秘密は
それからお互い今どうしているのかの話になった。武原先生は塾を辞めてから大学に戻り教育学の研究室に勤務しているとの事だった。
「私、ちょっとだけ『キナばあばのマゴ』さんに言いたい事あってきたの。」
俺のアカウント名を出して武原先生はいたずらっぽく笑った。
「レインボーうさうさ、私が考案したゆみうさちゃんに似てるんだけど。私のSNSのアカウント今は『和三盆タコ』で前は『弓タコ』なの。その時編み図も公開していたわ。フォロワーにいたでしょ。」
びっくりした。今もフォロワーさんでいてくれたことに。そして感動が走った。やはり弓タコさんだったことに。
「弓タコさんも和三盆タコさんも知ってます。レインボーうさうさはゆみうさちゃんが原案です。了解得なくてすみません。」
ガバッと頭を下げた。
「まあ、私にしか分からない事だろうけど。本当は、文句じゃなくて、可愛いくして新しいうさぎにしてくれて有難うって言いたかったの。」
顔をあげると優しい笑みが目に入った。その笑みと言葉に甘えてもう一歩踏み込んだ。
「そう言って下さると助かります。実は弓タコさんに発見して欲しかったんです。」
すると今度は眉をひそめて聞いてきた。
「あのさ、もしかして、長谷川くん、私と弓タコが同一人物だって高校生の頃知ってた?」
「そうじゃないかとは。作品を身につけてらしたので。」
頷くと武原先生は顔を両手で覆って机に伏せ
「うわ〜恥ずかしい。あの時彼氏と別れて愚痴を。何もかも嫌になって仕事も変えて、アカウントも消去して。人生のどん底を可愛い生徒に知られてた!!まさかの再会!!寂しい独り身になんという試練!!」
ジタバタしていてとても可愛らしかった。思わず顔を覆っている彼女の手首をそっと掴むと、びっくりした顔を覗かせてくれたので、
「武原先生は俺の初恋でした。これからも会いたいです。」
そう告げた。俺の秘密の初恋はやっと秘密じゃなくなったのだ。
fin
この先は読書様のご想像にお任せします。最後まで読んで下さり有難うございました。