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殺人ダービー  作者: 未来叶慧
4/12

第4戒 されど裏切られて。

細魚(さより) 麗子(れいこ)

年齢 22歳 職業 なし


プロフィール

ある王国に暮らすお嬢様。家族は父のみ。母は4年前に病死。

執事のお爺さんとは大の仲良し。

夢は母の築いたような優しく温かい国を築くこと。


備考

最近、家族関係を気にかけている様子有り。


順位 8位(¥630,700)

死因 集団暴行

 わたくしの名前は細魚さより 麗子れいこ。とある王国のお嬢様。毎日食べて、毎日遊んで、いい気持ち。じいやも執事もコックもとても優しくて快適。お母様は市民を大切に考え、その結果この国は大国になりましたの。しかし、4年前母は突然の病で命を引き取ってしまい、その日からお父様が仕切ることになりましたわ。しかし、窓から見える市民の姿は活気に溢れているようには見えなくなりましたの。私のことも気にかけていない様子で、なんだか恐怖感がありますの。

 わたくしはお母様が築いてきたような優しくて温かい国を取り戻すことが夢ですわ。


 細魚は広々としたダイニングルームで20人程と食事のできるテーブルを父親と2人で囲み、食事をする。食事を進めながら時折父親の顔の様子をうかがっては何かを考えるように料理に向き直る。

 父親がナイフとフォークを皿の上でに寄せると、ナプキンで右口元を拭き始める。その時、細魚が料理を飲み込んだ後に、父親に話しかける。

 「お父様、最近民の元気が無いように見受けられますの。そこで、わたくし、考えましたの。元気が無いときはお腹を空かせたとき。そこで、民のためにお食事パーティーを開くのはどうでしょう?」

 父親は娘と視線をあ口元をわさず、口元を丁寧に拭き続ける。細魚は歯を食いしばり、大きな声を上げる。

 「お父様!」

 すると、父親は手を止め、口を開くもまだ視線を合わせようとはしない。

 「麗子。民は今のままで十分活気にあふれている。いつも窓の外から見えるだろう?私の城に向かって大声を上げる者の姿が。商売を営む者の姿が。皆、元気に生きている。何も心配する必要はない。」

 低く重い言葉が細魚に重圧をかける。反論させまいという威圧が背中から感じる。あまりの威圧に細魚は言葉を詰まらせる。そんな細魚を見かねた父親は

 「他に言いたいことはあるか?」

 と問いかける。細魚は胸元で右手首を左手で掴んだまま黙り込む。父親は返事がないことを確認すると、再ナプキンをテーブルに置いて、椅子から立ち上がり、扉のある方へ歩き始める。細魚は手を震わせながら父親の背中を見つめる。

 父親の姿が見えなくなると、細魚は料理と向き合う。そして、部屋全体に響いわたるように透き通った声で呼ぶ。

 「じいや~。じいや~。どこにいるの~?」

 すると、細魚が声を上げた4秒後にじいやがかしこまりながら陰から現れる。じいやは細魚の椅子の左斜め後ろに立ち止まると、

 「麗子お嬢様、どうなさいましたか?」

 と子供をなだめるような穏やかな声で話しかける。細魚は呟くような声で話し還す。

 「じいや、わたくしは民ともっと仲良くすれば今よりももっと快適で楽しい毎日になると思いますの。でも。お父様は私の声を、いや、私を気に入らないような雰囲気をしてますの。」

 細魚は目を瞑りながら大きく溜息を吐くと、

 「じいやはわたくしがどうしたらよいと思います?」

 じいやは少し間を置いた後に、細魚の横に足を進め、左で口元を隠しながら耳打ちを始める。

 「麗子お嬢様、明後日のディナーはお父上に内緒でパーティーを開きましょう。お父上には私が話を通しておきますよ。」

 細魚はそれを聞くと、驚きで顔を上げて、じいやの方を向く。じいやは微笑みながら軽く頷く。細魚は微笑みで安堵し、微笑み返す。

 細魚は前を向くと、得意げな顔で

 「さて、食べ残しはいけませね。」

 と言い、料理を黙々と食べ進める。 

 

