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生きていた父と会う

 私とヤン様

 父の手紙が届いた段階ではヤン様は到着していなかった。


 例えそこまで策を練っていたとして、私とヤン様が結ばれるかどうかは分からなかったはずだ。

 なにしろレン様を救出しているわけで、レン様と復縁していた可能性の方が高かった。


 つまりだ。


「リジンジョウさん、父は生きていますね。これは自殺したと伝えられた後に受け取った手紙の後に書かれたものです」


 本当に困り切った顔のリジンジョウさん。


 それで思い出した。父の手紙には『ジョウ』に頼れと言っていた。


「父の最初の手紙には困ったらあなたに頼れとありました。父が手紙を出した段階では情勢は揺れ動いて、まだ私と合流できていたかも分からない状態だったはずです。下手をすれば私が流浪していたも知れません。ショウサから逃げ出していた可能性も高いのですから」


 今考えればあれはギリギリすぎた。

 もう少しタイミングが遅ければショウサは落ちていた。


 待ち構えていたようにも見えない。

 全力で移動して、ギリギリ間に合ったように見えた。


「教えてください。父はどこにいるんですか? 父はなにをやろうとしているのですか?」

「……為すことはもう終わりでしょう。ライディラ様の策はこれで終わりです。今王都を攻めているソンケワンが死んで終わりです。ソンケワンは戦の中で死ぬ。それがあやつにとっての最大の幸福です。王都は陥落させますが、占領は難しいでしょう。守りきれない。これで終わりです」


「……信用できない。父に会わせてください」

「……私にも、どこにいるか……」誤魔化そうとするリジンジョウさん。

 私はジト目で手紙を指差す。


「この手紙は、いつ、どこで預かったんですか?」

 溜め息をつく。リジンジョウさん。


「今はリョウンにいらっしゃいます……共に行きましょう。今リャン族に向かわれるのはマズいのです。トハンの民との約束が破られる形になるので……」



 リジンジョウさんとリョウンに向けて移動。

「結局、あの父はなにをしでかしてたんですか?」

「……我らに知恵はありません。実際ライディラ様は教義の通り自殺されようとしたのです。ところが長兄のハイセン亡き後の我らは……なんというか、本当になにもできませんで……」


 要は、父は元々、西軍とトハンに全てを託して教義通り死のうとした。ところが、西軍はほうっておくと、なーんにもできないらしい。


「それで、死んだことにして、指令は送っていたと」

「トハンの民にバレるとマズいので、軍に付いてきてもらっていました。兵に紛れていたのです」


 ……

「はあ!? 兵に紛れてたんですか!?」

 全然気付かなかった。

 いや、思えば兵は常にショウサから離れていた。あれは父を見せたくないというのもあったのか。


「変装もしてもらっていましたが、さすがにキツそうでした。なにしろ大西軍は移動速度が速いですから」

 まあそら運動なんてしてなかったですし。


「リョウン解放の時にこちらに残ったのです。どうぞこちらです」


 そこは山の小屋。


 周りに人の家はない。

 家畜のようなヤギが結構いる。ヤギのお乳で生活しているのかな?


 ドアの前に立つと


「……シャオ、会うわけには行かぬ。ライディラは死んだのだ。そうでなければ女神降臨は成立せぬ」

 救いの女神は破壊の女神で。その破壊の女神は父の死により復活すると。


「お母様は?」

「死んだ」

 その言葉に

『ガンッ!!!』

 ドアを蹴った。


「なにをしでかしてるか知らんが!!! 娘に顔を合わせる気もなければ! 母様も死に追いやっておいて!!! それでものうのうと生き延びるのか!!! 策は終わったんだろう!? だったら全てを私に語って死ね!!! 何人殺したんだ!!! 何人の王族を殺した!!!!!」


 父の策で何人死んだのか。

 ミィンジャオを守るためとは言え、最後の王族皆殺しは絶対に間違っている。


 教義、教義って。教義のために人を殺して回りながら、自分は教義に逆らって生き延びているのだ。

 父はこんな恥知らずだったたのか?


「……そうだ。策は……終わった。儂は救われる事など望んではいない。だが語ろう。シャオには確かに知る権利がある……入れ。語ろう」


 ドアは開かれ、そこには

「……はい?」

 そこには面影が完全になくなった

 スキンヘッドで、筋肉隆々の男がいた。

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