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24、 騙せないのは知ってる

智の電話の次の日。

目を覚ましてからボーッとする。

『あと…智が主役だったから見てる』

自分が何を言っていたか思い出して恥ずかしくなる。

『そっか…嬉しい。ありがとう』

見えないけど、智がどんな顔をしているかなんとなくわかった。

「…なんなのよ、もう」

ため息をついて起き上がる。

こういう日は朝からパンケーキを焼いて紅茶を飲もう。


「…美味しかったけど、ちょっと食べ過ぎた」

紅茶を飲んで呟く。

今日は洗濯と掃除して。ちょっと買い物でも行こうかな。

一日のスケジュールを立てる。

憧れていた丁寧な暮らしをできるように心がけているが、まあ、現実はそうもいかない。

身支度をして洗濯と掃除をこなす。

そんなことをしていたら11時近くになっていた。

せっかくだからランチは外で食べよう。

そう思ってお出かけ用のバックを持って靴を履いた。

外は晴れていて、気温もちょうどいい。

今日は夏物の服とコスメでも見ようかな。気に入ったら買えばいいし。

電車に乗って街に出る。

ブラブラといつも行くお店、気になるお店を回っていく。

「あ…これ」

雑貨屋で見つけた小さめのグラタン皿。

一つしかないからもう一個買っておこうかな、そう思ってハッとする。


今、誰を思い浮かべた?


顔が熱くなる。

「…予備で持っておこう」

グラタン皿を持ってレジに向かった。


***

月曜日。

由里香と近くの公園でランチをしていたら、遠くで抹茶ソフトを売っているキッチンカーを見つけた。

「抹茶味だって。美味しそうね」

「ん?どれ?」

不思議そうな顔をされてキッチンカーを指す。

「ほら」

「あ、本当だね。蓮華、本当に緑茶好きになったんだね」

「え?」

由里香がサンドイッチを食べる。

「だって、前まで緑茶系全然興味なかったじゃん」

「…そうだっけ?」

にやーっと由里香が笑ってきた。

「もしかしてー、好きな人できた?その人がお茶好きだったり?」

「なっ…!!」

お茶を吹き出しそうになって咳き込む。

「大丈夫?」

「大丈夫…なんでそうなるのよ」

ケホッと咳をして由里香を見る。

由里香は楽しそうに笑う。

「だって、いつもは紅茶とかコーヒーだけだったのに緑茶になるし、バレンタインも手作りしてたし」

「まあ…それはそう」

「だから好きな人ができて、その人の好きな物を飲むようになったのかなって」

「…」

「あと、もともと美人さんだけど、最近は可愛いも出てきてる!恋してるって感じ」

何も言えない。

「別に、そういうのじゃ…」

「ふうーん。じゃあそういうことにしとこうかな」

それでもニコニコの由里香。

きっと信じてない。

「由里香は滝を好きになったって自覚したら好み寄せたの?」

ちょっと意地悪で聞いてみた。

「え?うーん。見た目とかは気にしたけど…でも全部を変えようって感じじゃないかな」

デザートのフルーツを食べる由里香。

フルーツが似合うな。

「知る努力をしたし、知ってもらおうって頑張ってたかな。連司が好きなものは勝手に目で追ってたかも」

確かに滝も甘いのは苦手だけど由里香が新しくハマったお菓子はちゃんと食べたりしてる。

『蓮華って今も紅茶好きだよね』

『そうだけど…』

『これ、この前番組で行った紅茶専門店で美味しかったやつ。俺も好きな味だから蓮華は絶対好きだろうって』

ホワイトデーの後に家に智がきた時にもらった紅茶は私好みだった。

「…ふーん」

ポツリと呟く私に由里香は嬉しそうにしていた。


定時に帰って料理をする。

今日はグラタン。

グラタン皿を取ろうとしてこの前買った皿が目に入った。

「…知る努力と好きになってもらう努力、か」

ポツリと呟く。

智は和風なものが好きだ。私は逆に洋風なものが好き。

真逆だけど、お互いに好きなものを強要もしなかったし、知ろうとしていた。

それはきっと今もそう。

「…何にも無い、とかもう言えないわよ」

小さくため息をついた。

その時に通知音がした。

【今日、家に行ってもいい?】

「…タイミング」

ため息をつくけど、内心嬉しいと思っている自分もいる。

この時間だからご飯食べるかな、と思い返信する。

【今日、グラタンだけどそれでもいいなら】

マカロニを茹でていたら返信が来た。

【もちろん!楽しみにしてる!】

思わず笑ってしまう。

せめて、智の好きなきのこをたくさん入れよう。

この前買ったグラタン皿も取り出して2人分のグラタンを作った。


こんなにも私の生活に入り込んでる。それが答えなんだ。

無意識に生活に智がいた蓮華さん

それに気づいたら認めるしかないのです

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