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動物軍団、北へ突撃する

 リジンジョウさんを招いてみんなで話し合いをする事にした。


 ヤン様の意向を話し、具体的な話をする事になったのだが

「二王をそのままにして、ここを離れるという訳にはいかないかと」

 リジンジョウさんは以前よりも控えめにしてくれる声で話す。


「はい。リジンジョウ様の言うとおりです。シャオ様。今大西軍がいなくなると二王はそのままここに攻めいってきます」

 ダオ


「もうしわけありませんがぁぁ、ショウサの兵だけではぁぁ……」

 領主さん


 皆の意見は「とりあえず北に救いに行くにしても、二王をどうにかしないとダメ」と


「……ヤン様に王になる意思はない。兄上だったレン様は王位継承権はありましたが、傍流で末弟のヤン様は王位継承権もありませんでした。ヤン様の願いは捕らえられているお兄様達の解放です。どうにかなりませんか?」


「ならば、とばかりに攻めいってくるだけです」

「既に他の王族を殺している方々です。話し合いはするにしても……そもそも目的の『兄の解放』が認められないかと。なにぶん後継争いで戦ってるわけですから」

「わたしもぉ、ダオさんとぉ、同意見ですぅ」


 うん

「……王族って馬鹿なんですか?」

 思わず口にでる。王族批判なんて王宮でしたら死刑だけど


「馬鹿なので我々がリョウンで好き放題できていたのです」

「……全ての王族が愚かではありませんが……いや、そ

 のはずなんですが……なんでこんなに……とは、さすがのわたしも……」

「すくなくともぉ、二王は愚かですぅ……」


 つまりだ。レン様達の解放の前に、まずは二王の征伐と。


「シャオ様。まずアレン様は容易い。付き添っている兵達はボロボロで、攻めればすぐに敗れます。食糧も金も足りてない。なので豊かな南西部を狙っているのですが。問題はコウル様。順賊の残兵も取り込み兵士の数は多い。豊かな南東部にいましたから金も食糧もあります。簡単には攻め滅ぼせません」

 リジンジョウさん。


「……なんで、その兵士を満賊に向けないんですか……?」

「順賊は言うことを聞きません。攻め滅ぼした満賊の下は嫌だから付き添っているだけです。現に内訌が絶えず、戦争している最中に勝手に引き上げる有り様です」

 滅茶苦茶だった。


「コウル様がこちらを狙ってる理由は財宝です。金で求心力をあげたいと狙っている。なので二王はこのままでは絶対に攻めてくる。ですが攻め滅ぼすには時間がかかる」


 私は考え込む。

 そうこうしている間にレン様や他の皆。特に女官。ピヨは無事なのか?

 もう一年経ってしまった。

 王宮が落ちてからは半年以上。


 なにをされているのか


「……二手に、別れるわけには……?」

 一番簡単なのはこれ。


 あくまでも通りすがるだけなのだ。

 そこまで多くの兵士は要らない。


 でもそれにダオと領主さんは渋い顔をする。


「……リジンジョウ様がどっちに行くにしても、別の方はどなたと話し合えば……?」

 確かに。リジンジョウさんとしか話してないしなぁ。


 でもリジンジョウさんは

「おお、言われてみれば」

 ……?


「そうですね。私とソンケワンが残りますので、三柱の一人ウェインに行かせます。奴の指揮する3000で十分かと。徹底して無口ですが信頼できる男です。……ソンケワンは、色々危ないのでご一緒させるわけにはいきませんが……」


『二手に別れる』という発想がなかったらしい。大丈夫ですか、色々。


「ウェインは騎馬……いや、馬じゃないんですが。まあ動物に跨がって移動する部隊です。移動速度も速い。ただウェインは王族の顔など知りません。どなたかご一緒しなければ……」



 一緒に行く人。王族が分かる人。

 ヤン様と私とダオぐらいしかいない。


 ヤン様を連れていくわけにはいかない。

 となると私かダオ。


 なのだがダオは

「当然私が行くべきなのですが、シャオ様が仰る女官の区別はつきません。それでよろしければ……」

 そう。女官は他の男性の前には行かない。

 ピヨの顔は知らないのである。他の女官の顔も。

 となれば


「私が行きます」

 他の女官も助けられるなら助けてあげたい。

 陰険ランドではあったが顔見知りである。


「シャオ! 危険なことは……」

「はい。危険な事はしません。いざとなれば逃げますから」


 心配するヤン様に話をするが

(まあ、怖いですよ、そりゃ……)

