第9戒 後悔先に立たず
丑井 牡美
年齢 27歳 職業 OL
プロフィール
とある会社に勤める普通のOL。仲の良い友達を1人持つ。
よく一緒にお茶を飲んだり旅行したりしている。
備考
ある時を境に友達の友達と会うことになる。
順位 3位(¥704,000)
死因 餓死
私の名前は丑井 牡美です。私は今教会にいます。ずっとお祈りを捧げています。せめて、お祈りを捧げなくてはいけないのです。
私がお祈りを始めるようになったのはつい3日前のことです。私は友達に酷いことをしました。
始めはちょっとしたいたずらのつもりでした。肩をポンポン叩いて頬に指をさしたり、用件もないのに名前を呼んだりするだけでした。友達はそんな私のおふざけをおふざけと受け取ってくれていましたし、なにより笑ってくれていたので、コミュニケーションの一環として楽しい時間がただ過ぎていくだけでした。
時が過ぎると、友達と仲の良い友達、いわゆる友達の友達2人とも親交が増えていきました。何度も会うことで緊張がほぐれていくと、私は友達にいつもどおりからかい始めました。しかし、その日を境に友達の様子がおかしくなりました。私の顔を見れば睨みつけて即座に立ち去っていきます。そして、いつもその後ろを2人が追いかけていきました。私は、私の知らないところで物事が進んでいることに恐怖を感じ始めました。
ある日、私は廊下の曲がり角で友達と鉢合わせしてしまいました。友達は私を見ると、すぐに背を向け去っていきました。私は胸に痛みを感じると、すぐに友達の腕を掴みました。手放さないようにとても強く握りました。友達は腕に抱えていた書類を床に落とし、
「痛い!離してっ!」
目が合うだけでぞっとしました。友達は歯を食いしばって、私が掴んだ腕を何度も引き抜こうとしていました。
「早く離してよ!この××××!」
途端、私は空いていた片手で友達の頬を思いっきり叩きました。友達は表情は見せないまま私の腕から風のようにすり抜け、そのまま去っていきました。虚空を掴む手に温もりを感じました。私はその手を確認すると、そこには1粒の雫がこぼれていました。
それからというのも、私はその人を無視し続けた。その人がなぜかずぶ濡れになっていようが、服がボロボロになっていようが、無視し続けた。
そして、その人はこの世を絶った。
涙など出る筈もなかった。むしろ、その人が居なくなったことで心が晴れた。自業自得だと、そう思った。
2ヶ月後、その人のパソコンに残っていた遺書が見つかった。その内容は
【丑井牡美ちゃん。牡美ちゃんがイジメに関わっていないことを知った頃には、私は空を飛んでいます。さようなら。】
とても短い遺書でした。私はそれを伝えられた時、膝から崩れ落ちました。あの2人を止められず、そして友達苦しみを分からなかった。
それで本当に友達なの?
意を決した私は人目に付かない山奥の小屋に身を潜めました。そこで彼女への懺悔を捧げることに決めました。
そうして丑井はここにいる。写真立てに入った彼女の写真を目の前に置き、それに向かって祈りを捧げる。飲まず食わずで身体がやせ細り、血管や骨が浮き出ている。髪も脂で艶がかっているが、それでも祈りをやめることはなかった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
と、すがるようにお詫びを続ける。
日が明けると、更に丑井は弱体が進み、ついには声が出なくなる。しかし、それでも唇を動かし続ける。丑井は自分の命の限界を悟ると、水のように彼女への想いが湧きだす。
(私があの2人に気付いていれば。私があなたに睨まれるようになったことを知っていれば。あなたの腕を掴んだあの日に気付いていれば。あなたは最期にあんなに私を想ってくれていたのに……。私は―。)
一滴の雫が目からあふれ落ちる。雫は重力に従って、頬から顎の先端へとつたい、太ももに落ちていく。
すると、祈る手が太ももまで降り、頭は右肩に寄り始める。




