表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最前線  作者: TF
100/700

人類生存圏を創造する 始祖様の秘術をここに 2

東の果てに向かって長い長い移動の最中でも、車の中では、常にいろいろな音が鳴り響き車内は騒然としている。

飛び交う言葉に通信の合図のベルが鳴る、姫様の顔は、真っ青のまま、気力だけであちこちに指示を飛ばし続ける


このままでは、目的地に到着する前に、姫様が倒れてしまいかねない、そうなってしまうと壁を創るどころじゃない、私でも出来る可能性はあるけれど、正直に言うと姫様ほどのスピードは絶対に出せない、自信が無い。

西に向かったチームは術士6名による分担作業となり、こっちも分担作業になるのだろうけれど、主に姫様独りで6名分の術式制御を行う。

時間をかけていいのであれば、私独りでも出来ると思う、けれども、時間的猶予は無い。


少しでも早く壁を設置して南か、北、その何方かの敵を徹底的に倒して安全を確保してから、もう片方への応援に走らないといけない。

姫様が両方の作戦の要であり、壁を創る際に必須、なので、今私が出来る限りのサポートをする、額から流れ出る汗を拭い、砦の皆様から栄養を補給するために持たされた日持ちしないフルーツを、細かく切っては姫様の口の中に放り込む、少しでも水分や栄養を取らないと本気で倒れかねない。


私自身の体の中に廻る魔力がある程度、溜まってくると姫様に注ぐ、自分の限界をとうに超えているのではと思うけれど、不思議と魔力を工面できている。


ある程度、余力が生まれては姫様に注ぐ、汗を拭う、口の中に水や食べ物を放り込む

女将からもなにか手伝えることが無いかと聞かれるが、移動中の間は特にすることがないので、大丈夫だよっと言うと、座って意識を集中させ始める


きっと、魔力を練るっという修業に時間を割くことにしたのだろう、女将は魔力の操作が苦手だと自身の口からもきいたことがある。

きっと前線に戻る際に魔力の操作が戦闘の要になると思っているのだろう、女将の年齢で肉体的部分を強化するのは、はっきり言って難しい、今の肉体美をキープするだけでも相当苦労していると考えられるのにそれ以上となると肉体のピークを過ぎた女将の体ではほぼ不可能だと思う。

だけれど、普段からのたゆまぬ努力があるからこそ、天性の肉体を維持し続けることが出来ているのだろうと推察される


そんな努力の塊のような人が、苦手を克服するために努力をし、肉体的ピークが過ぎたとしても絶対に足手まといにならないようにと、研鑽していく


そう、それでいいの、お互いが、今できることを考えて実行すればいいだけ、女将は戦士として、私は医療として、姫様を支えればいいの

だから、今は、することがなくても、きっと何処かで女将の出番は来る、それに備えてもらえればいい。


不安要素が一つある、ここに女将専用の武器が無い、女将なら専用の武器が無くても、並大抵の獣だったら素手でも問題なく戦える、一部の獣以外の相手であれば、首を圧し折ることなんて造作もない。

問題があるとすれば、人型や、素手では対処できない特殊な獣とがこちらに流れてこないことを祈るだけ


すこしだけ一息付けたと思っていたらすぐに通信機から声が流れてくる、これが小粋な音楽だったらどれだけ救われるか、この蓄音機から流れてくるメロディは破滅への調べのような気がしてくる


「姫さん!人型です!助言をお願いします、毒を抜けてきました!飛んできたと思いきや、直ぐに動かないで此方の様子を伺っています、あ、大きく跳躍したそうです」

休憩する隙すらない、一番相手にしたくない相手である、南の砦で人型が出てきたみたい、正直、聞きたくない単語がこうも早くに出てくるとは…

跳躍したという単語を聞いて直ぐに発した言葉が

「敵の着地と同時に槍を投げて直ぐに離れてください自爆タイプの可能性が高いです」「聞いていたな!」

直ぐに返事が返ってきたと思ったらベルが三回鳴ると直ぐにメイドちゃんの声が車内に響き渡る

「姫様ー!人型ですー!魔道具持ちですー!」「魔道具の判定急いで!」「はいー!」

こんなにも、目まぐるしく戦況が動く状況で、私達は本当に壁を創ることが出来るのだろうか?という不安も沸いて出てくる


近衛騎士に所属している術士の数も足りていない、車に乗れる人数にも限りがあるし、王国から派遣されてくる一団が到着次第こちらにも応援を寄こしてくれるはずだけど、現状では東エリアに壁を創るのが姫様のみが担当することになっている。私がもっともっと、術式への理解度が高く、魔力を制御する術が長けていればよかったのだけれど、私では姫様ほどの理解力には遠く及ばない…