 敵だらけの土地に行くのだ。それでも行かないといけない。

 助け出さないと。


 婚約破棄されようがレン様はレン様。

 それとピヨ。

 この二人は救い出す。



 王都目指した部隊が編成されたと言うので見に行った。

 そうしたら

「な、なんですか? これ?」


 虎がいて、デカい猫がいて。あとなんだか分からない巨大な動物もいっぱいいる。

 その上に兵士が跨がっている。


「シャオ様。ウェインの部隊はこうやって動物に跨がり移動します。動物を手懐けるのはプロです。それで、シャオ様はこちらにお乗りください」

 リジンジョウさんが案内してくれる。

 それは一番デカい動物に括り付けられた籠。


「これは『象』と言います。南西の異民族がよく使う動物です。この通りデカいので多少の兵士など問題になりません。今回はあくまでも救出ですから、ウェインの部隊の中でも精鋭1000で向かいます。シャオ様はウェインが操る象の籠の中でお過ごしください」


「……」

 象の前にはスキンヘッドで、顔中にお経が書かれた男性がいた。

 なんですか、あれ。


「こちらがウェインです。ウェインはとにかく寡黙ですが話は通じます。遠慮なくお伝えください。ただ、喋れと言っても喋りはしません」


 思ったより若そうに見えるし、意外と顔付きはいい気がするのだが、なんですかこの顔中に書いてあるお経。

 めっちゃ怖いんですけど。


 でもウェインと呼ばれたその人は礼儀正しく頭を下げた。



 象さんに乗って移動。

 揺れは全然しません。馬車より快適。

 また籠と言ってもかなり広い。

 ちゃんと横になるスペースもあり、またいちいち登り降りしなくてもいいように、保存食が大量に用意されていた。


 籠から外を覗くと

『アワワワワワワワワッッ!!』

 みんな奇声をあげながら、凄い速度で移動していた。


 いや、ここ敵地に入ってるんですよね?

