109、 ケジメはいつかは必要
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本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
4人で飲んでると連司と由里香さんの話になった。
「お前ら、同棲してどんだけだっけ?」
「んーと、次で3年目かな」
「へー、結構長いね」
ハルくんが驚いた顔をした。
「そうなんだよね」
「で、いつプロポーズすんの?」
裕也が刺身を取りながら連司に聞くとちょうど酒を飲んでいた連司はむせた。
それはそれは盛大に。
「お前、汚ねえ」
「連司くん、大丈夫?」
ハルくんが急いでティッシュを渡した。
それを受け取った連司は口の周りとテーブルや床を拭く。
「ハル、悪い」
「ううん、大丈夫」
「裕也お前な!!」
連司が裕也を睨むけど、裕也はシラーッとしてる。
「そりゃ、気になるだろ。中倉も聞いてこないのか?」
「あいつは聞いてこないよ。…俺の覚悟がまだって気づいてるからな」
ムスッとして日本酒を飲んでる連司に俺が反応した。
「そうなの?」
「そーなの。由里香の親友だし、俺のこともわかってるから相談もしてるし」
「確かにそうかもなー。入社時はお前らだけ空気違うから付き合ってるかと思われてたし」
「それはマジで周りの勘違い。俺、入社前研修からゆりが好きだったし」
「えー、その話聞きたい」
ハルくんがワクワクした顔で言うと連司はヤバイと言う顔をした。
「聞きたい?連司が恋に落ちた瞬間」
ニヤニヤする裕也。
「また今度な!!」
こんなに焦ってる連司は久しぶりでちょっと面白い。
チビチビ日本酒を飲みながら眺めてると俺にも矛先が向いた。
「智はどうなんだよ。中倉と同棲とかって」
「一回したよ。でも断られた」
「「は?」」
連司と裕也が驚いて止まる。
ハルくんが苦笑する。
「それは蓮華さん悪くないよ。だって付き合って2日目に言ったんでしょ?」
「は?2日目?」
「それは確かに断られてもしょうがない」
裕也が呆れたように言う。
「だってようやく一緒にいてもいいってなったから」
「そうだとしても段階を踏まないと。ご両親に挨拶だってした方がいい」
連司の言葉にドキッとする。
「そうだよなー。俺も何回か彼女の家族と会ってる」
「裕也は彼女の家族と仲いいよな」
「おん。だからいつ同棲してもいいよって言われてる」
「へー、すごいね」
ハルくんは興味津々。
この業界でそう言う話はあまりできない…というか、うちのグループにはまだ無い話だ。
「連司、挨拶する前日吐きそうな顔してたもんな」
「そりゃ、緊張するだろ」
「え、連司くん、実際挨拶してどうだった?」
ウキウキと文字を背負ってるのがわかる。
「ウエルカムすぎて逆に戸惑った。マジ、全員ゆりみたいな感じだった」
「賑やかだなー」
裕也が苦笑する。
確かに、あの明るい由里香さんだらけだと賑やかだ。
「親父さんなんて「男呑みだー!!」とか言って馴染みの居酒屋に連れててくれた」
「サシで?」
「サシで」
「「「マジで??」」」
思わず俺も声を上げる。
「おかげで今もめちゃくちゃ仲良くさせてもらってる」
「じゃあ、結婚してもいい関係で過ごせそうだね」
ハルくんが言うと連司は頷く。
「智も同棲するならちゃんと挨拶行った方がいいぞ」
裕也に言われて言葉に詰まる。
いつかは蓮華のご両親に結婚前提で付き合ってると挨拶に行こうと決めている
でも蓮華の父親はきっと俺に怒ってる
大事な娘を傷つけた男だから
「…俺はきっと蓮華の親父さんに嫌われてるからなぁ」
俺が呟くと連司とハルくんは意味をわかったのか何も言わない。
「そうなのか?」
「んー…俺、蓮華のこと傷つけてるから」
笑ってるつもりだけど、きっと笑顔では無いだろう。
「それでも中倉を想い続けて会いにきて付き合うってなったんだろ?」
裕也は「それが何か?」みたいな顔でハイボールを飲む。
「傷つけた以上に幸せにするって伝え続ければいいだけだろ」
「え?」
思わず聞き返すと裕也は不思議そうな顔をした。
「だって、そう決めたから中倉に会いに行って告白したんだろ?」
「それは…そうだけど」
「じゃあそれを親父さんに伝え続ければいいだけだろ。智が本気だってわかったら親父さんの気持ちも変わるかもしれないし」
裕也にとっては当たり前でシンプルな考え。
それが今は俺の頭に衝撃を与えた。
「中倉のことを諦めないって決めたならぶつかり続けるだけだろ」
「…裕也、お前そんなに熱い男だったんだな」
連司も予想外だったらしく驚いてる。
「今更?俺は冷静だけど心は熱い男だぞ」
「それ自分で言っちゃうんだ」
3人で盛り上がってるのを眺めながら俺は裕也の言葉を反芻していた。
俺の覚悟が決まるまで時間はかかった。
でも、もう決めた。
「…ご両親にご挨拶に行こうと思ってるんだ」
そう言うと蓮華は驚いて固まる。
「でも絶対幸せにするって決めたから。だからちゃんと挨拶しておきたい」
「今からちゃんと俺の覚悟を伝えたいって思ったんだ」
そう言うと蓮華は「わかった」と呟いた。
俺の決意を伝えに行くんだ。
挨拶に行くことを決めた経緯でした。
裕也くん、冷静沈着なのに熱い男なのです。
次はご挨拶に。
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