113、 残りの人生を一緒にいたいから教えて欲しいの
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
智が両親に挨拶に来てからはどこかぎこちない感じが続いた。
「智、ご飯できたよ」
「あ、ありがとう」
向かい合ってご飯を食べるけど、TVの音だけが響く。
もう2月に入っても智は話しかけてもどこか一線を感じる。
「…どうしたらいいかな?」
「うーん、それは困ったね」
由里香が紅茶を飲みながら呟く。
今日は由里香と滝の家でバレンタインのお菓子作り。
一緒に作ったお菓子をラッピングした後に余った分でティータイム。
「まー、でもパパさんの気持ちもわかるというか…」
「え?」
「だって私からしたら親友を傷つけられたってことでしょ?
そんなのムカつくし許せないよ」
「…」
「蓮華も連司が私を傷つけてフッたら怒るでしょ?」
滝がキツイ言い方で由里香とフッたらと想像する。
「怒るっていうかブチギレながら殴りに行く」
「お前、それ絶対やるだろ。絶対に別れないけどな」
リビングの入り口から声がして振り返ると滝がいた。
「連司!おかえりなさい!」
「お邪魔してます。絶対やるわよ。相手は滝だし」
「全力で殴られるのが想像つくわ」
由里香の隣に座った滝の手にはケーキが入っていそうな箱。
「ゆりの好きなフルーツタルトあったから買ってきた」
「え!嬉しい!ありがとう!」
ニコニコ笑う由里香を優しい目で見つめる滝。
この二人が幸せそうなのを見てるとこっちも幸せな気分になる。
「中倉の分もあるぞ」
「え?いいの?ありがとう」
「おう。俺、コーヒー淹れるから先食べてていいぞ」
立ち上がった滝はキッチンでコーヒーを淹れる。
由里香が箱を開けるとフルーツタルトが3つ。
「美味しそう」
「美味しいんだー♪ここのタルト♪」
ルンルンでお皿に取り分ける由里香。
可愛いなぁ、なんて思ってたら滝がコーヒーと自分のお皿を持って戻ってきた。
「あれ?早いわね」
「インスタントだし、お湯沸かしてあったからな」
全員がフルーツタルトを受け取ったので、食べることに。
「いただきまーす♪」
「いただきます」
「ほーい」
一口食べるとカスタードの優しい甘さとフルーツの甘さが口に広がる。
「美味しい」
「ね!美味しいよね!」
由里香に言われて頷く。
「で、智がどうしたって?」
「…滝はきっと知ってるわよ」
「いやー、どうだろ?今年入ってから会えてないし」
思わぬ言葉に驚く。
「え?そうなの?」
「なんだかんだ予定合わなくてな。智のツアー終わってから飲むかってなってる」
「ふーん」
そんなことあるか?と思いつつ実家でのことを話す。
「なるほどな…」
「父さんに言われたこと、気にしてるんだろうなってわかるけど」
「そりゃ気にするだろ。智自身がずっと後悔していたことなんだから」
滝はため息をつく。
「あいつは中倉を傷つけた自分を許せなくて仕事を頑張ってたんだ。
中倉の親父さんにそこを言われたら何も言えないし、やっぱりって思うだろ」
「…そっか」
「実家行ってから智の本音を聞いたか?」
「聞いてもはぐらかされるから…」
滝はなるほど、という顔。
「そこを踏み込んでみたらいいんじゃないか?」
その言葉に私は小さく頷いた。
夜、智の家で早めのバレンタイン。
「うまそー」
「バレンタインディナーです」
今年はグラタンとローストビーフにサラダ。
あとは簡単なもの。
「「乾杯」」
智が買ってきてくれたワインで乾杯をする。
私好みのワインだ。
「美味しいー」
「よかった。蓮華のご飯も美味しいよ」
「本当?よかった」
久しぶりに他愛もない会話をして食べていく。
ご飯が終わった後、今回作ったパウンドケーキを出す。
「今回のバレンタイン。いつもありがとう」
「こちらこそありがとう」
智がニコニコで受け取ってくれた。
お皿には抹茶ときなこのパウンドケーキ。
明日の朝は智が早いから持っていける色んな味のプチパン。
「うん、美味い!」
「よかった」
ニコニコで食べる智を見て、本当に好きだな、と思う。
『そこを踏み込んでみたらいいんじゃないか?』
滝の言葉を思い出してフォークを置く。
「智」
「ん?」
「…何を考えてるか教えて欲しいの」
私がそういうと智の空気がピリッとした。
「うちの両親に挨拶してから智が一線を引いてる気がして」
「…うん」
「智のお仕事のことも関わるかもとは思ってる。けど、智だけの問題だけじゃないって思ってる」
智を真っ直ぐ見つめる。
「智と私、二人の問題だと思ってる」
「…」
「だから…教えて欲しいの。智がどう思ってて、どうしたいかって」
そう言うと智は俯いてしまった。
いつもならここで引いてしまう、でもちゃんと向き合いたい。
「今後の人生、ずっと一緒にいたいから一緒に乗り越えたいの」
思っていることを伝えると智は顔を上げた。
「…俺の情けない部分も受け止めてくれる?」
泣きそうな顔に、私も泣きそうになる。
「もちろん」
私が頷くと智は小さく笑った。
あなたに傷つけられた過去は変えられないけど、残りの人生はあなたと一緒にいたいから教えて欲しいの。
ご挨拶後、モヤモヤした関係に悩んでいた蓮華さん。
向かい合う勇気を親友カップルに後押ししてもらいました。
====
いいなど思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションもめちゃ上がって喜び狂い、発狂します( ´ ▽ ` )
感想もお待ちしております(^ ^)




