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王の后に相応しい教育

 ヤン様が自室に戻ってくるが、顔が真っ赤でした。

「ヤン様? 顔が赤いですわ? どうされました?」

 体調が悪いのかな? と心配していると


「……しゃ、しゃお……あの。……あの」

「? どうされました?」

 すごいモジモジされてる。


「……しゃお、あの……き、きさき……って」

 きさき。后。


 その言葉で私の顔も赤くなるのがわかった。

「お、おにいさまが。シャオが后になるから……って」

 レン様、話題がタイムリーすぎませんか? その話今ヤン様にしたんですか?


「……え、ええっと……」私も汗をかいてどもる。

 すると

「しゃ、シャオは。……き、きさきって……いや?」

 いや? と言われましても。

 そんな訳はないのですが。


「わ、わたしは……その。年上でして。ヤン様にふさわしいか……と、いうと……」

 どもったまま話をする。


「……いや?」

「そ! そんなわけありません!? 身に余る光栄です!!!」

 私の言葉に、にこーっと微笑まれ


「……よかった」

 可愛い。めっちゃ可愛い。


「シャオ、后だから、一緒に寝よう?」

 にこー。

 寝る。寝る。


 いやいやいや。って、あれか。添い寝だ。

 添い寝のことか。


 添い寝も「レン様の元婚約者なので」と断ってたからなぁ。


「……分かりました。そうですね。ヤン様の婚約者になるのですものね?」

 悪戯っぽく笑うと、ヤン様はまた赤面して


「うんっ! 僕の婚約者だよ! シャオ!」



 その日の夜。寝れない。

 理由はヤン様。

 ぎゅーーーっと抱きついているのだ。


「しゃおー♪」

 幸せそうな顔をしているヤン様。

 いや、それだけならともかく。結構モゾモゾ動くのである。


 寝れません。


「……あ、あの? ヤン様。寝ましょう?」

 ずっと横になってるのに起きて抱きついてるのだ。

「だって嬉しいんだもん!!!」

 笑顔。この笑顔見るとなぁ。断れない。


 結局その日は悶々としたまま力尽きて寝た。



 =====================


「皆には本当に申し訳なく思っている。だが、ここに逃げてきて分かったのだ。これは宿命だと」

 レンはヤンが帰った後、ピヨ含めた女官全員を呼び寄せ話をしていた。


「我が王家は限界だった。あの王族同士の殺し合いからも明らかだ。存亡の危機ですら団結できない王族達。滅ぶのは当然。だが、ヤンが残った。これこそが我が先祖が残した最後の希望」

 ぐるっと女官を見渡し。


「そして、この俺とお主達を残した。ヤンはまだ不完全だ。俺の宿命はヤンを王に育てること。そしてシャオ。あの娘が南西に追放したのも今考えれば宿命。あの娘がヤンを支えたからこそ今がある。だがシャオも不完全だ。あの娘がヤンで満足するとは思えんのだ。どうか、シャオを教育してほしい。ヤンに相応しい后にしてほしい」


 レンの言葉に

『はい! お任せください! レン様!』

 女官は声を揃え答えた。


 =====================

 朝起きたらピヨが仁王立ちしてました。


「寝坊ですわ」

 なんか鞭持ってるし。


「やあ、ピヨ。爽やかな朝だね」

 横がなんか暑いなぁ、と思ったらヤン様がスヤスヤ寝てる。


 そしてなんか服引っ張ってましてね。乳房がまんまはみ出てますね。

 あれ?


「いきなり受け入れるあたり素晴らしいと思いますわ」

 いやいや、違う違う。これはですね


「いや、ピヨピヨ。誤解だよ。誤解。房事せっくすなんてしてないから」

 私の言葉に目がつり上がるピヨ。


「下品な言葉を使わない」

「ごめんなさい」


「シャオ。これから私達があなたを教育することになりましたので」

 教育?


「なんの?」

「后に相応しい教育です」



 后に相応しい。とは?

「無理無理っ!? 骨折れるからぁぁぁっっ!!!」

 なにされているか? 柔軟体操。


 私はレン様の元婚約者だったので房術(セックスの訓練)は習っていました。

 でもですね、こんな限界まで脚広げないよ。


「あのですね、レン様とヤン様では体格が全然違います。スムーズな閨事せっくすの為にもこれぐらいは開かないと……」

「いだいいだいっ!!!」

 いたいよ!


