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魔人化プロジェクト発動

「んー。これは……」

「ね、レオ様!私、絵が上手ですよね!」

「いや、そっちじゃな無くてだな…」


 俺達はレイダが描いた忌み子の文様の摸写図を見比べていた。

 レイダが自慢するように案外上手に描けているのだがそこではなく、文様の絵柄にいくつかのパターンがある事が浮き彫りになったのだ。


「大別すると三種類か」

「そのようですね」


 里の忌み子九人と俺のを合わせて十枚の文様画を大別してみると、木の葉のような文様が三枚、菊の花に似た文様が六枚、鳴門巻きのようなグルグルした螺旋文様が一枚。


 言葉の便宜上、『木の葉』、『菊』、『螺旋』と呼ぶことにした。


「多分意味があるんだろうが、全然検討が付かないな」

「レオ様は螺旋文様ですよね。ここの忌み子とは種類が違うようです」

「うん。俺は人族だから別の文様? ってわけでもないしな」


 能力や何かの適正の違いのようにも考えられるが、俺以外が小さい子供なので比較しようがない。


 この辺りの研究について、ニャンゴも加わりたいと申し出があったが丁重にお断りした。

 開示して良い情報と隠す情報をしっかりと吟味して管理したいのだ。

 

 そのくらいこの『忌み子から神子』案件はデリケートな問題だ。

 万が一国家規模でこの情報が漏れた場合、一気に勢力地図が塗り替えられるかもしれない。


 ニャンゴとは必ずこの里に利益をもたらす事を条件に、忌み子の治療と魔力の抽出、文様の研究結果の事など、いくつかの情報漏洩防止を約束してもらった。


 研究はこれからになりそうだ。

 もっとサンプル数が欲しい。

 他の里や村なども忌み子の調査をすべきなのだろうか。




◇◇◇




 昼食のあと、昼寝から覚めると外で剣を打ち合う音が聞こえてきた。

 瞼を擦りながら外に出てみるとナロウとエナが剣を交わしていた。

 今までで初めて見た光景だった。


「なにやってるの?」


 ナロウとエナは俺を見ると手を止める。

 エナはそそくさと家の中に入って仕事を始めた。


「少し時間に余裕が出来ましたのでこうして剣の訓練をしておりました。屋敷でも時間があればやっていましたよ?」


 ナロウは汗を拭きながら答える。

 全然知らなかった。


 屋敷に居た頃にも剣を合わせる音は外から聞こえていたが、警備兵だけがしている事だと勘違いしていたようだ。


「ところでレオ様、ご相談がありまして……」

「え? なに?」


 なんか嫌な予感がする。


「実は私の身体に魔石を何個か埋め込んで欲しいのです」

「はぁぁぁぁあああああ?? ナロウ、何言ってんの!」


 突然このおじさんは何を言ってるんだ。

 レイダ以上の突き抜けぶりに俺は唖然とする。

 振り向くと玄関からエナがそっと顔だけ出して薄く微笑む様子を俺に見せる。


 はぁ? エナもか!?

