33、 あの時はまだわからなかった〜秋〜
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
蓮華に告白をしたあの日から毎日が楽しかった。
文化祭、クリスマス、お正月、バレンタイン、ホワイトデー。
人生で一番楽しい毎日だった。
春休み明け。
2年生ではクラス替えがある。
「あ、あった。私1組」
「…俺も!」
「俺もだー」
隣から聞こえてきたのは連司の声。
「連司」
「よー。相変わらずラブラブしてんな、お前ら」
背が伸びた連司は俺よりも頭1つ分大きい。入学した時は同じだったのにな。
「残りもよろしくな、おふたりさん」
「うん」
「よろしく」
3人で笑って教室に向かう。
卒業まで楽しい高校生活になりそうだとこの時は信じていた。
GW、レッスンが終わっていつもみたいに4人で帰ろうとしていた時、事務所の人に声をかけられた。
「あ、いたいた。4人、ちょっといいかな?」
全員で顔を見合わせて頷く。
案内された会議室には事務所のえらい人(の認識)とマネージャーが数人いた。
「レッスン後に悪いな。お疲れさん」
「「「「お疲れ様です」」」」
俺たちが挨拶をする。
「君達に来てもらったのは提案があってな。レッスンの時、4人でいることが多いんだろ?」
「え?はい」
「なんで一緒にいるんだ?」
そう聞かれて顔を見合わす。
「一緒にいて心地良いのと、それぞれのいいところが違うので、それをお互いに見て盗もうって思ってるからかなと」
「他のレッスン生と違って自然でいられるのと、お互いを認めている感があるから」
「全員が他の3人を受け入れて良いも悪いもちゃんと言い合えるから…かなと」
ハルくん、善ちゃん、瑛太が言う。
「大嶋は?」
その場の全員の視線を感じる。
「4人でいると一番力が発揮される気がします。3人がいるから頑張ろうって」
俺がそう言うと大人達は小さく笑った。
「そうか。なら大丈夫そうだな」
チラッとマネージャー陣を見て女性が頷いた。
「今月の事務所の会議の決定により、大嶋智、間宮晴人、林田善、高橋瑛太の4名でグループを組みます」
そう聞いた瞬間、周りの音が消えた。
「ここから、この4名でデビューを目指して動いていくことになります」
心臓の音がうるさい、手の震えが止まらない。
「今後は4人での活動を増やしていく予定です。異議のある人はいますか?」
全員首を横に振る。
「では、本人達の意思確認済みとして手配を進めていきます。なお、今後は私が皆さんのマネージャーをさせていただきますので、よろしくお願い致します」
頭を下げられて俺達も頭を下げる。
その日の帰りはみんなで大騒ぎだった。
これは、デビューに大きく近づいた証明だったからだ。
そこからはバタバタだった。
レッスンも増え、お仕事ももらえるようになった。
蓮華といられるのも少なくなったけど、一緒にいる時間を大事にしていた。
「智くん、何見てんのー?」
「蓮華の誕生日プレゼント。キーケースがいいんだって」
4人のレッスン前に携帯でキーケースを見ていたら善ちゃんが声をかけてきた。
「ラブラブだねー!」
「へへ」
「顔がゆるゆるじゃん」
「まあ、いいことだよ」
瑛太とハルくんも来て4人で笑って話す。
「智、彼女いるの?」
マネージャーの三倉さんに聞かれて頷く。
「そろそろ一年だよね?智くん達」
「彼女さん、めちゃ美人さんだよ!」
ハルくんと善ちゃんの言葉に頷く。
「…そう」
三倉さんが難しい顔をしたのが見えた。
この後、レッスンが始まったけど、三倉さんの表情は変わらなかった。
蓮華とみんなとずっと一緒だと信じていた俺はその表情の意味がわかっていなかったんだ。
デビューに近づいた智くん。
のちにチーフマネージャーになる三倉さん、名前初登場です。




