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005

 


「ん。ふぁ~」


 


 朝になり今日は魔力の暴走もなく起きることが出来た。魔力酔いの時でなければしっかりと起きることが出来る。寧ろ昨日の事が有ったからかジェリーの魔力吸収量が若干多くなっているようだ。


 


「おはよー ジェリー」


 


 僕は目をこすりながらパジャマ姿のまま窓に向かいその近くにある僕お手製の籠で寝ているジェリーを抱き上げる。うん朝一のこのひんやり感たまらないね。


 ジェリーも起きたようで体を震わせて反応した。


 


「そうだうちの子の紹介動画も出さなきゃね」


 


 昨日は思いつかなかったが防具作成の時はシェルファやジェリーに手伝いをしてもらうことが有るのでそのうち動画に出る事が有るだろう。シェルファは他の作業も有るから早々出すことはないだろうが、ジェリーは結構頻繁に手伝ってもらっているので早々にやらなくてはならない。見た目によらずこの子は器用なのだ。


 


「そうだ、動画の反応……って、ええ!?」


 


 昨日の動画の撮影・編集の後はちーちゃんとゆっくり過ごすことにしていたので通知音が鳴る端末が有ると気になってしまうので放置していた。夕食を食べた後は、これから必要になるであろう装備の下ごしらえに夢中になってしまい寝る少し前にシェルファに止められるまで作業をしていた。その後お風呂に入ってすぐに就寝してしまったので今さっきまで動画の反応に気が向いていなかったのだ。


 


 どうやらみことさんとちーちゃんが本気で宣伝したらしく動画はかなりの再生数に上っている。コメント欄には純粋に絵と声がかわいいとかの声もあったが、確認したい事が有るからライブ楽しみにしてるという胸も記載されていた。その中には最近話題のDtuberの人もいるので驚きだ。


 それに関してはみことさんからのDMでどういう経緯でこうなったのかを送ってきてくれていてちーちゃんからは「ちょっとやりすぎたかも」とRineでメッセージが来ていた。


 コメントに一気に書き込まれても読み取れないかもしれないで質問に関してはちーちゃんに使い方を教えて貰った質問箱ましゅまろに募集することを動画の視聴数に驚いたことのコメントとともにトゥイッターに呟き日常に戻るのであった。


 


 ──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────-


 


 


「──―きいた?」


「うん」


 


 教室に付くと今日は昨日と違い賑やかだった。どうしたのかと思い僕はクラスの中でも交流の深い輪に入って聞いてみることにした。


 


「ねえ、何か賑やかだけど新情報?」


「おっと、柊殿でござるか」


 


 答えてくれた彼は城戸 浩介きど こうすけ、忍者を目指して日々鍛錬しているらしい。語尾のせいで胡散臭さが出てしまっているが実力はそれなりにある。


 


「話題は大きく分けて2つでござるね。一つはこのクラスに転校生が来るということまあ冒険者高校なら珍しいことでもないでござるが、さて何が目的やら」


 


 何処の高校でも最低限ダンジョンについて習うが、冒険者高校はダンジョンの攻略者を絶やさないために少しでも生存率を上げるための教育が行われている。なので卒業後、探索をメインにする人たちは経験を積むために通う高校を変えるのは珍しいことではない。特に移動する時期が一番多いのはパーティーを組む前の時期で今が丁度その時期だったということだ。


 


「まあこの周辺は結構素材の種類が違う高ランクダンジョンが多いから」


「植物系、鉱石系、動物系、古代系と目白押しで御座るし、さらには低ランクながら宇宙系もあるよね~」


 


 僕が予想を立てると、輪に加わっていた女子も僕が話に入ったのに気付いたのか説明に加わってきた。右から暁 帆夏あかつき ほのかさん、工藤 時雨くどう しぐれさん、水無月 明奈みなづき あきなさんだ。


 ダンジョンのランクは攻略難易度で決まる。そしてその難易度は発生した場所の歴史の深さ、そこの珍しさや知名度等で決められているらしくその種類も様々だ。いまだに新たなダンジョンの発生も有るらしく今後もますます増えていくことであろう。因みにダンジョンの発生とは土地そのものがダンジョンになると言う訳ではなく、ダンジョンの入り口(洞窟や渦など様々な形)が発生することを言う。


 


 


「ここら辺の有名どころだと【白神ダンジョン】か【十和田湖ダンジョン】狙いかな~?」


「鉱物狙いだと世界最大の二重カルデア湖の十和田湖、植物狙いだとおよそ1万年続く天然林の白神で御座ろうな。大穴で八幡平かもしれませんぞ。あそこは龍が稀に出現するでござるから」


「ふーん……産出が増えるならいいけど、何処に行くにしろ転校生の年齢だとパーティー必須だけどね」


 


 白神ダンジョンはその歴史から珍しい植物が、十和田湖はそのから神秘の力を持つ鉱石が、八幡平ではドラゴンアイという現象と周辺地域の伝承が昇華し龍の存在が確認されている。


