57、 同じものを見ているのが嬉しい
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本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
12月31日。
大晦日は実家の大掃除を手伝って、夜は恒例のすき焼き。
「すき焼きうまー」
「年末の特番見ながらすき焼きって大晦日て感じね」
啓太と私が言うと母さんがそうね、と笑った。
夕飯も食べ終えてのんびりしていると啓太の電話が鳴った。
「あ、彼女だ」
電話をしに行く啓太にクスッと笑う。
「なんか、デレデレね」
「本人は隠してるつもりだから」
母さんがクスクス笑う。
「いいじゃないか。それだけ大事にしてるんだろう」
父さんが日本酒を飲みながら言う。
その顔は嬉しいような、寂しいような顔。
「明日、彼女と初詣行ってくる」
「はーい」
戻ってきた啓太は寒そうにこたつに入る。
「姉ちゃんも一緒にどう?って彼女が」
「え?私?」
「前言ったじゃん、彼女が会いたがってるって」
確かに言われた。
「でもデートの邪魔じゃない?」
「彼女の希望なんでいいんです」
ちょっとムクれた啓太がなんだか可愛い。
「わかった。じゃあご一緒するわ」
「サンキュー」
携帯をいじる啓太に私はふふっと笑った。
日付が変わるちょっと前。
父さんも母さんも寝て啓太と2人でテレビを見ながらお酒を飲んでいた。
「今年もRune出てるね」
年越し歌番組に出ているRuneを見て啓太が呟く。
「…啓太も智のこと怒ってる?」
今まで聞いたことがなかったからか、啓太は驚いたように顔を向けた。
「そ、そりゃ、あんだけ好き好き言ってたくせにって思ったよ。でも」
「でも?」
「…きっと、智くんにも何かあってそうしたんだなって思った。
だって、あんなに姉ちゃんのこと大事にしてたんだ。
守りたくて離れるってこともありえるのかなって」
啓太の答えに驚く。
「そっか」
「なんで急に智くん?」
不思議そうな啓太に私はクスッと笑う。
「実はね、年始に智に再会したの」
「………は!?」
お酒を吹き出す啓太にティッシュを差し出す。
慌ててこたつを拭く。
「マジで言ってる?」
「うん」
「え、なんで?」
「智が会いにきてくれたの」
「会いにきた?」
驚きを隠せない啓太に苦笑する。
「私もなんでって思ってたけど…再会した智は昔と同じだった」
「…」
「相変わらず優しくて安心する」
「姉ちゃん、智くんのことまた好きになったの?」
啓太の言葉に首を横に振る。
「違うの?」
「また、が違うかな。ずっとだからね」
ふふっと笑うと啓太は少し驚いてから小さく笑った。
除夜の鐘が鳴りはじめたのが遠くから聞こえる。
年明けまであと少し。
携帯のバイブで目を覚ます。
あれから年が明けて啓太と乾杯してから寝たからちょっとお酒が残ってる。
「んー…何時?」
携帯を見ると智の名前が表示されてた。
「智?」
通話ボタンを押して電話に出る。
「もしもし…?」
【蓮華、明けましておめでとう。ごめん、寝てたよね】
疲れるけどちょっと酔った声の智に体を起こす。
「明けましておめでとう。うん、寝てた」
【そうだよね。ごめんね。仕事終わったから声聞きたくて】
「…ばか」
カーディガンを肩にかけてベランダに出るとうっすら空が明るい。
【やっと休みだよ】
「智、忙しかったものね。ずっとテレビ出てたもの」
冷気で目が冴える。
【うん。さっきまでお疲れ様&あけおめ会メンバーとしてた】
「楽しそうね」
【めちゃ楽しい!善ちゃんはにぎやかだし、瑛太も珍しくテンション高いし】
しばらく話を聞いてると日が出てきた。
「智、今外?」
【うん。家のベランダ】
「家なのにベランダなの?」
【あけおめ会、俺の家でやったから。みんな寝てる】
それに納得する。年始は夜通しやってるお店も多いとは思うけど、智たちは行けないだろう。
「そしたら日の出、見える?」
【うん、見てる】
「私も」
場所は違うけど、同じものを見てるのがなんだか嬉しい。
「智」
【ん?】
「今年もよろしくね」
そう言うと智がふふっと笑うのが聞こえた。
【うん。今年もよろしく】
智の優しい声にホッとする。
今年もどうか近くにいさせてください。
啓太くんに会っていることを教えた蓮華さん。
驚きつつも2人が再会したことが嬉しい啓太くんなのです。
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