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逆転世界からやって来たJKにナンパされたので、色々教えてあげることにした。







 とある駅前を、仕事帰りの男が歩いていた。



マドカ

「あの、おにいさん」


コウイチ

「え? 俺?」



 男、コウイチは、声の主を見た。


 若い女が立っていた。


 女の髪は、いまどき珍しい、黒のロングストレートだった。


 服装は、若者らしい、シンプルで明るいカジュアルコーデだ。


 女子高生くらいか。


 コウイチの見立てでは、そのように見えた。



マドカ

「はい。あなたです」


コウイチ

「何?」


コウイチ

(……かわいいな。この子)



 お世辞抜きに、少女は美しかった。


 アイドルの中でも、上澄みの部類。


 それほどのルックスを持つ美少女だった。



マドカ

「私と、どこか遊びに行きませんか?」



 少女は微笑みながら言った。


 だが、その表情は、どこか固かった。 



コウイチ

(援交? いや。パパ活ってやつか?)


コウイチ

(そんなに金持ってるように見えるかな? 俺って)


コウイチ

「…………」


マドカ

「ダメですかね……?」


コウイチ

「そのどこかっていうのが、どこなのかによるかな」


マドカ

「えっ……」


マドカ

「どこまでならオッケーですか?」


コウイチ

(パパ活って、カフェでお喋りだけとかも有るんだよな?)


コウイチ

(わざわざ金払うほど、女子とのお喋りに飢えてねーんだよな)


コウイチ

「ホテルに行かないなら、遠慮しとく」


マドカ

「マジですか……」


コウイチ

「嫌なら止めとこうぜ。んじゃ」


マドカ

「いえいえいえ! 全然嫌じゃないです!」


コウイチ

「で、いくらだ?」


マドカ

「え?」


コウイチ

「一晩いくらだって聞いてんだよ」


マドカ

「あ……」


マドカ

(お金取る人なんだ。この人……)


マドカ

(やっぱりそんなにうまい話、有るわけ無いよね……)


マドカ

「その……3万円しか持ってないです……」


コウイチ

(お前の持ち金を聞いたわけじゃ無いんだが……)


コウイチ

(アホの子なのか? この子)


コウイチ

「ホテル代は俺が出すし、そういうんじゃなくて……」


コウイチ

「ほら、有るだろ? 手ならいくらとか、口ならいくらとか」


マドカ

「あぅ……」


コウイチ

「もう帰って良いか?」


マドカ

「待って……! 待ってください……!」


マドカ

「なんとか……3万円でまかりませんか?」


コウイチ

「本番?」


マドカ

「はい……。本番で……」


コウイチ

「ん……」


コウイチ

(この見た目で3万なら、安いくらいか)


コウイチ

「良いぞ。それじゃあ行くか」


マドカ

「あっ……」


マドカ

「はい……」



 2人は、近場のラブホテルへと向かった。


 適当に部屋を取り、中へと入った。


 コウイチは、先にシャワーを使用した。


 コウイチが出ると、少女は入れ替わりでシャワールームに入っていった。


 コウイチはベッドの上で、彼女が出てくるのを待った。


 やがて、バスタオル姿の少女が姿を現した。



マドカ

「っ……シャワー上がりました」



 少女は緊張した面持ちで、コウイチの隣に座った。



コウイチ

(挙動不審だな。処女か?)


コウイチ

(けど、処女が援交で本番するか?)


コウイチ

(まあ、することも有るか)


