30、 わかっていたんだ
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
智のお手製料理は全部美味しかった。
「美味しかった。ご馳走様」
「よかった。ケーキも買ってあるんだ」
お皿を片付けるのを手伝う。
「あ、私もさっき渡した箱にデザート買ってきてる」
「じゃあ全部出そうか」
軽く水で流して食洗機に入れていく智。
食洗機いいな、なんて思っていたら終わったらしく冷蔵庫から小さな箱を2つ出した。
それとシャンパン。
「シャンパンもあるけど、飲む?」
「良いの?」
「もちろん。蓮華の為だし」
クスクス笑う智。シャンパンとグラスを受け取ってテーブルに運ぶ。
智が持ってきたお皿にはショートケーキと私が買ってきた抹茶プリン。
「ショートケーキ!」
「昔、ケーキで一番好きって言ってたから」
「よく覚えてるね…」
フニャッと笑うその顔に急に恥ずかしくなる。
シャンパンを開けてグラスに注ぐ。
「2回目だけど乾杯」
「乾杯。ありがとう」
小さくチンッと合わせて飲む。
智が用意してくれたショートケーキを食べる。
ふんわりと控えめな甘さ。
「んー!美味しいー」
「うまいよね。ここのケーキ、甘さ控え目で俺も食べれるんだ。近所なんだけど…」
楽しそうに話す姿を見て、私はここにいて良いのかなと思う。
だって彼は違う世界の人だ。
「蓮華?どうしたの?」
声をかけられてハッとする。
「ううん。なんでもない。あ、この抹茶プリンお茶の味が濃くて美味しいから食べてみて」
「…うん。いただくね」
智がプリンを食べると、うまいと言ってくれた。
2人でデザートを食べ終えると智が立ち上がった。
隣の部屋から紙袋を持ってきた顔はワクワクした顔。
「あの…これプレゼント」
「え?…いいの?」
頷いた智を見て、差し出された紙袋を受け取る。
中には小さな箱。
「…ありがとう。開けてもいい?」
「もちろん」
黄色いリボンを解いて箱を開けると、そこにはキーケース。
「キーケース…」
「うん。連司から聞いてさ」
キーケースを持ち上げて開く。
薄茶色の優しい色
手帳型のそのキーケースの内側にはワンポイントのひまわりが描かれている
「ひまわり…」
「外側にしてもらおうかなって思ったけど、内側の方がまだ傷つかないて」
「え?オーダーメイド?」
「うん」
フニャッと笑う智。
「ありがとう…。覚えてたんだ」
いつものメンツで飲みに行った時に落としたキーケースは皮部分の留め具部分が噛み合わなくなっていた。
『あ、壊れちゃった…』
『あちゃー。てかお前、それ高校の時から使ってね?』
『まあ…』
高校生の時、誕生日に智からキーケースをもらった。
ひまわりのキーホルダーと一緒に。
「…うん。ずっと使っててくれたんだってね」
「…」
コクンと頷く。
この前壊れてしまったキーケースは智からもらった物。
ずっとずっと大切に使っていた。
「捨てられたと思ってた。…あんな別れ方したから」
「…捨てようとしたけど、捨てられなかったの」
バックから壊れたキーケースを出す。
留め具が外れてしまったキーケースから鍵とひまわりのキーホルダーを外して新しいキーケースにつける。
「捨てられなかったの…」
キュッとキーホルダーを握る。
『キーケース欲しいって言ったから!あとお揃いのキーホルダー!』
『蓮華さん、ひまわりのキーホルダーとか持ってますか?智くんが持ってるから、もしかしてって』
パッと顔を上げてできるだけ笑う。
「ありがとう。大事にする、ね」
涙が頬を伝う。
もう、我慢の限界だ
「…っつ、ふ」
止まらない涙を急いで拭う。
想いが溢れ出る。
その瞬間、抱きしめられた。
「ごめん…俺のせいで…ごめん」
ギュッと抱きしめられる。
智の背中を掴む。
大好きだった
智と両思いになって付き合って世界一幸せだと思ってた
誰よりも大好きでずっとずっと一緒だと思ってた
だから急にいなくなって辛かった
「離れ、たく、なかった…!!」
「うん」
「寂し、かった…!!」
「うん」
肩に埋めてくる智の頬が顔にあたる。
そこに智の涙が伝う。
「忘れられなかったの…!!」
新しい出会いがあったとしても
好意を向けられても
いつもあなたがよぎってた
どこか心が欠けていると感じてた
だけどあなたと再会した時に忘れていた想いが溢れた
だからもう騙せない
更に強く抱きしめられる。
苦しいはずなのに手放したくない。
「俺も、ずっとずっと蓮華が忘れられなかった」
「っつ…」
止まらない涙を智が拭う。
その体温にまた涙が溢れる。
智が涙を流しながら微笑んだ。
「蓮華に恋した時からずっとずっと愛してる」
もうあなた以外の人を愛せないとずっとわかっていた。
ずっと自分の気持ちを誤魔化してた蓮華さん。
キーケースをプレゼントする意味は「いつも一緒にいたい」「大切にしてね」だそうです。
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