第3話
待ち合わせには遅刻した彼だが、その埋め合わせと言わんばかりに、いつも以上に彼は優しかった。
とても幸せな気分で、彼の部屋で一晩を過ごして、翌朝。
帰り支度を整えている途中で、衝撃発言が耳に飛び込んでくる。
「結婚しよう」
「……え?」
驚きのあまり、ショルダーバッグを落としてしまった。
そんな私に微笑みを向けながら、彼は言葉を続ける。
「ほら、俺たちってさ。大学時代から付き合い続けて、もう社会人も二年目になるだろ。だから、そろそろ……」
「……」
少しの間、私は絶句。「本気?」と聞き返すことも出来ずに、まじまじと彼の顔を見つめてしまう。
彼の目は、全く泳いでいなかった。つまり尋ねるまでもなく、嘘ではないということだ!
無理にでも自分の気持ちを落ち着けてから、冷静に考えてみる。
プロポーズとしては、あまり様になっていない言葉であり、全くロマンティックではない。でも、そもそも流れで付き合い始めた私たちなのだから、これもお似合いかもしれない。
今まで私は、結婚なんて真剣に考えたことなかったけれど……。プロポーズされて初めて、自分の気持ちに気づいた。
だから、
「嬉しい! もちろんOKだよ!」
満面の笑みを浮かべて、彼に飛びかかるのだった。