コウイチ

「初めてか? こういうの」


マドカ

「……いけませんか? 初めてだったら」


コウイチ

「いや……」


コウイチ

「金に困ってんのか?」


マドカ

「お金? どうしてですか?」


コウイチ

「援交までして、金が欲しい理由が、有るのかと思ってな」


マドカ

「はい?」


コウイチ

「うん?」


マドカ

「おにいさん、援交したら、お金が増えるみたいに言ってますけど……」


マドカ

「普通は減りますよね?」


コウイチ

「うん?」


マドカ

「はい?」


コウイチ

「俺の金が減って、お前の金が増えるよな?」


マドカ

「私のお金が減って、おにいさんのお金が増えますよね?」


コウイチ

「何言ってんだお前?」


マドカ

「何言ってるんですかおにいさん?」


コウイチ

「…………」


マドカ

「…………」


コウイチ

「お前……」


コウイチ

「カネで男を買ってるビッチなのか?」


マドカ

「ビッチって……男の人に言う言葉でしょう? それ?」


コウイチ

「はぁ?」


コウイチ

「男だったらヤリチンとかで、ビッチは女だろ」


マドカ

「???」



 少女は困惑した様子を見せた。


 2人の会話は、妙に噛み合わなかった。



コウイチ

「お前……ひょっとして……」


コウイチ

「外国人か何かなのか?」


マドカ

「はい?」


マドカ

「私はれっきとしたミズホ人ですけど?」


コウイチ

「やっぱり外国人じゃねえか」


マドカ

「あの、おにいさん?」


マドカ

「ミズホっていうのはこの国の名前ですよ? 頭だいじょうぶですか?」


コウイチ

「…………」



 コウイチは、無言で携帯を操作した。


 そして、世界地図を表示させ、少女に見せた。



コウイチ

「どこに有るんだよ? ミズホって国は」


マドカ

「そこですよ。そこ」



 少女は、島国の1つを指差してみせた。



コウイチ

「違う」


コウイチ

「ここは俺たちの国だ。ミズホなんて国じゃねーよ」



 何か致命的な齟齬が、2人の間で起こっていた。




 ……。




マドカ

「それじゃあこの国じゃあ……女が男を買ったりはしないんですね?」


コウイチ

「この国っていうか、わりと世界共通だと思うが」


コウイチ

「まあ、女性向け風俗とかも有るには有るから、全くってわけでも無いがな」


コウイチ

「けどまあ、男が女を買う方が、一般的だよな」


マドカ

「それじゃあ、私みたいに、町で男をナンパする女っていうのは……」


コウイチ

「まあ、若干ビッチ寄りだな」


マドカ

「ビッチ……私が……」


コウイチ

「気にすんなよ。この国にもビッチは居る」


マドカ

「私はビッチじゃないです!」


コウイチ

「そうなん?」


マドカ

「そうですよ。私はただ……」


マドカ

「ナンパで処女を捨てて、モテモテのヤリマンになりたかっただけなのに……」


コウイチ

「クソビッチじゃん」


マドカ

「私の国だと違うんです!」


コウイチ

「ふーん?」


コウイチ

「そもそもお前、どうやってここに来たんだ?」


マドカ

「……わかりません」


コウイチ

「そんなことあるか?」


マドカ

「けど、そうなんですよ」


マドカ

「普通に家を出て、電車に乗って……」


マドカ

「それで、駅を出て、お兄さんをナンパしました」


マドカ

「そのあいだ、特におかしなことが起きたとも思えませんでした」


マドカ

「自分がいつここに来たのか、全く心当たりが無いんです」


マドカ

「だいたい、この国とミズホで、使ってる文字が同じなんですよ? おかしくないですか?」


コウイチ

「パラワルワールドってやつかもな」


マドカ

「何ですか? それ」


コウイチ

「可能性から枝分かれした平行世界……って感じか」


マドカ

「あっ、世界線ってやつですね」


コウイチ

「自称タイムトラベラーのネチズンが提唱した超理論来たな」


マドカ

「違うんですか?」


コウイチ

「まあそれで良いや」


マドカ

「どうして私はこの世界線に、迷い込んでしまったんでしょうか?」


マドカ

「元の世界に戻る方法は、有るんでしょうか……?」


コウイチ

「俺に聞かれてもなあ」


マドカ

「他人事ですね? それはそうですけど。他人事ですけど」


コウイチ

「そんなことよりセックスしねえ?」


マドカ

「今そういう場合ですか!?」


コウイチ

「性なる力によって、異世界への扉が開かれるかもしれないじゃん?」


マドカ

「無いです」


コウイチ

「そ」


コウイチ

「セックスしないならどうするんだよ?」


マドカ

「……まずは身の安全を、確保したいです」


コウイチ

「危険か? 今」


マドカ

「帰る家が無いかもしれません」


