107、 挨拶に行きたいと言われた日
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
いつも通り、金曜の仕事帰りに智の家に行く。
夕飯を作っているとピロンッと通知音。
【ごめん、ちょっと押してる!23時ぐらいになるから先に寝てて】
「大変だ」
ちょっと寂しいなと思いつつ返信をする。
【わかった、ご飯は冷蔵庫に入れておくね!お仕事頑張って】
先に出来ていたサラダや和物を小分けにしてラップする。
付き合って1年経ったからこういうことも慣れてきた。
慣れてきたけど、寂しいと思うのも毎回だ。
「…私、本当に智が好きなんだな」
『蓮華って大嶋さんのことになると乙女だよね』
由里香に言われたことを思い出す。
それはちょっと認めるのに抵抗がある。
「もう!ご飯にしよう!」
自分の分のご飯をお皿に盛ってテーブルに運ぶ。
今日は私も遅くなってしまったから鮭の塩焼きとサラダと和物、豆腐の味噌汁。
「いただきます」
うん、今日も美味しくできた。
そう思いながら食べるけれど、どこか味気ない。
智と一緒に食べられない時はいつもだ。
いつも通りに作ってて味は変わらないのにどこか味気ない。
「…一緒に食べるから美味しいのかな」
ふふっと思わず笑う。
【連司と同棲してから毎日が楽しいの!】
由里香の言葉を思い出して、まさにそうだなっと思った。
家に帰ると電気が付いていた。
「ただいまー」
そう声をかけると足音がした。
「おかえりなさい、お疲れ様」
パジャマを着た蓮華。
「ただいま。起きててくれたの?」
「うん。明日土曜日だから遅くても大丈夫」
ふふっと笑う蓮華を抱きしめたいけどお風呂入ってるからさすがに悪い。
「ありがとう」
「今日は焼き鮭なの」
「わ、嬉しい!汗かいたから先に風呂入るね」
「じゃあ鮭焼いてるね」
浴室に行くと湯船が貯まってる。
頭や身体を洗って湯船に浸かると疲れた身体に沁みる。
「はぁぁ〜」
ゆったりしながらこの後のご飯が楽しみだ。
お風呂から上がって髪を乾かしてリビングに行くといい匂い。
「あ、ちょうど出来たよ」
「うまそー」
「ご飯もあるけどどうする?」
「ちょっとだけ食べようかな」
白米をめちゃくちゃ食べたいけど23時過ぎてるからちょっとだけ。
「いただきます」
味噌汁を飲むと沁みる。
「うまーい」
「よかった」
向かい側で白湯を飲みながらクスッと笑う蓮華。
「今日はお酒飲むの?」
「んー、1本だけ飲むかな」
「わかった」
蓮華がグラスとビールを用意してくれた。
「あ、ごめん、ありがとう」
「うん」
そこから他愛もないことを話しながら食べていく。
こんな穏やかな時間を過ごせる週末が本当に楽しみだ。
『蓮華さんのご両親に挨拶したの?』
ハルくんに言われた言葉を思い出す。
「ねぇ、蓮華」
「ん?」
首を傾げる蓮華、いつも通り可愛い。
「…ご両親にご挨拶に行こうと思ってるんだ」
蓮華の空気がピリッとする。
俺は緊張で喉の奥がキュッとなるのを感じた。
智の言葉を理解するのに少し時間がかかった。
「…え?」
「おばさんと啓太くんには電話で一度挨拶したけど…おじさんにもちゃんとしたいなって」
確かに母さんと啓太には電話で話したことはある。
「え、でもなんで急に」
「前から考えてはいたんだ。今すぐ結婚ができる仕事じゃないし、待たせてるのは俺のせいだってわかってる」
その言葉に何も言えない。
「でも絶対幸せにするって決めたから。だからちゃんと挨拶しておきたい」
「…智」
「それに、俺嫌われてると思うし」
そんなことを言われて驚く。
「え?なんで?」
「だって、蓮華のこと傷つけた男だよ。おじさん、許さないでしょ」
「…どうなんだろ」
確かに智がテレビに映ると不機嫌そうな雰囲気を出してる。
それを察したのか智が苦笑する。
「だから、今からちゃんと俺の覚悟を伝えたいって思ったんだ」
「…わかった」
私の返事に智はありがとう、と微笑んだ。
その日、なかなか寝付けなかったのはここだけの話。
挨拶をしたいと言い出した智くん。
何があったかは次のお話でお届けします。
そして智くんのことになると可愛い蓮華さんでした。
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