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過去、私を嫌ったキミは今、私を溺愛する  作者: ひなた


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10、 何もできないもどかしさ

「くっそ、あんの担当者、今日変更言いやがって…」

トラブル対応を終えてゆりの家に帰る。

本当は定時で上がってデートだったが、確実に間に合わない時間だったので連絡をしておいた。

同じく彼女と予定があった裕也も巻き込んでしまったので全力で謝った。

『別に連司のせいじゃないだろ』

『でもデートだったろ?』

『彼女には説明したし、今日は飯食って明日デートだったから大丈夫だって』

『でも…』

『お前、気にしすぎ。俺を気にする暇あんなら早よ帰れ』

そう言って追い出された。

今度、飲みを奢ろう。

そう思いながら歩いているとゆりの家に着いた。

部屋の前に着くと合鍵を出す。

「ただいま」

「おかえりなさい!」

ゆりがキッチンから顔を出した。

そのまま玄関に来て抱きついてきてくれた。

「お疲れ様!トラブル大変だったね」

「おー…ごめんな。仕事の後、デートだったのに」

ギューっと抱きしめる。

この瞬間、癒されるなーと思う。

「しょうがないし、怒ってもないよ。デートは明日して、今日はたくさんご飯作ったの!」

靴を脱いでゆりの後を追うといい匂いが広がっていた。

ローテーブルには俺の好きな料理ばかり。

「こんなに作るの大変だったんじゃないか?」

「全然!こう言ったらあれだけど、連司が残業だったから揚げ物とかできちゃった」

ふふッと笑うゆり。

残業になった事を怒らないで、逆に料理がたくさんできた事を伝えてくれる。

俺はいい彼女を持ったな、と心底思った。


二人でゆっくりご飯を食べた後、一緒に片付けをしてゆり特製のチョコケーキが出てきた。

「はい!今年はガトーショコラにしてみた!」

「おー!美味そう」

「遅い時間だからちょっとだけ食べて残りは明日にしよっか」

ニコニコ笑って用意をしてくれる彼女を見て、ずっとこれが続けばいいなといつも思う。

ゆりの部屋にも俺の部屋にもお互いの私物が当たり前のようにある。

だったら同棲を始めた方がいいのでは、とも思っている。

『いい彼女さんだね。絶対に悲しませちゃダメだよ。ずっと後悔することになる』

ふと、智の言葉を思い出す。

前に飲んだ時にゆりの話をした。

その時に言われた言葉だ。

「連司?どうかした?」

切り分けたガトーショコラが置かれる。

俺はハッとして笑った。

「いや、何でもない。美味そうだな」

「甘さは控えめだよ。コーヒー飲むと寝れなくなりそうだからハーブティー」

一緒に置かれたハーブティーからはいい香りがした。

「珍しいな。ハーブティーとか」

「ハーブティーは味によっては好き嫌い分かれるけど、これならどんな人も好きだと思うって蓮華が」

「へー…」

確かに、中倉は高校の時から紅茶やハーブティーが好きだった。

と言っても智に聞いた話だけど。

「いただきます」

「どうぞ!」

一口食べるとチョコの香りに包まれる。

甘すぎない、好みの味。

「美味い!」

「よかったー!」

ゆりもニコニコして食べる。

俺の彼女、可愛いなー。

「あれ?それは?」

ゆりの手元に小さな箱。

「これは蓮華がくれたの。友チョコ交換」

開けると中には生チョコ。


『俺、蓮華が作った生チョコだけは食べれるんだ』

『お菓子作りは得意じゃないけど、生チョコだけは作れるの』

やっぱり、二人は幸せになってほしい。


「連司?」

ゆりが不安そうに顔をのぞいてくる。

「あ…ごめん。ちょっと考え事してた」

「大丈夫?」

「ん。…俺が中倉と高校の同級生だって話はしたろ?」

そう聞くと頷くゆり。

「中倉がその時付き合ってた奴が俺の親友でな。その時のことを思い出してたんだよ」

楽しかったあの頃。二人が幸せそうに笑い合ってるのを見るのが好きだった。

「訳あって親友が中倉に別れようって伝えて別れたんだけど…」

「訳あって?」

ゆりが不思議そうな顔をした。

「ああ。でも、今でもきっと二人は想い合ってると思うんだ」

確実に智はずっと中倉を思い続けていた。

『蓮華…元気にしてる?』

そうでなければ、会うたびにそんな事を聞いてこないだろう。

「二人の問題だから俺は何もできないけど…それがもどかしいなって思う時があるんだ」

困った風に笑うとゆりも悲しそうな顔。

「ごめん、今日話すことじゃなかったな。中倉には内緒な」

「ううん。話してくれてありがとう」

ニコッと笑うゆりに心が軽くなる。

ガトーショコラを一口。

ほろ苦さがあるチョコが口に広がる。


あの頃のように笑い合う二人をまた見れる日はあるのだろうか。

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