46、 久しぶりのデートはちょっと緊張する
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
【デートのお誘いなんだけど…嫌、かな?】
電話で誘われたデート。
智とのデートはあの日以来。
『さようなら』
あの日から、私の心はどこか止まっていた気がする。
智との待ち合わせは目的地の最寄りの駅。
【本当は家まで車で迎えに行こうと思ったけど、何かあるといけないから】
智が電話で困ったような声で言っていた。
きっと撮られたりするのを避けたかったのだろう。
私は最初から電車で行くつもりだったから大丈夫、と返事をした。
「…格好変じゃないかな」
駅からちょっと離れた公園前で待つ。
今日はふれあい牧場に行くらしく、動きやすい格好できた。
服が無いなーっと思って携帯で検索してたら由里香に見つかり、
一緒に買いに行ってコーディネートしてもらった。
『蓮華、服買うの?この時期珍しくない?』
『あーうん、ちょっと』
『デート?デートだ!』
肯定もしてないのにその日の帰りに買い物に連れてかれた。
ありがたいけど。
髪もゆるめのお団子。
こんなにちゃんとしてデートは久しぶりでそわそわする。
そんなことを思っていたら目の前に車が止まった。
「蓮華、お待たせ。乗って」
窓が開いて智が声をかけてくれる。
「あ、うん。後ろがいいよね」
「んー、そうだね。ごめん」
「ううん」
助手席の後ろに乗る。
智が運転してるのは新鮮だ。
「待たせちゃってごめんね」
「ううん。私もさっき着いたところ。智、運転するんだね」
「多くはないけどね。普段はマネージャーが運転してくれるし」
「そっか」
他愛もない会話をしていると、赤信号で止まった。
智はこっちを見る。
「何?」
「いつも可愛いけど、今日めっちゃ可愛いなーって」
ニコニコの智に顔が赤くなる。
「なっ!」
「デートの時の蓮華って普段以上に可愛いんだよね。
毎日可愛いって思ってたけど、デートの時はもっと可愛いから楽しみだったんだ」
青信号になって運転が再開する。
確かに、昔デートのたびに「可愛い!」と会ってすぐに抱きしめられてた。
あの時も恥ずかしかったけど、今は何十倍も恥ずかしい。
なんであの頃の私はそれを受け止められていたんだろうと不思議に思える。
ふれあい牧場に到着してまずはゆっくり見ていくことに。
結構広い場所で、平日だから人も全然いない。
智はサングラスにキャップを被ってる。
「こういうところ久しぶり」
「いつぶりぐらいなの?」
「入社したてぐらいの時に研修旅行があって、その帰りにみんなで寄ったぶりかな」
あの時はいつもの4人で途中下車して動物園に行った。
滝と雨宮が騒ぎすぎて次の出勤の時に声を枯らしていたのを覚えてる。
「楽しみだな」
「よかった」
智がニコッと笑う。
「智は番組とかで来てそうよね」
「そうだねー。でも俺はそこまで多くないかな。ハルくんや善ちゃんが多いかも」
「確かにその印象あるかも」
そんなこと話しながら歩いているとカピバラが見えてきた。
「あ、カピバラ!」
小走りで駆け寄って柵に寄りかかる。
親子でちょこんっと座って日向ぼっこしてる。
「かわいいー」
「蓮華、カピバラ好きなの?」
「うん。あの寝てる顔が好きなんだよね。なんか癒される」
「確かに、見てるとこっちも眠くなっちゃうな」
こんな感じに動物を見ていくと、緊張も解けていた。
途中でレストランを見つけた。
「ここのレストラン、美味しいんだって。牧場で取れたものと近所の農家直送野菜使ってるから」
「へー」
「蓮華、腹減ってる?もうすぐ13時だし、お昼食べる?」
「そうね。そうしよっか」
レストランに入るとお客さんは私たちだけだった。
「今日、空いてるのね」
「平日だからかな。あと車ないと来れないし」
「確かに」
メニューを見て、注文する。
智はハンバーグセット、私はグラタンとサラダのセット。
「美味しい!」
「うん、美味い」
グラタンは牧場で搾ったの牛乳から作ったチーズを使っているから味が濃いらしい。
「こっち、一口食べる?」
智に聞くと頷いていたので、一口分をスプーンですくって差し出した。
「はい。熱いから気をつけてね」
「…」
「?智?」
智は驚いた後、そのままグラタンを食べた。
「ね、美味しいでしょ?」
「…うん、美味い」
モグモグしながら顔を赤くする智。
「どうしたの?熱かった?」
「いや…それは大丈夫だけど…」
「?」
「…久しぶりに、あーんってやったなって」
その言葉に顔が熱くなる。
付き合ってた時、一口あげる時はいつもお互い食べさせてた。
それが出てしまった。
普段は由里香にもしないのに、体が覚えていたのだろう。
「あ、えっとごめん!」
「大丈夫!嬉しかったから!…もしかして友達とかにもしてるの?」
「いつもはしないの!その…無意識で…」
そこまで言って更に顔が熱くなる。
智も耳まで赤い。
そして一口に切られたハンバーグを差し出された。
「…蓮華も食べる?」
少し迷ったけど、そのまま食べる。
濃厚な肉汁とソースが口の中で広がる。
「…美味しい」
「よかった」
もぐもぐとしながら気持ちを落ち着かせる。
チラッと智を見ると智もまだ顔が赤いまま。
何年経ってもあの時のようにできるのは、あの日々が特別だったからだと改めて感じる。
デートはふれあい牧場です。
ふれあい牧場って楽しいですよね。アイスも美味しい。
いつもはグイグイ行く智くんですが、今回はお顔が真っ赤か。
====
いいなど思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションもめちゃ上がって喜び狂い、発狂します( ´ ▽ ` )
感想もお待ちしております(^ ^)