 大丈夫ですか? こんな奇声あげて。


 移動は本当に順調だった。

 半日ぐらい走り続けて、動物達が休憩できるスペース見つけたらそこで1日は終わり。


 周りを囲って警戒しながら交代で寝る。

 ウェインさんは無言で地図を示してくれた。

 それは移動経路の説明。


 元々ミィンジャオ国は広い。特に王都のある北方は街道や街以外はそんなに人が入らない。


 都は北東にあるわけなんですが、とりあえず街とかあんまりない北西部に向けてまっすぐ進む。

 そして、北西部についたら、そっからは人の通らない荒野を一気に東に向かって進むと。


 確かに籠から覗くと全然人いないんだよね。

 人が通らない動物が進むような道を真っ直ぐ動物に跨がって行くという。


 斜めに移動すれば速いけど闘いになれば騒ぎになるし、足止めになる。


 そういう点では遠回りでも敵を避けた方がいい。



 それから僅か10日。

「……」

 動物達の休憩時間にウェインさんが手招きするので行くと、また地図を示される。

 その位置は


「? 王宮の近くがどうしました?」

 王宮のやや北側を示している。

 するとウェインさんは一回ぐるっと動物達を指差して、また地図の場所を示す。


「……? ……えっ? ま、まさか。もうここにいるんですか!?」

 それに「うんうん」と頷くウェインさん。


 そして指でジェッシャー。


「あ。近くについたけど、このあとどこに行けばいい? と」

 またうんうんと頷く。


 そうだよね。漠然と王都と言ってもどこにいるのか。まだ王宮にいると言うのも考えにくい。

 郊外に移動させられているのかも知れない。


 すると一人の兵が近づく。


「我々は動物の見せ物団として王都に近づきます。その間にシャオ様は情報を集めて頂けませんでしょうか?」


 おお。なるほど。確かに多彩な動物いっぱいだからそう見えるわ。


「分かりました。私が聞き込んできます」



 久しぶりの王都。

 隣にはウェインさん。

 二人きりである。


 護衛として来てもらっている。

 王都は想像していたより平和だったが、明らかに家は壊れてるし、歩いている人達が違う気がする。


 満賊と呼ばれる異民族の人達が多い。

 格好が特殊だから目立つ。


 因みに私達の格好は南西の異民族の民族衣装。

 動物の見せ物団の宣伝として王都にやってきた設定です。


 情報収集と言っても、王族がどこに捕らえられているかなんて、民間人に聞いても分かるわけがない。


 なので心当たりがある。

 情報くれる人。


「すみませーん。情報買いにきましたー!」

 明るく言ってドアを開ける。


 ボロボロの入口。でも中は広い。


 王宮にいたときに何度か利用した場所。


 情報屋だ。

 ハッキリ言うと信用ならない。

 私が来た情報だって売られる。

 でも今回は情報聞いたら速攻で乗り込む。

 売らせる時間も与えない。


「……なんだ? 南蛮か?」

 奥からおっさんが来る。

 私がシャオだと気付いていなさそうだけど、顔芸なんていくらでもする人達だ。


「元ミィンジャオ国の王族と女官に見せたい芸がありまして」

 そう言って金貨を広げる。


 金貨ならばいっぱいある。

「誰と誰だ」

 情報屋は余計な事は言わない。


「王族のレンと、女官はピヨ」

「……待ってろ」

 奥にいく。

 この間に衛兵呼ばれる危険もあるのだが、すぐに出てきた。


「……二人とも同じ場所だ。ここから北のハルバイアという駐屯地におる。ただし、レンがいるのはそこなだけで、他の王族はバラバラに拘束されている」

「どうも。これ口止め料ね。私たちの情報売るのは1日だけ待ってね。じゃあそういう事で」

 すぐに出る。場所は分かった。

 情報が売られて移動させられないうちに急いで向かわないと。


 すると

「……3日待ってやる。シャオ、頑張れよ」

 やっぱりバレてました。

「……そして、そちらは西軍のウェインか。大西の残兵とヤン様が組んだのは事実のようだな。だが南西部だけで満足するのか? と疑っていたよ。だが違うんだな。頑張ってくれ。満賊は気に入らないんでな」



「ウェインさん、すぐに移動します。敵にはバレた前提で動く。ハルバイアまで1日で行けますよね?」

 早歩きしながらウェインさんに地図を見せる。


「あの人達は嘘の情報は流さない。プロですからね。でも金が絡まない事は平然と嘘をつく。恐らく口止め料の1日は待ってくれますが、3日の口約束は守られない。ですから急いで行きましょう。油断していたら待ち伏せされる」


「……」

 ウェインさんも頷く。


 私たちは郊外で待っていた兵達と合流するなり一気に移動した。



 =====================


「シャオだ。奴が司令塔か。なるほどな」

 情報屋グェインは髭を触りながら呟いていた。


 清軍は北方を一気に占拠した。

 ミィンジャオ国の王達は団結するどころか、王位継承を争って殺し合っている。


 豊かな南東部も占拠し終わり、後は南部中央部と、南西部。辺境だけ。


 それがここにきて進撃が止まった。

 南西部にいた西軍がリョウンを占拠し徹底して破壊。

 これにより西を攻めていた清軍は重要な食糧調達地のリョウン地方を占領するこができなくなり、食糧の問題からこれ以上西を攻めることが不可能になった。


 一方で南への進撃も西軍の残党が抵抗。

 南にいるミィンジャオ国の王族二人の勢力は滅ぶ寸前だったが、西軍と合流されるのを嫌った清軍は一回軍を止めることとした。


 今まで通り、放っておけば仲間割れで自滅すると思われていた。


 ところが


「わざわざレンを救いに来た。レンを旗頭に戦う。まあシャオならそう考えるだろうな」

「叔父貴、情報はどうします?本当に3日待ちます?」

 部下の言葉に


「受け取ったのは1日分だ。明日流す」

「へい。満族の誰に売りましょう」

「……ちげーよ。満族じゃねえ。ミィンジャオの王族の生き残り、ミィンジャオ派に売れ。南西で勢力を確保したヤン率いる南西軍は、捕らわれた王族を助け出し北方に攻めあがる、とな」


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