自身の勉強不足に後悔していると音が鳴る


ベルが三回鳴る「炎を辺り一面に出してます!見た目は筋肉タイプです」

「よかった、組み合わせ最悪じゃない!長期戦に持ち込んで!人型が居ない箇所を担当している人達から何人か人員を裂いて敵の魔力が枯渇するまでちょっかいをかけ続けて!炎の規模はどの程度?」「確認します!!」通信するための魔道具から音が聞こえなくなったと思ったらすぐに違う人の声が聞こえてくる


「助言感謝します!着地と同時に四方から投げた槍によって敵の動きが止まった瞬間に大爆発しました!誤算があるとすれば毒に侵されていた個体みたいで、辺り一面に爆発同時に毒をまかれました!毒に侵されたメンバーを即座に退避させます、解毒方法は?」人型自爆タイプだからこそ、出来る最悪の一手、どうせ毒で死ぬのなら爆発して毒をまき散らせば人も死ぬだろうってことね…

「解毒の手順は紙に書いて衛生兵に持たせていますし、此方側で用意した血液に投与するタイプの薬を持たせていますので直接毒に触れた人が居ればすぐに投与してください!血液が凝固する前に急いで!」「ぇ!?あ、聞いていたな対処急げー」


はぁはぁと肩で息をする姫様の汗を拭い「大丈夫?」と声を掛けるとこくりと頷いてはくれるけれど、限界が近そうな気がする。

恐らく、常に思考を加速させている可能性が高い、少ない情報からすぐにでも次の一手を考えて相手よりも一手先を進むようにしないと、多大な犠牲が生まれてしまうから。

今の状況で何処かが崩れたらその部分から一気にしわ寄せがきて瓦解する、それ程までに危険な状況。


姫様に魔力回復促進剤を飲ませ、直ぐに口直し用のドリンクを飲ますとベルが三回鳴る

「炎の規模は、私達が術譜で使うときに発生する火の100倍ほどで、火炎瓶を投げた場合の5倍ほどです!!って、長がいってます!!」これが、魔力特化タイプだったらその程度ではすまない

「大した規模じゃないってことは持たされた魔道具との相性は最悪みたいね!形は?魔道具はどんな形?」出力する道具の種類によって敵が使う攻撃の手段が変わる

「確認しますー!ぁ、長と変わりますー!」

「形は指輪タイプ、指定の場所に火柱を出すタイプよ!姫様!」指輪タイプであれば、魔力を流してから発動するタイプなので応用力が低い!相性も最悪!

「設置指定タイプね!術譜を使ってありったけの水を空中に巻いて!その上に土を生み出す術譜を起動させて水の上に出して、それで火の勢いを殺し続けて!人型のタイプは?断定できそう?」

「筋骨隆々接近戦タイプです!」うん!敵が使っている魔道具と相性最悪!指輪型で超接近戦タイプだと、殴ってこない!殴った衝撃で自身が所持している指輪型魔道具が壊れるから!

「最高じゃない、魔力はタンク型に比べたらすぐに枯渇するだろうから、それまで最低限の動きで敵の動きを制限して!接近戦に耐えれる人を向かわせて!」

「ベテランさんが今向かってます!!」

「騎士部隊が全力で敵の足止めをして!絶対に一対一で戦わないようにして!わかってると思うけれど命大事に!!」

「はい!メイドちゃん!騎士部隊に繋いで!!」「やってます!」

長も身重なのに、まだ安定期に入っていないのに無理をさせてしまっている、神様お願いです、彼女の子をお守りください。


ふぅっと一息ついて辛そうにしていると

「やっぱり、あたいが街に戻っていたほうが良かったんじゃないかねぇ?」女将が不安そうに言葉を漏らしている


そう、女将があの街にいたら戦力としては申し分ない

「だめよ、女将は…非戦闘員でしょ?ここに一緒に来たからこそ決意表明を聞けた、だからこそ、今は戦士として扱うけれど、それを聞くまでは絶対に表に出させないから、ね?だから、今ここに居るのは必然なの、街に置いてきてたら、私は絶対に貴女に出撃のサインなんてださないんだから、今は、この先に待ち受ける闘いに備えて、きっと…女将の力が必要になるから」

意識を保つのも辛いみたいで、言葉がしどろもどろになっているし、言葉の内容が綺麗に並べられていない。限界が近いかもしれない


少しでも横になって休んでもらおうと姫様に声を掛けようとするとベルが三回鳴る「新しい人型ですー!」声を出すのも辛そうな姫様に代わって

「タイプは!」「ぇ、あ、はい、確認してますー!長が言うには見た目は細いタイプです」

見た目が細いタイプ?それだけじゃ何かわからない…

「動きは速いかい?」「ぁ、ぇ、はい!速いです」

「腕の長さはどうだい?」「長いですー」

「得物は持ってるかい?」「もってないですー」

「なら、騎士の人達でも対処はできるさぁねぇ、戦士部隊が到着するまで命がけで対処しな!」「うぁ、はい!!」

手早く指揮を出す辺り、流石は歴戦の猛者だけれど…ごり押し力押し、気合頼みのような昔ながらの作戦だね。

通信が終わったので、女将に「どのタイプがわかったの?」聞いてみると

「ぁぁ、昔に戦ったことがあるさぁねぇ、腕が長くて懐に入りにくくて自身の腕を鞭のようにしならせたり、殴ってきたり直接的な攻撃がメインのやつさ、得物をもっていない、そりゃー大した敵じゃぁ、ないねぇ」にやりと笑みを浮かべている、驚異的な敵ではないのだろうが、


それって、女将基準じゃないの?

