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13、 別に認めてないわけではない

『蓮華、最近よく笑うようになったね』

由里香に言われて驚く。

自分ではそんなつもりはない。

「中倉、最近いいことでもあったのか?」

「中倉ちゃん、最近楽しそうね」

…そんなつもりはないはずだ。

休憩室で緑茶を飲んでため息をつく。

周りから最近楽しそうと言われることが増えた。

「別に楽しいことなんてないのに」

「そうかー?楽しそうだぞ?」

顔を上げると滝がいた。

「お疲れさん。最近、俺も聞かれるんだよ。中倉いいことあったのかって」

コーヒーを買う滝。

その言葉に更にため息。

「ないわよ」

「お前、説得力無いからな。ちょいちょい楽しそうにしてるの漏れてるって」

滝の言葉に言葉が詰まる。

「なんだかんだ、お前も嬉しいんだろ」

「…なんでそう思うのよ」

「携帯を触る頻度が増えただろ。前だったら勤務中は絶対に触んなかったのに」

「あー…」

それはそう。トイレ行く時にチェックするようになった。

「それに緑茶ばっかり飲むようになったじゃん。高校の時みたいに」

それも…そうかもしれない。

「去年のゆりへの友チョコは手作りチョコじゃなくて市販のクッキーだったしな」

…生チョコ以外は作れないからね。

「で、メイク変えたってゆりが言ってたしな」

「…あー、もういいです。ストップ」

滝の顔の前に手を出す。

「確かに前とは違うこともしてるかもしれないけど、別にそんな騒ぐようなことではないでしょ」

「俺らは思わないけど、高嶺の花と思ってる奴らは騒ぐことだろうな」

「…めんどくさい」

そう言うと滝が苦笑した。

「しょうがねーよ。特にお前は表情筋硬いからな。緩くなると物珍しさに色々言われるだろうよ」

これだから人付き合いはめんどくさいと思うんだ。

盛大なため息をしたら、滝に爆笑された。


帰り道。

今日は新しいペンが欲しくて寄り道をする。

いつも使っているペンを無くしたから、同じものを買おうと思って歩いていると電気屋のTVに智が映っていた。

[大嶋くん、わかりましたか?]

[えーっと、多分]

[多分じゃダメでしょ!]

共演者に笑われているのを観ていると、智が持っているペンが目に入った。

「…あれ?」

それは私のペン。

人のと混ざらないようにひまわりの写真シールをつけている。

携帯を出して智に連絡をする。

【私のペン、持ってる?ひまわりのシール貼ってあるやつ】

するとすぐに返事が来た。

【これ蓮華のか!ごめん、持ってる!】

智曰く、いつの間にか鞄に入っていたらしい。

そんなタイミング、あっただろうか…。

【次の時に返すね!】

その言葉にドキッとする。

「次…か」

ふとお店のガラスに映る自分を見る。

どこか嬉しそうに笑っていた。

「…別に、嬉しいとかではないから」

自分で自分に呟いた。


別に嬉しいわけではない…けど、全く嬉しくないわけでもないのも事実だ。

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