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待ちぼうけの人達

「……シャオ様、ライディラ様がおられなかったら。清は一度は大陸制覇を成し遂げたでしょう。ですが、その後に深刻な反乱が必ず起こった。ラムダが清に付いたから一気に進撃できましたが、いつまでもラムダが清に従うとも思えない。なにしろ清から見れば異民族で、裏切り者の将軍です。行く先は殺すか殺されるか。そうなればどうなったか。またゼンウラと王都の反乱からも分かるように、異民族支配の抵抗は凄まじい。満賊の人数は少ない。必ずや乱れましたでしょう」


「だからって! 王族を殺して回る必要がどこに!!! 教義、教義って! この恥知らずは教義に逆らって生きているじゃないですか!!!」


 父を指差す。


「我らが知恵知らずの為です。ライディラ様は懇切丁寧に我等に託そうと教えましたが、私は長い話は苦手で寝ましたし、ソンケワンは聞く耳もたないし、ウェインに至っては途中で勝手に抜け出して旅に出たぐらいです」


 なにやってんの君達。

「ウェインが帰ってくるのが遅かったらショウサの援軍も間に合いませんでした。割と深刻な話だったのです。それでやむを得ず……」


 まあそこらへんの事情はあったにせよだ。

「だったら責任もって生き延びなさい! 生きて詫びなさい!」


「……全くもって正論だがそれは出来ぬ。まだ話が途中だったな。三人の王族はミィンジャオの先王までの血は引いてなかった。女神信仰において、この『今までの血の断絶』は必須なのだ。変えようがない。そして俺が死を保留にした理由は、父の死は順番を問うてないのだ。女神降臨の為に父は死ぬが、逆を言えば女神が降臨するまでは父は死ぬ必要がない。だからこれが可能だっただけだ。教義に矛盾はない。ここで死に、女神は蘇る」


 そう言って、父は刃を取り出し……

「リジンジョウさん!!! 止めて!!!」

 自分の腹に刃を刺そうとする父に飛びかかる。


 リジンジョウさんはむしろ飛びかかる私を止めようとするが


『ザシュッ!!!』

「…………」

「はい?」


 思いっきり差し込もうとした刃、なのだが、途中で止まった。


 血がボタボタ垂れる。

 でも、刃先が入ったぐらい。


「……ライディラ様、そのように角度で差し込もうとすると、鍛え上げられた腹筋を貫通しません……」

 リジンジョウさんが冷静に突っ込む。

 どうも刺し方が間違ってたらしい。


「……正直、痛いは痛いが……」

「刃の使い方が間違っています」

 親父、今まで剣なんて使ってませんからね。


 血もそんなに垂れてない。

「というか、なんでそんなに鍛えてるんですか……?」


「後は死ぬだけだと思ったら、鍛えたくなってな」

 なんでしょうね、本当に。


「リジンジョウさん。手当てしてください。親父、死ねないのが定めみたいですよ。あきらめてください」


 =====================



 王都の攻防戦は長引いていた。

 南軍は数が少ないので攻めきれず、だが清も反乱に手を焼き思うように戦えない。


「ソンケワン、手紙が来た。もう終わりだ」

 普段口を開かないウェインがソンケワンに優しく話しかける。


「おうおう。そっかー。おわりかー。楽しかったなぁ」

 にこにこしながらソンケワンが応じる。


「じゃあ行ってくるわ。元気でねー♪」

 明るく笑いながら、ソンケワンは兵に呼びかける。


「さあ! 殺すしか脳のない精鋭達よ!!! 最後の血祭りだぁぁぁ!!! こっから先は人殺しが赦されない退屈な世界!!! もう日常を過ごす気のない狂った人間は我につづけぇぇぇ!!!!!」


 =====================


「シャオが帰ってこない……」

 ヤンは半泣きで待っていた。


 一方で

「……もう身体は癒えかかっている。リンアンに移動しろ」

 レンは女官達に命ずるが


「シャオをお待ちください。彼女がいなければ移動すべきではありません」

 ピヨ達は必死に止める。

 レンの身体はまだ癒えきれていない。

 それに即位の儀の手配をしていたのもシャオ。


「……確かに、トハン派の動きもある。シャオの帰りを待つか……」

 レンの言葉にホッとする女官達。


「だがいつでも行ける準備をしろ……それにしても心配だ。もう帰ってきてもいい頃だが……」


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