75、 キミはこんな思いをしてたのか
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
【姉ちゃん!SNSがヤバいことになってる!!】
啓太からそう連絡が来て覚悟はしていたけど、予想以上だ。
社内では常に視線を感じるし、ヒソヒソ話されてるのも聞こえる。
高校の時は失恋もあってすごく気にしてたことを思い出す。
「中倉いいか?」
滝に声をかけられて付いていくとMTGルームに入った。
「なんでこんなとこ」
「聞かれたら面倒だろ。お前、大丈夫か?」
「え?まぁ、気になりはするけど全然平気」
ため息をつく滝。高校の時の私を知ってるから心配してくれてるのだろう。
気にかけてくれるのはありがたい。
「嫌がらせとかは?」
「今の所は無いかな」
「そうか、ならよかった」
安心したのか、椅子にもたれかかる滝。
「心配してくれてありがとう」
「そりゃーしますよ。あん時のお前を知ってたら余計だ」
「そっか」
椅子にもたれかかるとキィッと音が響く。
「…あっちはこういうことが起こると、いつもこんな感じなんだろうね」
「あん?」
「私は社内ぐらいだけど、外歩いてもこう言う感じなんだろうなって」
「…そうだな」
「…大変だ」
ポツリと呟くと滝は何も言わずにいてくれた。
数日経過して、まだまだヒソヒソされたりするけど初日よりはマシな気がする。
「…あれ?」
昼休憩が終わってデスクに戻ると、午後の会議で使う資料が置かれていた。
そこまではいつも通りだからいいけど、なんかデスクが少し散らかってる気がする。
基本的に休憩前はデスクに書類やペンは置かず、PCもスリープにしてる。
けど、今は片付けたペンやらメモ帳やらが出てる。
「…」
これは、なんか探された?
気のせいであってほしいと思いつつ仕事を始めた。
そこからは気のせいであってほしいと思っていたことは確信になることが続く。
デスクを離れて戻ると離れる前と配置が変わっていたり、バックを入れている引き出しを開けようとした形跡もあったりする。
引き出しは常に鍵をかけるようにしたからから大丈夫だったけど。
トイレに行くと普通に聞こえる声で「なんで?」って言われる。
「ここまで来るとちょっと考えなきゃいけないと思って」
滝と由里香の家で同期飲みをしている時に3人に相談した。
3人とも驚きを通り越して引いてる。
「マジでそんなことしてるやついんのかよ」
雨宮がすごい顔で聞いてくる。
「蓮華、本当に大丈夫?無理してない?」
由里香が泣きそうになりがなら手を握ってくれる。
苦笑しながら頷く。
「ありがとう。なんとか大丈夫。仕事に支障出てきたら困るなって思うけど」
「そうなったら部長に即報告だ」
滝が怒ったように言う。
「そうなったらさすがにすぐに言うわよ」
「蓮華、お昼は絶対に私と一緒にいようね」
「前からそうじゃない」
苦笑すると由里香はそれでも!と抱きついてきた。
「で、お相手は何か言ってきてるのか?」
雨宮の言葉に頷く。
「迷惑かけてごめんって」
「まーそうか。謝るしかできないよな」
ビールを飲みながら呟く雨宮。
「俺にも連絡きたぞ。中倉のこと頼むって」
「近くにいれないもんね」
滝と由里香の言葉に雨宮ちょっと考え込んでいた。
「雨宮?」
「いや、芸能人って華やかで俺たちが食べられないような高級品も食べたりするじゃん?」
「まぁ」
「でも、いざとなったら大事な人のそばにいれないことも多いんだなって思って」
その言葉にちょっとツキンッと胸が痛む気がした。
「それを覚悟で仕事してるだろ」
「そうだとは思うけどな」
男性陣の会話を聞きながら最近のことを思い出す。
外を歩いても誰かに見られたり、週刊誌のカメラマンがいるかもしれない、
社内ではヒソヒソされたり、デスクを荒らされたり。
今日だって、誰に聞かれる、見られるかわからないから2人の家での飲み会。
「蓮華?どうしたの?」
由里香に声をかけられてハッとする。
「あ、ごめん、ぼーっとしてた」
「大丈夫?」
心配そうに見てくる由里香に小さく笑う。
「うん、大丈夫。ただ」
「ただ?」
「智はいつもこういう思いしてるんだなって」
私は今回、週刊誌に出たからこうなってるけど、芸能人である智は常に見られてる。
しかも人気アイドルグループだから余計に。
「…そんな中で会いにきてくれてたんだなって思って」
そう思うと感謝でしかない。
「それだけ蓮華に会いたかったんだよ」
由里香の言葉に私は苦笑した。
初めてキミの大変さをちゃんと理解できた気がする。
蓮華さんの日常もちょっとずつ変化しています。
でも今は智くんや同期3人がいてくれるので頑張れる蓮華さん。
特に連司はブチ切れ案件です。
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