56、 年末は家族で穏やかに
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
12月29日。
昨日、自分の家の大掃除をして今日から帰省をすることにした。
「ただいまー」
「あら、お帰り。早かったわね、まだお昼前よ」
「昨日掃除してたから」
キッチンに行くとお昼を作ってる母さん。
「これ、お土産のイチゴタルト。ホールだからみんなで食べよ」
「わー!嬉しい!今日のおやつね」
甘党の母さんはウキウキしてる。
可愛いなぁ、なんて思ってたらリビングから声をかけられた。
「おかえり」
「父さん、ただいま」
「寒かっただろ。早く温まりなさい」
早くこたつに入れ、と言うことなんだろう。
言葉足らずの父さんに苦笑しつつ、コートと荷物を置きに自分の部屋に向かった。
お昼のナポリタンを食べながら気づく。
「あれ?啓太は?」
「今日、陽太くんのライブがあるからって朝から出かけたわ」
「陽太くん…?ああ、clear skyのライブか」
「すっごい張り切ってたわよ。うちわまで作って」
陽太くんとは、啓太の親友であり番組から生まれた男性アイドルグループclear skyのメンバーだ。
3次オーディションの結果発表の時まで啓太も知らなかったみたいだけど。
「じゃあ、壮真くんも一緒だ」
「本当に仲良しだな、あいつら」
壮真くんと陽太くんは啓太の高校の時からの親友。
壮真くんは大学も一緒だったはず。
「ちゃんとファンクラブ入って当選してるからえらいね」
「ライブとか番組観覧は”友達だからといってズルはしない!”って壮真くんと決めてるらしいわよ」
「ファンに愛される親友達ね」
2人とは何回か家に遊びにきた時にあってる。
初めて陽太くんに会った時は驚いた。
「まさか、啓太の友達にアイドルいるとは」
「本当、我が家はアイドルにご縁があるのね」
母さんが言うと父さんの空気が少しピリついた。
きっと智のことだろう。
「…そうだな」
父さんはそう呟いて、その後は何も言わなかった。
お昼を食べ終わって母さんと片付けをする。
父さんは出かけた。
「…父さん、まだ怒ってるのかな。智のこと」
「そうね。大事な娘があんなに悲しんでたんだもの。許せないんじゃない?」
智と別れた後、悲しくて何も食べられないぐらいだった。
デビュー発表され、捨てられたんだとか根も歯もない噂に余計に苦しくなった。
滝が何回かキレてくれたけど。
「…じゃあ、智と会ってるなんて言ったら口聞いてもらえなくなっちゃいそう」
「それは無いとは思うけど、智くんがウチに来たら何発か殴られると思うわよ」
苦笑する母さん。それは私も想像できる。
「お正月、2日には向こう帰るね」
「あら、そうなの?仕事始め6日からって言ってたからゆっくりするのかと思ってたのに」
年明け三が日が水・木・金だから土日も休みで6日からだ。
「そう思ってたんだけど、3日に智とご飯しようって」
「あら、それは楽しみね」
「…うん」
私が小さく笑うと母さんも嬉しそうに笑ってくれた。
「たっだいまーーー!!!」
夕飯を食べ終えてゆっくりしていたら楽しそうな声が玄関からした。
リビングの入り口を見ると大きいバックを抱えた啓太が入ってきた。
「あ、姉ちゃんおかえり」
「ただいま。啓太もおかえり。楽しかった?」
「めーーーっちゃ楽しかった!!なっちゃんかっこいいし、トラもカッコかわいかったー」
ドサッと音を立ててバックを置く。
「グッズ、どれだけ買ってるのよ…。それに陽太くんの応援は?」
「もちろんしてきたよ。やっぱステージにいると別人みたいだわ〜」
手を洗いに行く啓太。
啓太の推しは西田夏くんと山之内寅之助くんらしい。
啓太曰く、ツンデレとギャップがいいらしい。
「ライブだけど帰ってくるの早いのね」
「メンバーも未成年いるからね。11時からと16時からで、俺らは16時から」
「なるほど」
ちょっとお酒も飲んだのか、頬が赤い。
「啓太、ご飯は?」
「壮真と食べてきたー」
「じゃ、デザート食べる?」
昼間に母さんと作ったムースが出てくる。
「お、これ好きなんだよね。いただきまーす」
みんなでムースを食べているとCMにclear skyが映った。
「あら、陽太くん」
「すごいよな。一緒にいると普通なのに別人みたいだもん」
「本当だな」
父さんも会ったことがあるからわかるらしい。
「でさ、今回もグッズがめちゃくちゃよくってさー」
テンションが高い啓太に苦笑する。
「啓太って、ライブの後いつもこんな感じ?」
「そうよ。買ってきたグッズの紹介から始まって感想が止まらないの」
冷静な弟の珍しい姿に思わず笑ってしまう。
こんな穏やかな日は久しぶりだ。
年末の実家帰省のお話です。
clear skyについては「メンバーカラーは無色透明を希望します!!」をぜひ読んでみてください。
お父さんとゆっくり話しをするお話もいつかは書こうかと思います。
====
いいなど思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションもめちゃ上がって喜び狂い、発狂します( ´ ▽ ` )
感想もお待ちしております(^ ^)




