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殺人ダービー  作者: 未来叶慧
6/12

第6戒 互いの気持ちは

双川(ふたかわ) 一子(ひとね)

年齢 15歳 職業 学生


プロフィール

ある高等学校に通っている学生。双子の妹がいる。

妹とは仲が良く2人で何でも共有している。


備考

双子で同じ人を好きになる。


双川(ふたかわ) 二子(ふたこ)

年齢 15歳 職業 学生


プロフィール

ある高等学校に通っている学生。双子の姉がいる。

妹とは仲が良く2人で何でも共有している。


備考

双子で同じ人を好きになる。


順位 6位(¥646,400)

死因 自殺(双川 一子), 刺殺(双川 二子)

 私の名前は双川ふたかわ 一子ひとね。そして私には双子の妹がいる。妹の名前は双川ふたかわ 二子ふたこ。とてもよく似た容姿で、とてもよく似た性格だった。私たちはなんでも2人で共有して生きてきた。

 同じ幸せ、同じ悲しみ、同じ場所、同じ時間。食べる時も遊ぶ時も寝る時も、いつも一緒だった。2人で1つ、2人で1人だった。

 私たちは同じ高校に入り、そして、同じ人を好きになった。彼のことについて毎晩のように語りつくした。私が見えなかった部分は二子が、二子が知らないことは私が教えた。二子に彼のことを離すたびに夢の中にいるようにふわふわとした気持ちになった。

 でも、そんな幸せは永遠ではなかった。そして、私たちは双子と言えど、人間だった。

 同じで同じじゃなかった。


 「一子、ただいま~。」

 二子が寝室にドアを開けっ放しにして入って来る。すると、目の前には勉強机の近くにある回る椅子に座っている一子の姿があった。張り詰めるような雰囲気が部屋に漂う。。二子は雰囲気で察した。一子は怒っていることを。一子の怒りの原因を探るように恐る恐る苦笑いで一子に声を掛ける。

 「一子、きょ、今日は、帰るの、は、早かったね。」

 当たり障りのない会話をしながら勉強机の隣にスクールバッグを置く。たどたどしさが目立つ。一子は静かに椅子から立ち上がり、扉を閉める。そして、カギを閉める。

 一子は扉を背にして、微笑みながら二子を見つめる。

 「二子、明日から休みだよ。」

 「……えっ?」

 二子はその表情を見ておぞましさを感じた。一子は微笑みかけているが、これは微笑みではない。

 二子の経験がそう言っている。

 一子は微笑みながら二子にゆっくりと近づく。二子は後ずさりをしながら、視線だけで抜け道を探す。一子の足取りが早くなる。二子はその瞬間を見計らって左側の余分に空いたスペースに潜りこむ。扉まであと少し。二子は勢いよくドアノブに手を伸ばす。

 すると、身体が引き戻されるような感覚に襲われる。ドアノブが指先まで来ているのにその先へ進めない。左腕に温もりを感じる。少しずつ、少しずつ頭を後ろに向ける。一子が微笑みを向ける。そのまま視線を落とすと、二子の左腕の先に一子の腕が繋がれているように見える。感じたことのない恐怖に言葉が詰まる。

 一子は微笑んだまま、

 「二子、逃げられると思った?私たちはいつも一緒だったでしょ?」

 といい、握る力を強める。

 「っ!」

 二子は一子のあまりの力の強さに声にならない声が唇から漏れる。一子は表情を変えずに問いかける。

 「あら、二子、どうしたの?」

 二子は震えながら唇を動かす。そして、ようやく声が出る。

 「い、痛いよ、お姉ちゃん。」

 その瞬間、一子の動きが一瞬止まる。二子は言い終えてハッと気付く。その後、二子を連れながらベッドに近づくと、二子をベッドの上に寝るように仰向けに押し倒し、一子は二子のお腹の上に乗り、両腕を取り押さえる。

 「お姉ちゃん。そう呼ぶのは久しぶりね、私のかわいい妹の二子。」

 一子の口角が上がったままだが、視線は二子をとらえて離さない。すると、一子は何かを思い出したように顔を上げる。

 「そうだ。かわいい妹にプレゼントがあるの。」

 そういうと、一子は二子から降り、二子の置いたスクールバッグと反対側にあるスクールバッグに向かう。二子は息を荒くして頭を左に動かす。左腕にくっきりと残った指の痕、その先にぼんあやりと映る一子から、絶対に逃がさないという意志を感じた。

 一子はバッグの中を漁りながら二子に話しかける。

 「今日はね、貯めてたお小遣いでたくさんプレゼントを買ったのよ。」

 そう言い終えると、一子はバッグから取り出した物を持ちやすいように持ち替えながら二子に近づく。二子は一子の持つ物を見て表情が更に歪む。

 「な、何それ。」 

 一子は更に目を細めると、再び二子のお腹に乗ると、二子の目の前に持ってきた物を見せつける。

 「見て分からないの?手錠4つと猿ぐつわよ。私たちのベッドのフレームがパイプの柵でちょうど良かったわ。」

 一子は言い終えると、手錠の片側を二子の両手足首につけ始める。1つ、また1つ空いた手で二子の足や手を押さえながら手錠をつけていく。その後、一子は立ち上がり、ベッドフレームにもう片方の手錠を1つずつ付けていく。そして、手元に残った猿ぐつわをっ見つめる。その後、その先に見える二子に視線を移し、

