58、 気を許せるのは…
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本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
1月3日、智のマンションの前まで来て見上げる。
「…相変わらず凄いわね」
自分には縁遠いタワマン。
やっぱり世界が違うんだなと思ってしまう。
エントランスで部屋番号を呼び出してオートロックを開けてもらう。
エレベーターホールでも同じく。
エレベーターに乗って智の部屋の階数を押して上がっていく。
智の部屋に着いてインターフォンを鳴らすとすぐに出てきてくれた。
「いらっしゃい」
「おじゃまします。あけましておめでとうございます」
頭を下げると智はキョトンとしてクスッと笑った。
「あけましておめでとうございます」
2人でクスクス笑う。智は荷物を持ってくれた。
「あ、ありがとう」
「こちらこそ。来てくれてありがとう」
靴を脱いでリビングに入る。
「コートとマフラー、預かるよ」
「ありがとう」
コートとマフラーを取って智に渡す。
リビングのローテーブルには美味しそうなおせちが並んでる。
「美味しそう」
「母さんが持たせてくれたんだ。蓮華とご飯するって言ったら」
「え、おばちゃんも?」
「も?」
智が不思議そうな顔をする。
私は持ってきた紙袋からタッパーをいくつか出す。
「うちも母さんが智にって」
タッパーを開けると筑前煮とほうれん草の胡麻和えと大根と手羽先の煮付け。
「うわ、うまそう!おばちゃんの煮物好きなんだよね」
「昔、智がおかわりしてくれたのが嬉しかったって言いながら作ってたよ」
クスクス笑うと智はジッと煮物を見る。
「…おばちゃんに言ったんだ?俺と会うって」
「え?うん」
「…怒って、なかった?」
不安そうな智の顔に私は苦笑する。
きっとフったのにって怒られると思ったのだろう。
「全然。智が活躍してるのが嬉しいって言ってた」
「そっか…」
「お皿、借りるね!温めるから一緒に食べよう」
キッチンに入って持ってきた料理を温めた。
料理を並べて座ると智がビールが入ったグラスを渡してくれる。
「じゃあ乾杯」
「乾杯。智、年末のお仕事お疲れ様」
「ありがとう」
カチンッとグラスを合わせて一口飲む。
ふんわりとゆずの香り。
「美味しい」
「誕生日の時のレモン、美味しいって言ってたから取り寄せた」
「わざわざ?ありがとう」
「全然」
智は母さんの筑前煮を食べる。
「んーまー!」
「伝えとくね。智の家のおせちも美味しい」
智のお母さんは料理上手。特に和食が得意だから智も和食が好きになったらしい。
特にふわふわの伊達巻きが程よい甘さで最高だ。
「懐かしいなぁ。初詣行った後に智のお家おじゃましておせちとお雑煮ご馳走になったっけ」
「そうだね」
「また食べれて嬉しい」
ふふっと笑って黒豆を食べる。
「俺も。…ちゃんと会えるようになったら謝らないと」
「え?」
「蓮華、傷つけたから」
「…」
悲しそうな智に私は何も言えない。
「…お父さんには怒られるかもね」
「殴られるの覚悟しとく」
2人で苦笑しておせちを食べた。
おせちと持ってきた料理をある程度食べて一休み。
「蓮華、日本酒もあるけど飲む?」
「飲んでみようかな」
最近、日本酒も飲めるようになってきた。
確実に滝の影響だけど。
「はい」
「ありがとう。乾杯」
お猪口を合わせてちょっと飲む。
智が持ってきた日本酒は微炭酸で飲みやすい。
「美味しい」
「よかった」
飲みやすい日本酒だったので、スイスイ飲んでしまう。
チェイサーのお水も飲んでるけど、ちょっとポヤポヤしてきた。
なんでもないようなことを話しているとつけていたテレビから智の声がした。
「あ、智だ」
「蓮華の会社で取材した特番だね」
見続けていると滝の驚いた顔が流れた。
【なんで智とハルがいるんだよ!】
叫ぶ前の驚いた顔は【!?】とテロップが出ていた。
それが面白くてクスクス笑ってしまう。
「滝、すっごい驚いてる」
「うん、珍しく動揺してたよ」
面白くて笑いが止まらない。
「蓮華、酔ってる?」
「んー?ちょっと?」
ソファーに寄りかかって目を瞑る。
ふわふわ気分がいい。
「蓮華、水飲もう?」
隣に智が座って体を支えてくれる。
コップを受け取って水を飲むと火照った体に染みる。
「もー、いいー」
「うん。ちょっと横になる?」
「んー?」
智がほっぺに手を当ててくると、その手が冷たくて気持ちいい。
思わずその手にほお擦りする。
「智の手、気持ちー」
ふふっと笑っていると意識が遠くなる。
「…勘弁してよ」
智が小さく呟くのが聞こえたの同時に意識が途絶えた。
あなただから気が緩んでしまうんだ。
お正月パーティーで寝てしまう蓮華さん。
智くんとだから酔っ払ってしまったのでしょう。
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