 ダンジョン法に基づいて高ランクダンジョンにおいて未成年は例え冒険者ランクに問題が無くともソロで入場することは禁じられている。これを破ると罰金と冒険者ランクの降格が待っている。


 そして、冒険者は信用が命なのでそんな前科がついてしまうと、ギルドの依頼を受けるのにもペナルティーがついてしまう。


 僕もそう簡単に法律を破る人に依頼を頼みたいとは思わないしね。


 


「それで、もう一つの方は?」


「はて? もう一つの方に関しては柊殿の方かご存じかと思っていたのでござるが」


「?」


「Vtuberの守衛ゆいかの装備の制作者が判明したんだよ!!」


「本人も今まで知らなかったんだね~」


「絵師さんからの半年前の()()のための選別ですってね」


()()が近場で起こるなんて運がいいのか悪いのかって話だよね~」


「あ~あれね」


 


 守衛ゆいかとは世界で唯一のバーチャルDtuberである。Dtuberとして活動するにあたってネックな所は必ず実写の動画が出さなければならないところだ。Vtuberを行っている彼女も身バレの事を考えてデビューしたての頃はその活動は行っていなかった。それを解決したのが装備だ。彼女が使っている装備(正確には装備の中にある1つの装飾品)にはたとえその装備をつける前の姿を見られていても、周りに強制的に自分が守衛ユイカであると誤認させる効果を持ったスキルが付与されている。


 流石に画面の先までは誤魔化すことは出来ないのでダンジョン配信の時はその上に仮面をつけてライブ配信をしている。


 おかげかそのころ停滞していた彼女の視聴者数は一気に上がり今やVtuber会では知らない者はいないとまで言われている。


 


「でもな~あの装備まだまだ改りょモガッ!?」


「ちょっと!?」


「予想通りですけど!?」


「周りに聞かれたら!?」


「やばいでござるよ!?」


 


 そう。守衛ユイカの装備を作ったのは他の誰でもない僕だったのだ。だが僕はその時創った装備には納得していない。そのことを口に出そうとしたら4人に口をふさがれてしまった。


 そういえばこの4人プラスちーちゃんにあの時使った生地の耐久テストの手伝いをしてもらったんだった。


 属性の適正は有ってもうまく使うことは出来ないものは今も有る。だから使える人を集めると言ってちーちゃんが連れてきたのがこの4人だった。城戸君は手先が器用でいろんな武器が使えるのでそちらを担当してもらった。他の三人は当時上手く使えなかった属性を使ってもらっていた。今もたまに耐久テストを手伝ってもらってたり手伝いをしてもらってたりする。


 


「ということはやはり天結らいじゅは柊殿でござったか」


「声を聴いた時に似てるとは思ってたけどね」


「もう、気を付けてよ? 私たちは自分で辿り着いたけど~」


「むやみやたらに広げる必要はないですよ。もしかしたら転校生の目的は柊殿かもしれないでござるからな」


「ふぇ?」


 


 予想だにしない憶測が城戸君から飛んできて僕は素っ頓狂な声を上げてしまった。


 


「飛鳥君が目的ってどういうこと?」


「根拠はあるの?」


「詳しく説明なさい」


「も、もちろんでござる。まず「そこから先は俺が説明するさ」


 


 女子三人もそこまでの考えに至っていないようで説明を求めている。若干圧が強い気がするが……


 城戸君が説明をはじめようとしたときに彼の声を遮って声が聞こえて来た。振り返るとそこには結構遅くまで配信をやっていたのか、少し眠たそうな気配がするちーちゃんがいた。


 


「あっ、ちーちゃんだ! 眠そうだけど大丈夫?」


「ああ、大丈夫……って、ちょっとそこは私の心配じゃなくて自分の心配をするところでしょ!」


「だってもし何かあったとしてもそう簡単にはやられないし、どんな人かもわからないしね」


「それは、そうだけど……」


「飛鳥君気楽すぎ~」


「まあ確かに、今気にしても仕方ないですからね」


「そうだよ。なんで飛鳥君が目的になるかは気になるけどまだそうとは決まってないんだから」


「そうでござるな。拙僧もさやばしったでござる」


 


 会う前から人を悪く言うものではないしそんなことしていたら仲良くなるにもなれないよね。因みにこの面子はちーくんの過去は伝えてないがVtuberをやっていることも理由も知っている。皆驚きはしたものの案外簡単に受け入れてくれた。だからこそ昨日の配信から僕がVtuberを始めることに気が付いたのだろう。


 


「まあそれについては後でになるな。もう朝礼が始まる」


「もうそんな時間?」


 


 時計を確認すると確かに朝礼の時間になってたので僕たちは各自席に戻るのであった

あれについてはどのようなことか感づく方もいると思いますが内密にお願いいたします。

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