31、 初めて見た日からキミに恋していた〜春〜
高校入学式。
新しい着慣れない制服に身を包んで長い話を聞く。
今日から高校生活が始まるけど、それほど楽しみという事はなく、早く帰ってダンス練習したいなと思っていた。
クラスに戻って少し話を聞いて解散。
受け取ったプリントをカバンに入れていると影ができた。
「?」
「あ、やっぱりそうだ」
ニッと笑うイケメン。
「?」
「この前、ダンス大会出てた?」
確かに春休みに少し大きめなダンス大会に出た。
勝手に出たから事務所に怒られたけど。
「出てたけど…」
「俺の弟も出てて見に行ってたんだけど、めちゃめちゃ上手いな!!」
ニコニコ笑って話かけてくるなんて陽キャだな、と思った。
「あ、ありがとう」
「俺、滝連司って言うんだ!仲良くしようぜ!」
差し出された手を掴む。
「大嶋智です…」
「よろしくな!」
これが連司との出会い。
この時声をかけてくれた事はずっと感謝してる。
学校生活も慣れてきた5月。
昼休み、中庭で弁当を食べていた。入学式の日から連司といるのが当たり前になった。
「GW楽しかったなーー」
「連司、めちゃめちゃはしゃいでたね」
連司と遊び行ったり、仕事したりしてバタバタしたGW。
でも楽しかった。
「あ、滝いた」
連司が声をかけられて振り返る。
そこにはショートヘアのスラッとした女子生徒。
キリッとした顔つき、茶色味を帯びた髪がふわっと靡く。
思わず目を見張る。
「おー、中倉。どうした?」
「今日、部活無くなったって。先生も来れないからって」
「あ、マジ?サンキュー」
「ん」
手をヒラヒラしながら去っていく女生徒。
俺がその姿をボーッと見つめるのを連司は気づいた。
「なんだー?智、惚れたかー?」
「え!?ち、違う!」
「まー、美人だもんなー中倉」
「中倉さんっていうの?」
連司がコーヒーを飲みながら頷く。
「中倉蓮華、隣のクラスだぞ。俺と同じ弓道部」
「中倉蓮華さん…」
これが蓮華との出会い。
この時からきっとキミに惚れていたんだと思う。
それから数日。
レッスン場でハルくんに声をかけられた。
「智くん、高校生活どう?」
「楽しいよ。友達もできたし」
「瑛太!高校生ってなんかかっこいいよね!」
「うーん、そう?」
善ちゃんと瑛太がちょっと離れたところで話してる。
ハルくんは中3で受験だ。
どこに行くのか聞いたら芸能科がある高校だけど偏差値はかなり高い。2人もすでに決めてるみたい。
「可愛い子とかいる??」
善ちゃんがハルくんの背中に乗って聞いてきた。
ふとよぎったのは蓮華。
「うん、いるよ」
「もしかして好きな子とかできた!?」
目をキラキラさせる善ちゃんに苦笑する。
「別にそういうのじゃないよ。けど」
「けど?」
「仲良くなれたらなって思ってる」
そこからは蓮華を見つけると目で追う日々。
なぜそんなに目で追ってしまうかはわからなかったけど、目で追っていた。
「さーとーしーくーん。見過ぎ」
パコッと丸めたノートで叩かれた。
顔を上げると連司がいた。連司も俺の目線の先を見る。
グランドで体育の片付けをしている蓮華。
楽しそうに笑っている。
「そんなこと」
「あるんだって。気になるなら話かけりゃいいじゃねーか」
「…話せればこんな風になってないって」
「お前なー」
話しかけられるわけがない。
見た目だけでなく、成績もいい、仲良くなるとツンデレが可愛いと言われている。
そんな学年で注目されている人と話せるわけがないんだ。
「しゃーねーな」
連司が頭かきながらため息をつく。
放課後。
「智、行くぞー」
「行くってどこに」
連司に引っ張られて歩いていく。
今日は連司の部活も俺のレッスンもない日。
そういう日は一緒に遊ぶことが多い。
「ちょ、連司どこに行くの」
「あ、いたいた。おーい中倉ー」
その名前に前を向く。
図書室前に蓮華がいた。
「滝。何?」
「お前さ、数学得意だったろ?小テストあるから教えて欲しいんだけど」
「…滝が?この前の中間、学年上位じゃない」
「お前はトップ3だろ。俺じゃなくてこいつ」
そう言って俺の腕を引っ張った。
「あ?え?」
「こいつ、俺のダチなんだけど、数学が全然で」
「れ、連司!!」
そうだけど!!と思いながら連司の口を塞ぐ。
チラッと蓮華を見るとポカンッとしていた。
「お、大嶋智です!」
「中倉蓮華です。大嶋くんの事は滝から聞いてます」
クスクス笑い始めた蓮華に顔が熱くなる。
これが初めて言葉を交わした時。
ここから俺は更にキミに恋していく。
俺はこの日のキミの笑顔をずっと忘れない。
2人の高校編がスタートです
4部構成の予定です
一目惚れの智くんはこの頃から蓮華さん大好きでした
こういうのをモブとして近くで見てたい
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