 俺の目線を追ってナロウが答えた。


「と、言いますか、レオ様の使用人全ての要望です」


 使用人全員て……。魔石を身体に埋め込むとか、なに怖い事考えてんの。


「ナロウさんよ。君たち、頭は大丈夫デスカ?」

「はい、至って正常ですとも」


「……ちょ、ちょっと全員部屋に集めてくれる?」

「はい、勿論です」


 と言うか、部屋に戻ったら全員揃っていた。


「ナロウがレオ様を突然驚かすような物言いをしてしまい、大変申し訳ありませんでした」


 エナが何故か俺に謝る。

 もしかしてこの一件の黒幕は彼女なのだろうか。

 だとしたら怖い。


 エナは見た目に反して最長老であり、かつ老獪な手練れ、まさしく孤老(ころう)だ。

 生きてる年数と経験値が違う。


「レオ様、何か不謹慎な事でも言いましたか?」

「いえ、まだ言ってはいません」


 いかん。配下につい敬語を使ってしまった。


 俺は結局説得に負け、ナロウから順番に魔石の埋め込みの外科魔術を行うことになったのだ。

 結局、俺と同様魔術を使えるようになって強くなりたいという事だ。


 『我が主を助けたい。守りたい』


 そう言われると断ることなど出来ないし、なんとなく子供が大人達に言い()()()()()()()が半端ない。


 ま、(ことわり)では成立している現象なので不可能では無いと思っているが。




◇◇◇




「い、いいのか?」

「はい、()()()()行ってください」

「ナロウ、怖い表現しないでくれる?」


 部屋で布団を敷き、ナロウを寝かせて外科魔術を始める。

 ナロウは上半身裸だ。

 なんかおっさんの割に無駄な贅肉が無く、細マッチョでかっこいい。


 一応、神経を麻痺させる『痛み止め』魔術をナロウに付与する。

 俺は胸骨のすぐ下、鳩尾の辺りに魔石を載せる。

 そして、魔石にナロウの身体と馴染ませるイメージを付与し、上から手の力で負荷をかける。


「いくぞ」

「はい……」


 俺が押し込む負荷で魔石がゆっくりとナロウの身体に沈んでいく。


「痛たっ……。あっ……ごめんなさ……うぐっ」

「おい、レイダ!お前が()()言うなっ!」


 俺が横を睨むと、思わず口走ったレイダにエナが隣から高速指突を脇腹に叩き込んでいた。

 エナ、怖いよ……


 半分ほど魔石が埋まった時点で手を放す。


 次は魔石と身体との回路を繋ぐ作業だ。

 ナロウの身体の薄い魔力の流れと魔石とのバイパスを繋げるイメージ。

 くすんでいた魔石の表面が少しづつ(つや)を取り戻していく。

 

「ナロウ大丈夫か?」

「はい、問題ありません」

「では次に移る」


 俺は魔石に複数の魔術を付与することが出来るようになっているので、そのまま大気中の魔素を吸収し、魔力に変換する魔術を細かくパラメータに設定を始めた。


 これで魔力を急激に消費しない限り、魔力が枯渇することは無いだろう。


「良し完了だ。どうだ?」

「そうですね魔石を埋められてる部分は若干の違和感を感じますが、他は大丈夫です」


「恐らくだが、このままだとナロウも忌み子と同じ症状になると思う。 数日間は大丈夫だと思うが、それまでに魔力の圧縮と整流化を教えるからマスターしてくれ」

「御意に……」


「その後は魔術を教える。これからやる事はたくさんある!他のみんなも同じだ!」

「はいっ!」




◇◇◇




 ふふふ。めちゃ緊張する。

 さっさとダリルの外科魔術も終わらせ、いよいよだ。

 いよいよ、女性陣の外科魔術タイムがやって来ました!


 とうとうレイダやエナの肢体を正々堂々と拝む出来るのだ。

 はち切れんばかりの胸に過激にくびれた腰、ぽこんと膨らむ小さなお尻のレイダ。


 胸は控えめだがスレンダーな身体にしっかりと存在感を残し、純白な肌が大人の色香を醸し出すエナ。

 

 俺がただの七歳坊やだと思うことなかれ。

 実質年齢三十歳の俺がしっかりと二人の身体を堪能してあげるとしよう。


「男性陣は外へ出ていけ。ここからは俺の()かん……いや、女性達の外科魔術の時間だ」


  レイダとエナは()()()()した仕草で両手で胸を隠すように警戒する。


 いかん。欲望がダダ漏れだったようだ。


「では、お願いします」

「ん?下着も取ってくださいね」


 レイダがブラジャーのまま横になっていた。

 下はパンツだ。


「レオ様。胸を魔靴の要領で隠すことは出来ますよね?」


 横から()()の効いたエナの低い声が響く。

 

「え?……下着はと、取らなきゃ……」

「「出来ますよね?」」


 やばい、これは俺の命の危険があるやつだ。


「あっそうだ、出来る。うん、出来るわ。す、凄いなぁ、エナは天才ですかぁ?」


 俺は心の中で泣きながら二人に大事な部分が隠れる『暗黒ブラジャー』の魔術を付与した。


『ちっ。ったくエロガキが…』


 あ、エナ様、心の声が……口から漏れちゃってます。



「ではレイダ、行くよ」

「はい。優しく……お願いします」

「だからそう言う言い方はよせっ!」


 心がすっかりブルーになってる俺はレイダのお腹に載せた魔石を身体に押し付ける。


「ん……んんっ」


 顔を赤くして痛がる表情のレイダ。

 え、エロい。


 こいつ、まだ()()()()()()みたいな事を……



「「「だから痛いってんだろっ!」」」


「ひでぶっ!!」



 レイダの渾身のストレートで俺は部屋の隅まで吹っ飛んだ。



 あ、『痛み止め』の魔術を忘れてた。


 こうして俺の配下達は魔石が埋め込まれた改造人間『魔人』となってしまった。

 本当にこれで良いのか?




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