 「ごちそうさま。」

 細魚は皿の右下側にフォークとナイフをそろえ置き、ナプキンで口元を拭く。

 拭き終えると、口元にあてた面を内側にしてたたんでテーブルの上に置き、椅子を引いて立ち上がる。その後、じいやの方を向き、

 「じいや、少し待っていてくださる?」

 と言うと、じいやは深々とお辞儀しながら、

 「かしこまりました、麗子お嬢様。」

 と返事する。細魚はその様子を見た後に、軽快な足取りでキッチンに繋がる扉に向かう。扉の前に立ち止まると、扉をノックし、

 「失礼いたします。」

 と扉に向かって伝え、静かに扉を押して開ける。中にいるコックたちが一斉に細魚の方を向くと、トックブランシュを取り、お辞儀をする。細魚はその様子に少し眉をひそめ、

 「皆さん、顔を上げて。」

 と伝えると、コック達がおずおずと頭を上げ始める。細魚はコック全員が顔を上げたのを確認すると、

 「皆さん、毎回言っているように、私の前ではそんなにかしこまらないで。私はあなた方に素敵で美味しいお料理を提供していた射ている身ですもの。」

 その後、手を口元にあて、咳ばらいを一つすると、

 「本日のディナーも素晴らしい出来栄えでした。口当たりもわたくしの好みを把握されており、食べやすかったですわ。今日も、わたくしにお料理を提供いただき、ありがとううございました。」

 と伝え、両手をお腹の上に重ねて深々とお辞儀をする。

 しばらくお辞儀をした後、顔をあげ扉を閉める。その後、振り返ると右側にじいやが軽くお辞儀をしながら立っていた。細魚はじいやの方を向き、

 「じいや、行きますわよ。」

 と伝え、じいやの目の前を通り過ぎる。じいやは細魚が通り過ぎるのを確認してから右斜め後ろを歩き始める。

 廊下に出る扉に着くと細魚は扉を軽く押す。すると、どうしたことだろう。扉はピクリとも動かない。

 「あら?」

 力を入れて強く押すも開かない。その次は体重を乗せて押す。じいやも両手を扉にあてて体重を乗せて押す。

 しかし、扉は開かない。

 2人が諦めかけた瞬間、反対側から勢いよく扉が開く。細魚は押し出され、じいやは細魚を受け止める。

 「麗子お嬢様、ケガはありませんか?」

 「だ、大丈夫よ。受け止めてくれてありがとう。」

 2人は前を向くと、1人の伯爵と武器を持った数多の市民が目に映る。伯爵は2人を見下しながらにやつく。

 「おやおや、これはこれは、麗子お嬢様ではないですか。ご機嫌うるわしゅう。」

 伯爵は嫌味交じりに挨拶する。

 細魚は態勢を整えると、ドレスの埃をはらって、

 「源伯爵、ここになんのようですの?」

 と強めに問いかける。すると、伯爵はこらえられず大声で笑いだす。

 「あっはっはっは!麗子お嬢様、いや、細魚麗子は挨拶も返せないのですか?」

 それを聞くと、じいやは細魚の前に立ち、身構えながら

 「麗子お嬢様にそのような無礼な態度は許しませんぞ。」

 伯爵はにやつきがおさまらない。

 「お嬢様ぁ?もう違うんだよ!」

 伯爵は手に持った丸まった紙を開きながら話を続ける。

 「この文書見えます?あなた方の政権はもうおしまいですよ。これからこの国は正式に私のものだ!」

 その後、頭を後ろにかしげ、目を細めて見下しながら、

 「それにしても、市民の怒りも聞かずによくここまで生きてこれたもんだ。」

 そう言い残すと、伯爵は市民の方を向き、

 「今こそ!あなた方の怒りをぶつける時ですよ!」

 その号令と共に市民が一斉にダイニングルームに押し寄せる。そして、じいやは護衛と抵抗も数の前には虚しく、早々に串刺しにされ、細魚は屈辱的な行為を繰り返し受け続けた挙句、めった刺しにされる。

 伯爵はその様子を見て呟く。

 「高貴なるものが堕ちる様はいつみても壮観だ。こんなに素晴らしものはない。」

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