 「これは……。まだ使わなくていっか。」

 と言い、ベッドの空いたスペースに置く。

そして、一子は二子の耳元に唇を近づけて、

 「まだ、いっぱいお話したいことあるからね。」

 と囁き、上体を起こす。すると、一子は二子の様子が変わったことに気付く。

 「あら、なにか言いたそうね、二子。」

 二子は歯を食いしばりながら一子を見つめる。たくさんの涙がこめかみを伝う。

 「お姉ちゃん、どうしてこんなことするの?私、なにか悪いことしたの?」

 それを聞いた一子は真顔になる。冷たく鋭い視線が二子に刺さる。

 「ねぇ、二子。今日、彼に告白したんだよね?そして、彼がOKサイン、出したんだよね?」

 一子の声が少しずつ震え始める。小刻みに身体が震えているのが二子のお腹にも伝わる。二子はそれを聞いて目を見開く。そして、唇を震わせながら話し出す。

 「どう、して、それ、を―。」

 すると、一子は二子の喉元を両手で力いっぱいに掴む。二子は必死に手をどかせようとするも手錠のせいで一子の腕まで手を近づけることができない。呼吸が止まる。口を開け、上下に動かす。足をばたつかせる。ベッドが激しく揺れる音が響く。すると、遠くの方から声が聞こえる。

 「ちょっと~。もう暗いんだから静かにしなさいよ~。」

 それを聞くと一子は手をすぐに離し、

 「お母さん、うるさくしてごめ~ん。」

 と扉の方を向きながら大きな声で応える。その後、ゆっくりと二子に向き直る。二子は席こんだままだ。自分の手を喉元にあてがうこともできず、姿勢も仰向きのままで一方に咳が止まらない。その様子をじっと見つめている一子は口を開く。

 「ねぇ、告白、したんだよね?もう首絞めないから、ちゃんと答えて。」

 静かで小さい声はあるが確かに殺意のこもった声だった。二子は上手く呼吸ができるようになると、深呼吸を2回して話し出す。

 「たしかにわたしは今日彼に告白したよ。でも、お姉ちゃんが先に告白したんだろうなって思って、それで。」

 二子は言い終えると、一子は二子のお腹から降り、再びスクールバッグに向かう。二子はやっとお腹の苦しみから解放されて深呼吸を繰り返す。

 一子は二子に背を向け何かを隠しながら、二子に話しかける。

 「二子、私たち、なんでも一緒って約束、したよね?」

 二子は涙ぐみながら一子の方を向き、

 「……したね。でも、どうしてここまでするの?わたしが彼と付き合うことになったから!?」

 と答える。一子は振り向きざまに

 「最近の100円ショップって凄いよね。こんなものまで売ってるんだもん。」

 と話を逸らす。その右手には銀色に光る殺意が握られていた。二子は衝撃的な光景に声が出ない。一子は二子に近づきながら答える。

 「もっと色々してからこれを使おうと思ったけど、もう我慢できないわ。」

 殺意と共に表情のない一子が近づく。

 「どうしてここまでするの、ね。それはね、私とあなたは同じようで違う人間だからよ。隠してたけれど、私はあなたと違って嫉妬深いの。あなたが持っているものがぜ~んぶ羨ましかった。でも、楽しかったのよ?」

 一子は少しずつ、少しずつ、近づく。

 「二子、約束は守らなきゃ。」

 一子は二子のお腹の上で膝立ちになり、殺意を心臓に向ける。

 「一子お姉ちゃん、これからどうするの?私の代わりにでもなるの?」

 二子は悲しいような憐れむような声で一子に問いかける。一子は微笑みながら答える。

 「代わり?言ったでしょ。私とあなたは同じようで違うの。それは容姿も同じ。彼はあなたの全てを好いてる。愛している。それは私という代替品では成り立たないのよ?」

 一子は口が止まらない。せき止められていた黒い感情が次々と押し寄せる。

 「私とあなたはここで終わり。また生まれ変わったら今度こそは2人で1つよ。」

 二子は目を瞑る。雫が、こぼれる。

 (こんなに苦しんでいたこと、分かってあげられなくてごめんね、一子。)

 「さよなら、二子。」

 低い別れの挨拶と共に殺意が勢いよく振り下ろされる。それは二子の心臓に深く深く刺さる。

 真顔の一子に二子の血が飛び散る。そして、一子の目にはもう二度と動かない妹が映る。

 一子は赤く染まった包丁を引き抜くと、自身の胸元に刃先をあてる。そこに約束を乗せて。

 「死ぬ時も一緒なんだから。」

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