コウイチ

「かもな」


マドカ

「けど、ひょっとしたら有るかもしれません」


コウイチ

「かもな」


マドカ

「……もし良かったら、おにいさん、家まで一緒に来てくれませんか?」


コウイチ

「良いけど」


コウイチ

「結局セックスはしねーの?」


マドカ

「どんだけしたいんですか? お兄さん、実は女ですか?」


コウイチ

「何の疑問だよ」


コウイチ

「お前こそ、援交JKのくせに、俺のチ○ポしゃぶりたく無いのかよ?」


マドカ

「そりゃしゃぶりたいですけど、今はそれどころじゃないと思うんですが?」


マドカ

「それと、その顔でチ○ポとか言うの止めてもらえます?」


コウイチ

「どの顔だよ」


マドカ

「その顔です。その顔」


コウイチ

「わからん」


コウイチ

「……じゃ、行くか」


マドカ

「良いんですか?」


コウイチ

「ここでゴネてもダッセェだけだろ」


マドカ

「……ありがとうございます」



 2人はラブホテルを出た。


 そして、駅へと向かった。


 電車に乗り、別の駅から町に出た。


 それから住宅地を、少し歩いた。


 しばらくして、少女は立ち止まった。



マドカ

「……あれです」



 少女は家を指差した。


 ごく普通な、中流の一戸建てが、そこには有った。


 立地を考えれば、一家の暮らしぶりは、平均よりは上になるだろう。



マドカ

「あれが私の家……のはずなんですが」


コウイチ

「…………」


マドカ

「…………」


コウイチ

「カミングホームしねえの?」


マドカ

「怖いんですが……」


コウイチ

「甘えんな。誰だって怖い」


マドカ

「私と同じ立場の人います!?」


マドカ

「……おにいさん」


コウイチ

「ん?」


マドカ

「何か元気が出ることしてくれませんか?」


コウイチ

「えっ? 青○か?」


マドカ

「そこまでは言ってませんよ!?」


コウイチ

「じゃあどうしろって言うんだよ?(半ギレ」


マドカ

「キスとか……」


コウイチ

「お前、出会ったばっかの男のキスでやる気でんの?」


マドカ

「出ますねぇ」


コウイチ

「変態かよ」


マドカ

「JKなら普通です!」


コウイチ

「左様か」



 コウイチは、すっと少女に手を伸ばした。


 そして、彼女の顎を軽く掴み、唇を奪った。



マドカ

「ん……」


コウイチ

「やる気出たか?」


マドカ

「……はい」


コウイチ

「んじゃ、行ってこい」


マドカ

「頑張ります!」



 少女は、家を囲む塀へと向かった。


 そして、インターホンのスイッチを押した。


 少女はインターホンに向かって、何かを話しかけた。


 話の内容は、コウイチには聞こえなかった。


 やがて扉が開いた。


 少女に良く似た女性が、姿を現した。


 少女の両目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。


 少女は泣きながら、女性に強く抱きついた。



コウイチ

「……家は有ったか」


コウイチ

「元気でな。変態JK」



 コウイチは、少女に背を向けて立ち去った。




 ……。




 翌朝。



マドカ

「おにいさん。おにいさん」



 コウイチは駅前で、少女に声をかけられた。



コウイチ

「変態JK」


マドカ

「普通のJKです!」


コウイチ

「それで、普通のJKが何やってんだ?」


マドカ

「おにいさんを待ってたんですよ」


コウイチ

「えっストーカー? こわい」


マドカ

「そうかもしれませんけど!?」


コウイチ

「で?」


マドカ

「……昨日は励ましていただき、ありがとうございました」


コウイチ

「気にすんなよ」


コウイチ

「そんだけ?」


マドカ

「その……」


マドカ

「昨日の続きとか、どうでしょうか?」


コウイチ

「ありがたい申し出だが……」


コウイチ

「今からダンジョンなんだよな。俺」


マドカ

「アシハラにもダンジョンとか有るんですか?」


コウイチ

「ああ。ミズホって国にもダンジョンが有るのか?」


マドカ

「そのとおりです」


マドカ

「ちょうど良いです。私がおにいさんの攻略を手助けしますよ」


コウイチ

「お前が?」


マドカ

「こう見えて私、A級の冒険者ですから」


コウイチ

「そ」


コウイチ

「ちなみに俺、S級な」


マドカ

「えっ?」


コウイチ

「アシハラのダンジョンのこと、いろいろ教えてやるよ」



 コウイチは、駅に向かって歩いていった。


 少女は置いていかれないように、コウイチの背中を、慌てて追いかけるのだった。






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