確認しよう

「それって女将基準で敵は雑魚ってこと?」疑問を口に出すと首を横に振り

「あたいじゃなくても、あいつじゃなくても、何も問題のない相手さ、時間はかかるが今の騎士部隊なら戦士部隊が到着するまで余裕で持ちこたえれるさぁね、場合によっては、騎士部隊でも倒せてる相手だよ、欲をかいて変な動きをしない限り無難に立ち回れるさ」

そう、ならよかった、ベテランさんが言うにはこの街が出来てから、全ての歴史の中で今が、一番で最高水準だと言っていた。

過去の歴史から見ても、戦士と騎士がここまで数がそろうことはなく、その全てにおいて練度も能力も高水準で連携力も高い、あの時にこれだけの戦力があればって呟いていたのを何度も聞いている、だからきっと大丈夫。


私達の言葉のやり取りを聞いていた姫様が口を挟んでこないのを見る限り、本当に限界みたいなので横になってもらう。

溢れ出る汗を拭くために女将に協力してもらって、服を脱がせて全身の汗を拭きとる、ここは冷えるからね、あの街に比べると…


姫様がすうすぅっと綺麗な寝息を立てている間は、特に大きな出来事が無く姫様を休ませれることが出来たのが非常に運が良かったと感じる。

報告で上がってきたのが、先ほどの手の長いタイプは戦士部隊と交戦開始し、何とか仕留めることが出来たそうで、過去にあのタイプと戦ったことがある猛者が運よくいたのが幸いした、後は、その人を主軸にして連携し討伐に成功、多少の損害で仕留め切れた


女将曰く、あの手のタイプは得物を持っている時が一番厄介で得物が無ければただの猿さぁねっとのこと


魔道具を使って火を放ち続ける人型の戦況報告、魔力がまだまだ尽きる様子が無く長期戦になりそうだと報告があがっている

姫様も枯渇するとは言っても、基本的に魔道具もちの人型は長期戦になることが多いし、筋骨隆々タイプは魔力が尽きてからが本番だもの。

問題があるとすれば、その間に他の場所でも人型が出現することで、騎士部隊が対処できない凶悪なタイプと遭遇した時が怖い。


女将と交代で休憩を取りながらも警戒を緩めない、運転をしているのは戦乙女ちゃん達も、時折交代しながら、運転している。


東の果てまでどれくらいの日数が必要なのかは知らない、今の状況だと早く着いたほうがいいのか、姫様の体力が回復するためにも遅く着いたほうがいいのか、私では判断が出来ない。今私が出来ることは少しでも魔力を回復させて姫様に注ぎ続けるだけ、なので、私も魔力回復促進剤を飲む、一度に二本同時に飲む


一度に大量に飲むのは良くないとNo2に教わっているので、まずは2本から、3本は流石に怖いので、まずは2本からで試していく。

こんな時が来るのだと知っていれば、何本飲んだら体に悪影響が出るのか、自分の体で実験しておけばよかったと後悔する。


出る前に2本飲んでせいもあってか、体が熱を帯びているような感じがするし、右側の肺の下あたりがきゅううっと締め付けられる様な感覚がするし、心臓の鼓動が激しく感じる時がある、いま、血圧を測ると絶対に高い気がする…


それなのに、指先が冷えているような矛盾した感覚もある、体の中心が熱いくせに末端が冷えている感じがするなんて、矛盾にもほどがある…

姫様も限界が近いように、恐らく、私の体も限界が近いのだろう、こんなにも連続して魔力を消費し続けたことなんて一度も経験したことがないし、魔力回復促進剤をこんなにも飲み続けてきたことがない、魔力を精製する臓器が悲鳴を上げているのかもしれない…


…お父さん、私もきっと長生きできない気がする


じゃない!何弱気になってんのよ!ぁーもうこれ、最悪!魔力枯渇症状じゃないの!すぐにネガティブ思考になるー!ほんっと厄介!!あーもうダメダメ!少しでも意識を逸らす為にも横になりながら魔力を練ろう、徹底的に魔力を練って貯蔵しよう!!

感想、評価、いいね、Xのフォローよろしくお願いします。

感想は一言でも問題ありません、Xでの感想も受け付けておりますのでお気軽に。

些細な反応でも励みになりますので、よろしくお願いいたします。


▼作者のXのURLはこちら

https://twitter.com/TF_Gatf

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