結局生きてんじゃねーか
「……マズいな。リャン族が騒がしすぎる。シャオ様が動いたか」
チュウレイにいたリジンジョウはザンリと話し合いをしていた。
「シャオさんが動くとマズいっすか?」
「女神の動きは口出し出来ぬ。恐らくこちらに向かわれる途中でリャン族が気付いたな」
「とっとと会いにいけば良いじゃないっすか」
「ああ。すぐに向かう。ザンリももういいぞ。ゼンウラに引き揚げろ。ラムダはしばらくチュウレイ防護から動けぬ」
「どうせこんな装備じゃ城攻めできないっすからね。じゃあゼンウラでまた」
「ああ」
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「王都の闘いですが、想定外に苦戦しています。理由は反乱です」
ラムダの籠もるチュウレイは騒がしくなっていた。
南軍は引き揚げた。
この後ゼンウラかリョウンを攻めるか、王都に向かうか。
その相談途中で王都の苦戦が伝えられた。
「反乱? 王都でか?」
「はい。ミィンジャオよりも善政をしていましたから反乱などありませんでしたが、やはり異民族の支配というのは抵抗があるようで。南軍の優勢を見て、反乱をしているようです……そして深刻なのが、ミィンジャオの王族がここにきて殺された。どうも大清がやったと思われているようで」
「……ああ……まあ。どこのトチ狂ったやつが身内殺すんだ、と思うわなぁ……」
「無論、ミィンジャオの王族は身内で殺し合っていた経緯がありますから、そう思っている者もおります。ただ、レンとヤンはできる限り殺さないようにしていた。アレンとコウルの保護などでも明らかです。それとタイミングです……南軍が押し寄せてからの殺害ですから……」
ラムダは渋い顔をしながら
「……まあ、民が信じやすい状況なのは分かった。それで? 王都はおちそうなのか?」
「いえ、反乱で想定外に苦戦しているというだけで、落ちる心配は……なにしろ敵は3000程度です。問題なのはこのまま王都近くで戦闘が続くのはマズいのです。王都から南の都市にも反乱が続きかねません。兵も殆ど引き上げていますし……」
ラムダは少し悩んだ後
「チュウレイと王都があれば経済はなんとかなる。下手に中央東部に色気を出すのは危険だ。リンアンとゼンウラの二面作戦の前では耐えきれぬ。我らは引き続きチュウレイを守りきる」
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私はリャン族のお迎えとやらに無理矢理乗せられた。
「とりあえずチュウレイに行って欲しいんですが」
「分かりました! 女神様!」
正確な地理など知らないが一応はチュウレイの方に向かってるっぽい。
山道に慣れているのか、今までの馬車よりも速い。
すると
「軍だ!!!」
「清か!? いや、あの軍旗は西だ!!!」
西軍の軍旗。つまり。
「リジンジョウさん?」
「シャオ様!!! お迎えにあがりました!!!」
リャン族と西軍。
まあ、これが揉めに揉めた。
「シャオ様はチュウレイに向かわれていたのだ。まずはチュウレイだ」
「それはいい。だがトハンの前にリャンに来てもらえるのか?」
いつも堂々としているリジンジョウさんが少し困っていた。
割とここらへんは難しい話らしい。
「リャン族にお聞きしたいこともあります。私としては行っても構いませんが……」
「いえ、やはりトハンが先かと……」
うむ。いつもの迫力がないぞ、リジンジョウさん。
「理由があればトハンが先で構いません。理由はなんですか? 私がリャン族に問いたいのは『古き血』は初代ミィンジャオでいいのかどうかです。トハンは父が涼の血筋を匂わせたのは知っています。ではリャンは?」
それに苦い顔をするリジンジョウさん。
「……こうなれば手紙に頼るほかありません」
手紙?
「ライディラ様の手紙です。シャオ様の説得に失敗したら読むようにと……」
その手紙を読むとめっちゃ困惑した顔をする。
そしてそのまま
「お読みください」
どうも私宛の手紙だったらしい。
目を通す。だがその文章は短かった。
『シャオ。ヤン様と子を為せ。そうすればトハンから見れば、その子は涼の古き血だ』
以上。
こいつ。
「……あんのクソ親父……」
ヤン様、ね。
「やっぱり生きてんじゃねーーーかーーーー!!!!!!!」
私は絶叫した。




