106、 甘えたいって大事
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されております。
本編の更新は毎週日曜のAM8:00ごろです。
「と1/2」シリーズは不定期です。
大きなトラブルもなく夏が過ぎ、秋も過ぎて冬。
智たちのツアーが始まる時期になった。
「智、今回のツアー、また日程増えたね」
「そうなんだよねー」
ちょっとグッタリした智が呟く。
「嬉しいんだけど、月の土日の半分が地方になっちゃうから蓮華と会えない」
「あー…そうだね」
去年もツアーで2週間会えない期間あったけど、今回はそれが増えた。
しょうがないことだけど、やっぱり寂しい。
「日曜日に作り置きご飯、作りにくるね」
「それは嬉しいけど、蓮華に会いたいってなるんだよなー」
「電話するじゃない」
「そうだけどさぁ」
珍しくグダグダするのが長い。
「私も寂しいもん」
「…うん」
急に大人しくなったので不思議に思って顔を覗くと智の顔が赤い。
「智?」
「…その急に超可愛くデレるの、俺がテレる」
「…そんなつもりはなかったデス」
私の顔も熱くなる。
チュッというリップ音とおでこに柔らかい感触。
「…!!」
「そういうとこも大好きだなー」
ギュッと抱きしめられながら幸せだな、と思った。
平日。
「もー!!聞いてよ蓮華!!」
夜に飲みに行こうと言われて由里香と合流するとすぐに叫ばれた。
「う、うん、聞くからお店に行こう」
「うん!!今日はいっぱい飲む!!」
手を引かれてながらお店に向かう。
滝と何かあったな。
お店についてビールと料理をいくつか注文する。
「で?どうしたの?」
「もー!!連司がさぁ!!」
このカップルは基本的には仲が良い。
仲が良いというかラブラブすぎるぐらいなんだけど、年に1回、爆発することがある。
「最近、片付けしてくれないし、脱いだらそのままだし!!」
「へー、滝、その辺はキチンとしたいって言ってた気がするんだけど」
「疲れてるからって!私も疲れてるもん!!」
ちょうどビールが来たので乾杯をして飲む。
冷たさが喉を通るのを感じつつ、この冷たさで由里香も落ち着いてほしい。
「まぁ、確かに最近の滝は入社して一番ぐらいの忙しさではあるかな」
大手の新規案件の担当になったから、今までにない大手ならではの縛りとかもあるらしく、雨宮と奮闘してる。
「そんなこと言ったら私は毎年毎年忙しいよ!」
由里香がいう毎年は年末調整やら入社対応やらなんやらだろう。
「連司の方が家賃とか多めに負担してくれてるとはいえ、納得いかないもん」
「そうなの?」
「うん。役職手当とか営業成績の歩合とかあるから」
「なるほど」
ビールを飲みながらふと思う。
「由里香たちって同棲始めて結構経つよね?」
「うん、2年ぐらい?」
「それで今までは滝はキチンとしてたんでしょ?」
「それはそうなんだけど…」
おっと、由里香を責めるつもりではないのにそう感じ取られてしまった。
「あ、そうじゃなくて。由里香にちゃんとしたいって思ってる男がそんな風になるんだから心の余裕がないのかなって」
「心の余裕?」
由里香が不思議そうな顔をする。
「うん。滝、本当に由里香のこと大事にしてるから由里香の嫌がることはしないって宣言してたし、見ててもそれは感じるし」
「…」
「別に滝の味方になろうとか全然無いけど、今回は本当に大変そうなんだよね。あの雨宮も頭抱えてたし」
「そうなんだ…」
「だから、家では由里香に甘えたいんじゃない?」
ふふっと笑うと由里香が驚いた顔をする。
「え?」
「あれ?滝って由里香に甘えない?」
「んー…私の方が甘えてるから」
それは想像ができるかも、なんて思う。
「そっか、連司本当に大変なんだ」
「落ち着いたらまたキチンとするんじゃない?根がキチンとしてるから大丈夫でしょ」
そう言ってビールを飲む。
由里香はちょっと反省した感じになった。
「いいじゃない、お互いに甘えて。そういう存在でしょ?」
私の言葉に由里香は頷いた。
「蓮華も甘えてるの?」
そう聞かれて目を逸らす。
「内緒」
「えー!ずるーい!」
その日の夜は楽しい女子会が終電まで続いた。
お互いが甘えたっていいじゃない。
珍しく喧嘩をした連司くんと由里香さん。
次の日には仲直りをしたそうですよ。
蓮華さんはいつでも智くんに甘えられて甘えてなんです。
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