84、 もう少し
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
実家から帰って夕飯の準備をする。
今日は智はちょっと遅いらしい。
「…ずっと一緒にいたいからちゃんと言わないと」
サラダを盛り付けながら小さく呟いた。
智が帰ってきたのは22時。
「ただいまぁー…」
「おかえりなさい」
玄関に行くとすぐに抱きしめられる。
これが日課になりそうだ。
「あー…疲れた」
「今日もお疲れ様。ご飯にする?お風呂にする?」
「…そこで蓮華にする?はないの?」
ニコニコな智。私は自分の顔が熱くなるのがわかる。
「ない!!」
グイッと体を離してキッチンに駆け込む。
智がクスクス笑いながらリビングに入ってくる。
「今日もいい匂いだなー」
「すぐに食べれるけど、どうする?」
「うん、ご飯先に食べる」
後ろから抱きつかれる。
ふわっと智の香水の香りがする。
「じゃあ着替えてきたら?」
「そうする」
部屋着に着替えに行くのを見届けておかずを盛り付けた。
テーブルに料理が並ぶと智も戻ってきた。
「今日は肉豆腐だ」
「久しぶりだからちょっと不安だけど」
「大丈夫、蓮華のご飯は全部美味しいから」
いただきまーすと手を合わせて食べ始める智。
「うん!うまい!」
モグモグしながらそう言ってくれる顔がなんだか可愛くてクスッと笑ってしまう。
「ありがとう」
誰かに食べてもらうのはやっぱり嬉しいし、それが智だとより嬉しい。
しばらくはご飯を食べていたけど、智が思い出したような顔をした。
「あのさ…同棲の件、どうかな?」
ちょっと控えめに聞いてくるその顔は期待してるのがわかる。
「…あのね」
蓮華と週末を過ごした月曜日。
今日はハルくんと雑誌の取材。
その後は次の仕事まで時間もあったので2人でお昼を食べにきた。
個室もある御用達のお店。
「どうしたの?なんか元気ないじゃん」
ハルくんが向かい側に座りながら聞いてくる。
俺は小さくため息。
「あーうん。ちょっと」
「なんで?週末は楽しかったんじゃないの?」
「楽しかったよ?これが毎週って思うと頑張れるぐらい」
付き合い始めて決めたのは毎週末蓮華が泊まりにくること。
俺が休みの日に蓮華の家に行くことも提案したけど、却下された。
部屋が狭いし、ゆっくりしてもらえないからとのこと。
蓮華の家に行くとめっちゃのんびりしてるのに。
「幸せな週末じゃん」
「そうなんだけどー」
話をしながらタッチパネルで蕎麦とミニ天丼セットを注文する。
ハルくんはカツ丼。
「なんだけど?」
「…同棲を断られた」
そう言うとハルくんは飲んでたお冷を吹き出しそうになった。
「は?」
「ずっと一緒にいたいし、蓮華も部屋の更新だからどうかなって思って言ったんだ」
「で、断られたって?」
「うん」
昨日、蓮華が申し訳なさそうにしてた。
『…あのね、同棲はもうちょっと後でもいいかな?』
『…え?』
俺は断られるなんて思ってなかったから血の気が引いた。
『な、なんで?俺のこと嫌いになった?』
『そんな訳ないじゃない!!大好き…だもん』
ハッとした蓮華は恥ずかしかったのか顔が真っ赤で声が小さくなる。
可愛いなぁ。
『じゃあなんで?』
『智とまた付き合えるのも嬉しいし、一緒にいたいのは同じなんだけど…』
『けど?』
モジモジする蓮華。
『こういうお泊まりとか、会えないけど電話とか、もっとしたいなって…』
『それは…わかるかも』
『それに』
『それに?』
『智と一緒にいるのはまだ落ち着かないというか…ドキドキしちゃうから』
さらに顔を赤くする蓮華に俺は可愛すぎて同棲の先延ばしをOKした。
「ってことがあって」
話終えるとちょうど料理が届いた。
「いただきまーす」
「いただきます…て、智くん、今のは惚気ってことでいい?」
ずずっと蕎麦を食べていたらそんなことを言われた。
「ふぇ?のほへ?(へ?惚気?)」
「…心配した時間、返してほしい」
大きなため息をついたハルくん。
俺が言葉の意味がわからずにしてるとハルくんに呆れられた。
もう少し”会えた時の嬉しさ”を味わいたいです。
結局惚気になってしまう智くん。
ハルくんは心配して損した、と思ってます。
同棲については先延ばしすることに。
まだまだ距離感ある恋人を楽しみたい蓮華さんでした。(可愛い)
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