藁にも縋りたい状態なので、夫に相談すると何も言わずに頷いて、遠征の支度をしてくれた。


比較的、死の大地の中でも、安全なエリアとはいえ、死の大地の獣は油断すれば即死に繋がる。

自分の身を守るためにも、私も念入りに装備を整えていく、何度か死の大地に入ったことはあるから知っている、恐怖を。

あの大地は戦士じゃないと精神力が持たない、常に死に晒され続けるのは心が持たない。


何度か、入ったことはある、隠蔽部隊として、安全だとわかっていても、心が持たなかった。

今でも壁を超えて進むのは一歩目から恐怖する。


それを二人で行動する、相方は確かに強い、同期の中でも群を抜いて強いのは知っている、知っているけれど、粉砕姫や、ベテランさんと比べると…安心できない。


何名かご同行願えないか相談しよう、二人っきりだと怖い


もっと、事前に言えばよかったと思いながら集合時間になったので、集合場所に向かうと夫以外にも4名ほど重鎧を装着した人たちが大きなカバンを背負って待機していた、どうやら、手の空いている人達に頭を下げて協力を申し出たのだと、本来であれば私が頭を下げて頼むのが筋なのに、申し訳ない気持ちに包まれる。


全員に協力してくれるお礼を述べると「姫様の緊急指令なら俺たち全員の仕事だから」と、快く快諾してくれた。


その後は、私を含めて6名で慎重に進んでいく、森林エリアは立ち入ったことが無かった、噂には聞いていたが本当に怖かった

何処からでも獣の気配があって、何処にいても視線を感じて、常に急所が狙われているような感覚が付きまとう、怖すぎて怖すぎて手がずっと震えていた。

その時にずっと後ろに立ってくれていたのが夫


森林エリアの敵は後ろから不意打ちで襲いかかってくることが多く、後ろを警戒しないといけない

だからこそ、慣れていない私を守るためにずっと、危険な後ろを守ってくれていた。


森林エリアを抜けたころには、心労が限界に来てしまって、へたり込んでしまい、動けなくなった後もチーム全員に休憩を進言してくれて、森林エリアから少し離れた場所で野営の準備をしてくれるのだけど、死の大地は下手に従来の方法で野営の準備をするわけではない

夫が予め、周りの戦士の人達にこうして欲しいと伝えていたのか、何も言わずに私を囲むように背を向けて四方を固めてくれた


一人は立って周りを警戒してくれている


こんな要人みたいに警護してくれるとは思っていなかったので、皆さんには申し訳ないけれど心から休めることが出来ました。


その間、夫は一睡もせずに周りを警戒してくれていて、私が寝ている間に手早く獣を見つけ次第、討伐していて目を覚ました時に解体されて土に埋められていく獣の死骸を見て驚いた。


私が目を覚まして動けるようになったので、私の歩幅に合わせてくれて、辛くないように気を使われながら進んでいく。


あんな無口で不愛想なのに、王族の血筋なのに、どうしてここまで気配りが出来て、相手のことを思いやれるのだろうかと徐々に気になってきてしまい、自然と、夫の事を目で追っていた。


襲い掛かってくる敵を手際よくチームと連携を取って普段からの練武が生かされていて、いともたやすく仕留め、道中を危なげなく進んでいく


後日、この話をメンバーの人に聞くと、あれくらいであれば、あの人であれば後れを取ることはない相手だと教えてもらった。


だけど、その時の私からすれば、敵は恐怖の対象。今でこそ、目の前にしても、しっかりと動けるが当時の私では直ぐに動き出せない、すくんでしまっている。

敵を一目見た瞬間から恐怖で足が震えていた、その恐怖の対象を颯爽と仕留めて、さも当然、といわんばかりに処理していく姿に私の胸が高鳴ったようにかんじた。

確かに、高鳴った、鼓動が早くなるのを感じたのだけれど、当時の私はその鼓動が恐怖だと思っていた、だって、先ほどまで静かだった胸の鼓動が早くなっていくのを当時の私は、この鼓動は恐怖心からだと思い込むようにしていた、誰かを見て胸が高鳴るなんて、置かれている現状から考えれるとそんなことを考えるなんて非常識すぎる、だから、認める気にはなれなかった。


私はどこぞの恋愛馬鹿とは違う、理知的で利口だもの、恋愛感情で動く人間じゃない、どちらかと言えば鋭い時の姫様や、敵に回したときのNo2寄りの人間だと思っている。


なので、先ほどの現象は、こんな出来事があったのだと、思考の端に寄せていき、小さく小さく折りたたんで浮き上がってこないようにする、冷静に考える。

今考えることは五体満足で月見草を手に入れて戻ること。


地図に載っている場所に到着すると、まだ、洞窟があった。

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