「大体ヤン様の成人の儀は五年後じゃない! 今からやってどうするのさ!?」

 涙目で訴える私に


「今の乱世、王族は死ぬか捕らえられるかしている。そもそも兄から弟に継がせようとしているこの状況で成人の儀など待つ意味があるのか? とレン様は仰っております」


 ???

 え?


「精通が出来たらすぐにでも子を為せ、という事です。さあ訓練の続き」

 今度は思いっきり腰を曲げられる。


「いたいぃぃっっ!!! 本気で痛いからぁぁっっ!!!」


 私の絶叫が街中に響き渡った。



 =====================

 西軍と順軍の連合軍は南東に向けて出発していたが、場所は北方と南方の境にある大河に沿って移動していた。


「本当に軍を引くっすかね?」

 ザンリは楽しそうに問いかける。


「ああ。軍の動きを見れば明らかだ。今は食糧と財宝を回収している」

 リジンジョウが答える。


 ウェインとソンケワンも側にいるが、二人はとくに喋らない。


「それを守る必要は?」

「乱戦になれば民ごと殺すぞ。我々はな」

「キャハハハハハハハッッ!!! そうそう! 区別なんて無理無理っ! ザンリも気をつけなよ、目の前にいたら殺すからさっ!」

 ソンケワンがようやく喋るが


「……相変わらずぶっこわれてるっすねー」

 ザンリはこの3人を知っている。

 元々ザンリも西軍に行こうとはしていたのだ。


 だが西軍の長兄ハイセンとそりが合わず順軍に残っていたのだ。


 するとウェインが指を指す。

 遠くの土煙。


 軍勢。


「完璧に予想通りと」

「対岸に安全に渡ろうとすればこの沿岸から船だ。さあ、殺すぞ。我等らしい戦い方で、殺して、殺して、殺して、殺し回ろう」




 南部からの撤退を訴えていたラムダだが、採用されたタイミングが遅すぎた。


 また南部の軍もそこまで一気に軍が迫るとも思っていなかった。

 いつものように仲間割れが始まるだろうと高をくくっていたのだ。


 その結果、完全に待ち伏せされていた。

 撤退するつもりだったので気持ちも緩んでいた。そこに襲いかかった死を恐れない軍隊。


「キャハハハハハハハッッ!!! 死ね死ね死ね死ねっっ!!!! 臓物くわせろぉぉぉっっ!!!!」

「オラァァァッッ!!! 血じゃぁあああああっっっ!!!」


 清軍は逃げようとしたが、逃げ道になる川を背に塞いで襲いかかったため、進んだ道を引き上げるしかない。

 だが、そちらにも別働隊の各街の領主軍が展開しており、次から次へと降伏した。


 結果、ヤン率いる南西軍は南方全てを支配する事になった。


 また昔の王国が王都としていた都が解放されたため、そこで王朝を開くことも可能となった。


 ここに来てようやく北方で捕らわれていた王族達もそれを知るようになった。


 レンとヤンの兄弟が南方を取り戻した。

 そして再び北に向かおうとしている。と


 =====================


「情報屋の言っとる事は本当じゃった。南方は既に固めたそうじゃ」

「……ヤンがレンを取り返し、南方を占拠し直した……北方に攻め上がれますかね?」


 北で捕らわれている王族二人。

 王族はバラバラにして捕らえられていたが、この二人は親子で、親が立ち上がれないため二人セットにされていた。


「西賊と順賊の力を借りているらしいの。ミィンジャオの残兵達はまともに活用しておらん。この状況ではいずれ破綻はしよう……しかし情報屋が言っておった、『シャオが司令塔だ』とな」


「シャオ……ライディラ殿の娘でしたな……」

「ライディラは最後まで順賊と西賊との和睦を言い続けていた。同じ民族だろうと。シャオはライディラからなにかを託されておるのかもしれん。だとすれば西賊と順賊が言いなりな理由は分かる。と、なればだ」


「……なれば?」

「シャオを娶れば西賊と順賊はこちらに付こう。あの娘が鍵になる。我等にもチャンスがあると言うことだ」

 その王族、ガディルアは大声で笑った。

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