83、 お互い大人なんだから
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
智と付き合い始めて1週間。
金曜の夜から日曜の夕方まで智の家でお泊まり。
いつもは正面の出入り口からマンションに入っていたけど、教えてもらった裏口から入ることに。
「えっと、カギ…」
もらった合鍵で中に入るとひんやりとした空調が体を冷やしてくれる。
「涼しー」
そのままエレベータに乗って部屋に向かう。
部屋に入るとちょっと散らかっていた。
「忙しいんだ…」
簡単に片付けて、私も部屋着に着替えて夕飯の用意をする。
いつもと違う広いキッチンだから作るのも楽しい。
そんなことを思っていたら玄関から物音がした。
玄関に行くと靴を脱ぐ智がいた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
顔を上げた智は疲れた顔。
そのまま抱きしめられる。
「あー…蓮華だぁ」
「そうだよ?お疲れ様」
背中をポンポンッとすると更に抱きしめられる。
「ちょ、智苦しい」
「充電ー」
甘えた感じもかわいい、なんて思ってしまった。
しばらく充電されて、リビングに戻る。
「あー、いい匂い」
「あとよそうだけだから着替えてきたら?」
「そうする」
そんなやりとりを幸せだな、と思うと同時にどこか不安になった。
次の日。
智を見送ってから実家に日帰り。
「ただいまー」
「おかえり。お昼もうすぐよ」
「ありがとう」
【母さん、相談があるんだけど明日帰っていい?】
昨日の昼間にそう送ると【男たちは追い出すわね】と返信が来た。
うちはみんな母さんには敵わない。
「今日のお昼はー?」
「ナポリタン」
「母さんのナポリタン好きー」
荷物を置いて手を洗って手伝う。
できたナポリタンとサラダを食べながら他愛のない会話をする。
「それで、相談って?」
母さんに聞かれて手を止める。
「…あのね、智と結婚を前提に付き合うことにしたの」
「あら!」
嬉しそうな母さん。智のこと気に入ってたもんね。
「良かったじゃない!おめでとう!」
「うん、ありがとう。でね、同棲しないかって言われてて」
そう言うと母さんは驚いた声を上げる。
「え、もう?」
「うん…今までみたいに離れてるのが嫌なんだって」
この半年間にあったことを説明する。
「そういえば、啓太がそんなこと言ってたっけ」
「え?啓太から聞いてるの?」
「ええ。あ、お父さんには話してないわよ」
苦笑する母さん。
「蓮華から何も連絡ないし、変にこっちから連絡してもって思って何もしなかったんだけど」
「うん、それで大丈夫。ありがとう」
ナポリタンをフォークに巻きながら同棲しようと言われた時を思い出す。
「…一緒に住もうって言われた時はちゃんと嬉しかったんだよ」
「うん」
「でも…こんなに幸せすぎていいのかなって。いきなり色んなことが変わりすぎるのが…怖くて」
高校生の時、智に振られた次の日から何もやる気が起きなくて
2年の終わりには転校したことを先生から告げられた。
それから周りはいろんな憶測や噂をして正直生きた心地はしなかった。
「…あの時と違っていい方向に変わってるけど、でもやっぱり大丈夫かなって」
カチャッと食器の音が響く。
「蓮華はどうしたいの?」
母さんに聞かれて顔を上げる。
その顔は優しい、安心する顔。
「…そりゃ、ずっと一緒にいたいし、同棲は嬉しいけど」
「けど?」
「…もうちょっと落ち着いてからというか」
智と一緒にいれるのは本当に嬉しい。
けど、やっぱりまだドキドキすることの方が多い。
「…もうちょっと気持ちの準備期間が欲しい、かも」
そう言うと母さんはクスッと笑う。
「そしたらそれを正直に話したら?」
「え?」
「蓮華がそれを言って納得しないような男なのかしら、智くんって」
聞かれて私は立ち上がる。
「それはない!!智は優しいし、いつも私のこと優先してくれてる!」
「でしょ?だから正直に話しても大丈夫でしょ?」
ふふっと笑う母さん。
私はキョトンッとしてしまう。
「…確かに」
「蓮華は考えすぎなのよ。お互い大人になったんだし、2人なら話し合いすれば大丈夫よ」
椅子に座って母さんを見つめる。
「今は”ずっと一緒にいれる未来”を楽しみに準備する期間でいいじゃない」
母さんの言葉に小さく頷いた。
どこか感じていた不安はいつの間にか無くなっていた。
蓮華さんは不安や心配事があると蓮華ママに相談する娘なのです。
ママさんからしたら可愛くてしょうがない娘なのです。
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