表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過去、私を嫌ったキミは今、私を溺愛する  作者: ひなた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/118

17、 酸っぱくて甘いのはお菓子のせい

智から貰ったホワイトデー。

貰えるとは思ってなかったけど、貰ったらやっぱり嬉しい。

「開けてもいい?」

「もちろん」

智が頷いて袋から取り出す。

中には一緒にTVで見ていた洋菓子店のマドレーヌとマカロン。

「これ…私の好きなやつ」

「うん。好み変わってたらどうしようって思ってたけど、大丈夫そう?」

不安そうに見てくる智。それが少し可笑しくて笑う。

「大丈夫、変わらず好きだから。ありがとう」

そう言うと智は笑顔になった。

ご飯の後のデザートとして食べよう、となって一旦冷蔵庫に入れた。


夕飯後、片付けをしてハーブティーを淹れようとしたら、智に止められた。

「あ、ちょっと待って」

「え?」

「これで飲みながらどう?」

智の手にはもう一つの袋に入っていた白ワイン。

「ワイン?智飲めるの?」

「お酒は全般飲めるよ。ウチのメンバー、みんなお酒好きだから付き合いで飲んでたら飲めるようになった」

知らない智を知った、と思った。

「私もワインは飲めるから大丈夫だけど…グラスあったかな」

食器を置いてある棚を見るが、ワイン用のグラスは無い。

どうしようと思っていたが、最近結婚式の引き出物でグラスを貰ったことを思い出した。

クローゼットの上段に仕舞ったと思って見ると箱があった。

背伸びをして取ろうとしたら後ろから智が取ってくれた。

「これ?」

「あ、うん。ありがとう」

お礼を言って智をジッと見る。

高校の時は同じぐらいだったのに、今では少し見上げる。

時の流れを感じる。

「…蓮華、それ以上見ないで」

「え?」

「…色々我慢できなくなる」

そう言われて顔が赤くなる。

「ご、ごめん」

「うん」

チラッと見ると智が口を手を覆っていた。

その顔は真っ赤。

「…そんな反応しないでよ」

ポツリと呟いてグラスを洗いにキッチンに戻った。

細長いおしゃれなグラスを洗う。

洗い終わって拭いてリビングに戻る。

智はワインを開けて待っていた。

「廊下に置いてたから冷えてるよ」

「冬だから廊下でも冷えるのね」

マドレーヌとマカロンも開けた。

ワインをグラスに淹れて乾杯をした。

「わざわざありがとう」

「ううん。俺がしたかっただけ」

フニャッと笑う智に苦笑する。

ワインは軽い口当たりで私が好きな味だった。

「あ、美味しい」

「よかった。蓮華が好きそうな味かなって」

「…ありがとう」

耳が熱いのは気のせい。

「お菓子、いただくね」

「うん、食べて食べて」

マカロンを取って一口齧る。

ラズベリーの甘酸っぱさとふんわりとした甘さに笑顔になる。

「美味しい!」

「本当?好きな味?」

「うん!」

智を見ると顔が真っ赤。

「智?」

「…もう、本当に勘弁」

そう言いながらグイッと引っ張られた。

次の瞬間、抱きしめられていた。

「可愛すぎるから」

「そ、んなこと」

「あるから。嬉しそうにしてくれるのもだし、照れて赤くなってるのだって」

チュッと音がするのと頬に柔らかな感触がしたのは同時だった。

「我慢の限界だってくるよ」

ギュッと抱きしめられる。


『蓮華可愛いー!』

『もう!智!』

あの頃と同じように智の温もりを感じる。


「さ、とし!」

体を離す。

自分でもわかるぐらいに顔も体も熱い。

グッと押した智の心臓も早いのがわかる。

「…急にごめん。でも、わかって欲しいんだ」

また腕を取られて引っ張られると再び頬にキスをされた。

「俺、蓮華と一緒にいたいって言ったのは本気だって」

「…!!」

顔を上げると智の真剣な目。


じゃあ、なんであの時離したの?

私だってずっと一緒にいたかったんだよ


そう言いたかったけれど、言えなかった。

ただ臆病なだけ。


***

智は2杯ほど飲んで帰った。

私は二人分のグラスを洗う。

『…今日言ったことは全部本音だから』

帰り際の智の言葉がずっと残ってる。

グラスを拭いて箱に戻す。

一人で飲むのなら普通のグラスで十分だ。

「…また、来るかな」

そう思うとクローゼットには戻す気にはなれなかった。

食器棚の一番端に置く。

リビングのテーブルには智からのマカロンとマドレーヌ。

マドレーヌを一つ摘んで口に運ぶ。

バターのふんわりとした香りと程よい甘さ。

「…美味しい」

嬉しいのにどこか切ない。

ふと涙が溢れた。


一緒にいたかった、けど突き放したのはあなたなんだよ。

智の過去と今の言動の違いに戸惑う蓮華。

一緒にいたいのにいれないのは切ないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