44、 嫉妬する資格がないのは私も同じ
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本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
智の誕生日のお祝いをしたあの日。
『…今の俺に嫉妬する資格なんてないのに…バカだ』
そう言った時、抱きしめられていたから表情は見えなかったけれど、きっと苦しい顔をしていた。
「…私だって同じなのに」
「何が同じなんだー?」
隣に座ってきたのは滝。
コーヒーを飲みながら隣の席に座る。
「滝、まだ残ってたの?」
「お前もな。今何時かわかってんの?」
「20時。明日のスケジュール的に今日やっておいた方がよかったのよ」
キーボードを叩いて資料を仕上げる。
「だいたい、明日滝の営業に予定のなかった同行するからこうなったのよ」
「悪いって」
無事に仕上げて保存をする。
「滝は何で残ってたのよ」
「今日、ゆりがなー、大学の友達とメシでいないんだよ」
「で?」
「裕也も残業で遅いっていうからさー」
「で?」
「さっき営業先から戻ってきたらお前が残ってたから飲み誘いにきた」
「は?」
「終わったんなら行こーぜ」
立ち上がった滝になぜかバックを取られ、逃げられない。
「わかったわよ。1時間だけね」
「いえーい」
智のことも話したかったから、と思いながらPCの電源を落とした。
いつものみんなで飲む居酒屋。
いつも通りにビールでスタート。
「うまー」
「はー、疲れた」
一息ついてお通しの枝豆を食べる。
ほどよい塩気が美味しい。
「で、何が同じなんだ?」
さっきと同じ質問をされる。
「滝、最近智と会った?」
「おう、この前飲んだぞ」
「その時何か言ってた?」
そう聞くと滝は小さく笑った。
「いつも通り。お前に祝ってもらって嬉しかったことと、プレゼントを大切にしてるって」
ビールを煽るとおかわりを頼む。
「あと、ハルに嫉妬して情けないって」
思わぬ言葉に驚く。
「嫉妬…?なんで?」
「智へのプレゼント、ハルに相談したろ?」
「したけど…」
「それに嫉妬したんだと」
「だからあんなこと言ってたの…」
智の言葉の意味を理解する。
「高校の時、傷つけた事をずっと後悔してるから余計にそう感じたんだろ」
頼んでいた料理もきて滝はそれを食べる。
「そっか…」
「中倉も嫉妬してたのか?」
いきなり確信をつかれて驚く。
「なに」
「同じって言ってたこと。誰に嫉妬してたのかは知らんけど」
「…滝の観察力と考察力は仕事ではありがたいけど、今はムカつく」
「お褒めいただき光栄です」
滝がニッと笑う。
私は諦めてため息をつく。
「自分でもバカだとは思ってるわよ。でも、出てるのを見てると相手の人とかに…もやっとするの」
TVに映る智。
それはドラマだったりバラエティーだったり。
その時に一緒にいる女優さんや女性タレントさんに嫌だなって感じる。
「…でも、私はフラれてるから、こんなのわがままだなってずっと思ってたの」
「…」
「でも…智も同じだったのね」
苦笑する。
嬉しいのと戸惑ってるのと半々。
智と再会してからこんな状態ばっかりだ。
「中倉はさ、智のこと好きなのか?」
滝に聞かれてグラスを見つめる。
『俺、蓮華と一緒にいたい』
『蓮華のこのチョコだけは食べられるんだよね』
『蓮華の味、好きだな』
『母さんに作り方聞いたんだ。蓮華、俺の弁当に入ってたハンバーグ好きだったから』
『俺も、ずっとずっと蓮華が忘れられなかった』
『蓮華に恋した時からずっとずっと愛してる』
思い出すのは再会してからの彼。
戸惑いながらも会えることが嬉しかった。
『蓮華の思うようにしてみたらどうかしら?智くんにワガママ言ってもいい立場だと母さんは思うわ』
「…好きよ。どんなに忘れようとしても結局忘れられなかったぐらい」
周りは騒がしいはずなのに、どこか遠くに感じる。
「…そっか。ようやく認めたか」
静かに笑うけど、どこか嬉しそうな滝。
「なんで滝が嬉しそうなのよ」
ムッとして聞くと滝は苦笑した。
「前に言ったろ?中倉にも幸せになって欲しいと本当に思ってるって」
「…どうも」
高校の時から私たちが一緒にいるのを楽しそうに見ていた滝。
きっと滝は滝で思うことはたくさんあるんだろうなって思う。
「お前ら、本当に似たもの同士だな」
そう言われて私は苦笑した。
もう、自分の気持ちと向き合おう。
自分の気持ちを認めた蓮華さん。
それが嬉しい連司くんなのです。
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